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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

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笑顔になってよ

 顔の火照りがおさまり、いつも通り一階に降りていき朝食をとる。顔を洗い着替えた後、再び箱庭に転移した。


 陽那と結月とアサカは既に来ている。今日もあみだくじで手合わせする相手を決めた。俺は陽那とで、アサカは結月とだ。やっぱりアサカは不満そうだ。


「うー、イツキとがいいのにー」


「今夜、二人きりになれるから頑張ろうね」


 俺がアサカを励ますと「ん、頑張るよ」と素直に返事が返ってきた。



 四人で訓練用のフィールドに転移する。アサカは黒い槍を取り出し、結月はミスリル刀を取り出して向かい合い構える。


「よろしくお願いします!」


 アサカはビシッと結月に礼をする。結月は一瞬面食らったようだが「よろしくお願いします」と応え礼をした。


 アサカも結月の強さを認めたんだろうな……。二人は激しく槍と刀を振るって打ち合っている。


 俺と陽那はアサカ達から離れるように飛ぶ。ある程度離れたところで陽那が寄ってきて俺の目をじーっと見つめる。


「今日は結月の機嫌がすごくいいんだよね……。どうしたのかなー?」


 俺が何も言えないでいると、陽那は俺の目をじーっと見つめている。この状況でいきなり陽那に愛してるとか言っても違和感あるよな……どうしようか。


「ふーん、樹は結月のことは愛してるんだね……」


 やはり陽那は俺の思考が手に取る分かるんだね。膨れっ面の陽那は俺の顔の目の前でじーっと俺の目を見続けている。


「私は樹に愛してるって言われたことがないなぁ」


 陽那が不機嫌そうに迫るので、俺は怯んで一歩下がった。


「陽那のことは好きって言葉じゃ足らないほど想っているよ。でも三股している俺が愛してるって言っても嘘っぽいかなと……」


「でも結月には言ったんでしょ! 私も言って欲しいよ!」


 俺は覚悟を決めて、陽那の肩に両手を乗せ見つめた。


「この状況では、言わされた感があるように思うかもしれないけど、俺の気持ちを陽那に言うよ」


 陽那は目を輝かせながら俺の言葉を待っている。


「陽那、愛してる」


 たった一言だが、この言葉を口にすると顔が熱くなる……。


 陽那はとびきりの笑顔になり俺に飛びつく。空中に浮いた状態で数メートルは飛ばされてしまった。


「嬉しい!! 私も樹を愛してる!!」


 俺達はきつく抱き合いキスをする。


「ねぇ、このままここでしようよ」


「それはさすがに……。アサカと結月がすぐ近くで鍛錬してるのに……」


 陽那はスッと俺から離れ、周囲に手をかざすと霧が発生し俺達の姿を隠していく。さらに陽那が手を突き出すと、水の塊が出現した。


「水の魔法で作ったベッドだよ」


 陽那は水の塊に乗っかった。俺もその水の塊に乗ってみた。柔らかいマットレスのベッドみたいで、触っても濡れたりしないようだ。陽那の体温のような温もりがあり心地良い。


「この霧の中に外から簡単に入れないように障壁で覆っているし、中の音も外に漏れないよ」


 陽那は俺を押し倒し、のしかかると、俺の身体を撫でて甘い声で囁いた。


「だから、少しだけしようよ」


「でも……」


「だって、樹が顔を赤くして照れながら、愛してるなんて言うから興奮しちゃったんだもん!」


 陽那の猛烈なアプローチを断り切れずに、空中に設置された水のベッドで抱き合う。陽那はいつにもまして情熱的だった。


 その後は誤魔化すように激しく魔法を撃ち合い鍛錬したのだった。




 昼になったので、ログハウスに戻り昼食休憩にする。陽那がご機嫌で冷製パスタを作ってくれたので、四人で食べる。陽那の手料理はいつも美味しい。アサカは驚いているようだ。


