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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

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負けてたまるか

 ――レジーナに転移したアサカ。




 アサカが対峙しているのは長い赤髪の女だ。魔導機兵は連れてきていないようだった。


「私はパンドラ四傑最強のゼキーラだ!」


「……」


 自らを最強と言ってしまうゼキーラと名乗る女を前に、アサカは呆気に取られている。


「おい、何とか言えよ」


 そうは言ってもアサカからすれば、特にかける言葉も無い。少し考えた後、何も思いつかないアサカは言葉を漏らす。


「えーっと、ナントカ?」


「馬鹿にしてるのか!」


 怒鳴り声をあげた後、ゼキーラは細身の剣を構え、地を蹴りアサカに向かって突進してくる。かなりの速さではあるが結月に比べると遅い。アサカは最小の動きで躱し槍を振り下ろす。


 ゼキーラは細身の剣でそれを受け止める。アサカは即座に槍を引き水の魔法を込めて突く。刺突と同時に放たれた水流にゼキーラは飲み込まれ飛ばされた。


 アサカはさらに追撃でさらに二回連続で水流を放つと、次々と命中し水煙が上がった。ゼキーラは魔法をぶつけ多少は防御できたようだが、ダメージを受けたのか息を上げている。


「あんたの名は?」


「……アサカ」


「アサカ、あんたがあの四人の中で一番強いんだろ?」


 あまりに見当違いなゼキーラの問いに、アサカは呆れてしまった。


「は? むしろ一番弱いけど」


「フン、それほどの強さで弱いだと? 嫌味な子だね」


「好きなように解釈すれば?」


「その強気、いつまでもつかな?」


 ゼキーラは腕輪の形をした魔導器を取り出し、腕に装備する。


「私の魂力は5万5千だが、この魔導器でブーストすれば11万相当だ!」


「これを使うと三日は立てなくなるから、本当は使いたくなかったんだが、あんたの強さに敬意を表して使うことにした!」


「11万? まさか!?」


 ゼキーラは「ククッ」と笑い火球を放つ。凄まじい速さだがアサカはそれを躱した。


(あれは、食らうとやばいな……)


 アサカは水魔法を込めた槍を突き水流を放つが、ゼキーラの放つ火球と相殺して水蒸気となって消滅してしまった。ゼキーラは得意げに吠える。


「次は、もう少し強く打つよ!」


 アサカは再び槍を突き水流を放つも、ゼキーラの放つ火球に押し負け、火球はアサカに命中してしまう。さらに障壁を破られアサカはダメージを負ってしまった。


「ははは! どうだ11万は伊達じゃないだろう!」


「こんなかすり傷で勝ち誇るな!」


 アサカは自身に治癒魔法を掛け、即座に立て直した。


 槍に水と風の魔法を込めて捻りながら槍を突き出した。水と気流が勢いよく渦を巻き螺旋となってゼキーラに襲い掛かるが、障壁を貫くことはできずにかき消されてしまった。


「クッ、私の新しい技はいつも防がれる!」


「気にすることは無い、私が強すぎるだけだ」


 ゼキーラは高笑いしながら火球を放った。またも命中したアサカは地に伏せるが、治癒魔法をかけ立ち上がる。


「なかなかの根性だな。これならどうだ?」


 無数の火球がゼキーラの周りに現れた。


「ふははは! これだけの火球を浴びれば塵一つ残らんぞ!」


(さすがにあれだけの火球を食らえば終わりだろうな……)


(魂力11万ってだけはあるね。でも技量はヒナよりずっと低い。それなら……)


 アサカは槍に魔力を込め、自分にできる最高のスピードで突進をする。ゼキーラはアサカに向かって火球を放つが速すぎて、狙いを定めることが出来ない。それを補おうと、数に物を言わせて出鱈目に乱射した。


 火球が雨の様に降り注ぐ中をくぐり抜けて、アサカはゼキーラを間合いに捕らえ、全力で槍を突くと障壁を貫通することが出来た。


 ゼキーラは火球を乱射するのに夢中になるあまり、障壁に回す魔力が疎かになっていたのだ。


 アサカはすかさず残っているMPの大半を注いで、水と風魔法を槍に込めて螺旋の突きを撃ち込んだ。


 至近距離で直撃したゼキーラは悲鳴を上げ、吹き飛ばされていった。アサカもいくつかの火球がかすめたのでダメージを負っている。荒い呼吸で自身に治癒魔法をかけた。


「MP全部を使っても治りきらないな……。後でイツキに治してもらおう」


 その時、ゼキーラの咆哮が聞こえた。


「クソガァァァ! この私をここまで追い詰めるとは……」


 ゼキーラはゆっくりと歩み寄ってくる。ダメージは深いようで、肩で息をして、ふらついていた。


「この私をここまで追い詰めるとは大したものだ。褒めてやろう。だが、お前はMPが尽きたようだな」


 ゼキーラは火球を作り出し、火球に魔力を集中させる。彼女の口元は息を上げながらも、笑みを浮かべていた。


「これで、私の勝ちだ」


「あーあ、こんなところで終わりか……。ヒナ、ユズキ……、イツキのことは任せたよ……」


 アサカは敗北を悟り、小声で呟いて両膝を地につき目を閉じた。



 ――アサカの閉じた瞳に、樹の悲しむ顔が映り声が聞こえる。


「アサカが死んでしまうのは絶対に嫌だ」


 ハッとしたアサカはもう一度目を開け立ち上がる。


「私は死ねない……。イツキを悲しませたくない!」


(こんな魂力をブーストしただけの奴に……。ヒナとユヅキなら一瞬で倒してしまうんだろうな)


(私は弱い。そんなことは分かり切っている。でも気持ちはヒナとユヅキには負けないんだ! イツキのことは任せただって? ふざけるな!)


 アサカは一瞬でも樹のことを諦めた自身の弱さを悔やんだ。アサカは槍を強く握り締め自らを奮い立たせるように叫ぶ。


「あんたなんかに負けてたまるか!!」


(ヒナよりもユヅキよりも強くなってイツキを独り占めにしたい! 何より私のせいでイツキが悲しむのは絶対に嫌だ!)


 アサカは、しっかりと自分の敵を見据え槍を構える。痛みが薄れていく。目の前の敵を倒すために集中力が極限まで高まっていく。


 ふと、アサカはMPも尽き満身創痍のはずの身体の奥底から、魔力があふれてくるのを感じた。


(力が湧いて来る……? これならいける!)


 MPも尽き戦意を失い無力化したはずのアサカから、膨大な魔力を感じゼキーラはうろたえる。


「大人しく死んでいろー!」

 

 ゼキーラはアサカに向かってありったけの魔力を込めて火球を放つ。一方でアサカも槍に凝縮した魔力をゼキーラに向かって開放した。


 天を衝くような巨大な竜巻が発生し、放たれた火球をかき消しゼキーラを飲み込む。


 ゼキーラは上空に巻き上げられながら、全方位から水と風の刃に襲われ悲鳴を上げる。


 竜巻に飲まれ見えなくなったゼキーラの気配をアサカが探っていると、突如ゼキーラの気配が消えた。  


「くそっ、転移して逃げたか。あの竜巻の中で攻撃を受けながらでも転移できるなんて、よほど高性能な魔導器を持っているのかな……」


 アサカは突き立てた槍にもたれながら、辛うじて立っている。


 そこへ樹が転移してきた。「アサカ! 無事か?」と叫んでアサカに駆け寄る。


 アサカは安堵の笑みを浮かべ、その場に倒れ込んだ。


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