「ヒナって料理上手なんだね。とっても美味しい!」


「えへへ、ありがとう」


「なんか、今日のヒナ機嫌いいなぁ。なんかいいことあったの?」


「えっ? いつもこんな感じだよ」


「うーん、そうかなぁ……?」


 アサカはなにか言いたげだが、それ以上は突っ込んで聞くことは無かった。




 昼からは勉強することにする。一応学生なのでね……。


 勉強は音声アシストが分からない事を分かりやすく解説してくれるので、効率よく進めることが出来た。そのおかげで、少ない勉強時間でも成績は上がった。


 もちろんテストのときは音声アシストは自動でOFFになる。音声アシストが有効のままなら全教科楽々満点だろうからな。


 こういった細かいところも、このシステムを作ったルイさんの努力しろという思いがこもっている気がする。




 陽那と結月と俺が課題をこなしていると、アサカは興味深そうに見ている。


「イツキ達はこういうのを勉強しているんだね」


「わたしもイツキの学校に転校しようかなぁ。社長にたのんでみるか」


「はは……。ルイさんなら、アサカを俺達の学校に転校させることも簡単だろうけど」


「でも、転校してくるなら日本語くらいは翻訳なしで話せないとね」


 俺はアイテムストレージから漫画を取り出しアサカに渡した。


 陽那と結月と俺は勉強をして、アサカは音声アシストに補助されながら日本語の勉強をしたのだった。


 そうこうしているうちに解散する時間がきた。


 陽那と結月とアサカにハグしてキスをしたあと、自宅に転移した。




 自室に戻って、こっちでやらなければならないことを済ませ、ベッドに座って一息ついた。


 今夜はアサカと過ごすのか。


 アサカは二カ月もの間、時間の流れを速くした孤島で頑張って鍛えていたんだよな……。しっかり褒めてあげよう。


 そんなことを考えつつ箱庭に転移した。




 アサカはまだ来ていないな……。俺がリビングのソファーに座って少しの間ボーっとしていると、アサカが来た。


「イツキ! ようやく二人きりになれたね。ヒナもユヅキもイツキにイチャつかせてくれないんだもん。辛かったよー」


 アサカは俺に駆け寄ると、飛びついてきた。


「ヒナもユヅキも厳しいんだよ。私がもう無理って言っても容赦無しなんだ」


 俺は腕の中でぼやくアサカの頭を撫でる。


「それだけ真剣に指導してくれているんだよ。陽那と結月は俺よりも強いし」


 アサカはムッと不快感をあらわにする。


「やけにヒナとユヅキの肩を持つなー」


 少しづつアサカの声が大きくなり、声色にも怒気が含まれていく。


「今日はヒナとユヅキの機嫌が良かったけど、イツキがらみだよね?」


「うぐ……、それは……」


 俺は言葉に詰まってしまう。


「私に言えないことなの? それとも私に言いたくないだけ?」


「そんなことないよ……」


「あんなに可愛い恋人が二人もいるんだもんね。私なんてどうでもいいんでしょ?」


 俺は首を振るが、アサカは怒りながら言い続ける。


「もし、強い敵が現れて私が死んじゃっても、ヒナとユヅキがいればイツキはそれでいいよね!?」


 アサカのその言葉に、俺は一年前自身の無力さのせいで陽那と結月が大怪我をさせられてしまったときのことを思い出した。


 大事な人を失うかもしれない恐怖。あの時のことを思い出すと今でも胸が軋み息苦しくなる。


「もし、アサカを守り切れずに死なせてしまったら、俺は二度と笑えないと思う」


「アサカが三股している俺に愛想を尽かして離れていくのなら仕方がない。もちろん悲しいけどアサカが元気ならいつか立ち直れると思う。でも、アサカが死んでしまうのは絶対に嫌だ」


 アサカはじっと俺の顔を見つめる。


「変なこと言ってごめん。もう言わないからそんな悲しそうな顔しないで」


「いや、俺の方こそごめん。アサカの気持ちを考えてなかった」


 アサカは笑顔を作り、俺の頬を両手でつまんで引っ張る。


「せっかく二人きりになれたんだから、いつもみたいに優しい笑顔になってよー!」


 アサカが必死になっているのが、妙におかしくて俺は吹きだしてしまう。


「ふう、イツキが笑ってくれた」


「二カ月もイチャついてないから、溜まってるんだからね!」


「ああ、いっぱいしようね」


 このログハウスには、空いている部屋がいくつかあるので、そのうちの一つをアサカの部屋にした。その部屋に俺達は腕を絡ませながら移動した。


 部屋に入ると二人してベッドに倒れ込み、抱き合いキスをする。


「二カ月ぶりのイツキの素肌の体温だ……、癒されるなぁ」


 俺はアサカの柔らかな肌に手を滑らせ撫でる。アサカは時折身震いをしながら俺にしがみつくように抱き着いている。


 何度もキスをして、二カ月分を取り戻すかのように夢中で肌を重ね合った。




 ――翌朝。


 目が覚め隣で眠るアサカの顔を見つめる。美しい金髪に整った顔だち。美人だな……。間近で見ていると、アサカの唇に吸い寄せられるように、自分の唇を触れさせてしまった。アサカはパチッと目を開ける。


「毎朝イツキのキスで起きたいな……」


「アサカの寝顔があまりにも可愛かったからついキスしてしまった」


「したいのはキスだけなの?」


 アサカは上目で物欲しそうな顔で俺に聞く。可愛すぎるアサカの仕草に俺は気分が高まってしまった。


 どちらからともなく肌をすり合わせ、そのままシーツの中で互いの熱を分け合った。



 

 激しめの寝起きの運動を終え、すっきりした俺達はシャワーを浴びて着替えリビングで一息つく。


 二人でソファーに並んで座っている。手は指を絡めた状態だ。


「イツキ、愛してるよ」


 アサカがシステムの翻訳機能を使わずに日本語で言った。


「アサカ、日本語覚えたの?」


「イツキ達の言葉で大事な人に言う言葉なんでしょ? この言葉だけ昨日覚えたんだ」


「ありがとうアサカ。俺もアサカを愛してるよ」


 やはりこの言葉を言うと顔が熱くなる。アサカも嬉しそうに微笑んでくれている。しばらくの間、二人でくっついて座っていた。


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