表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?
6/122

彼女出来た?

 ――センターにある、オサレなリア充カフェにて。




 鳴海さんとテーブル席に向かい合って座っている。俺の人生で、鳴海さんと二人でこんな店に入る日が来るなんて……! 


 俺が感激に浸っていると、鳴海さんが俺の目の前で手を振る。


「おーい、なにニヤニヤしてるのー?」


「はっ! なんでもないよ」


 いかん。不気味な奴と思われたら、鳴海さんと仲良くなるチャンスが台無しだ。しっかりしろ、俺。


「とりあえず注文しようか」


 テーブルに置いてあるタブレット端末を鳴海さんに手渡した。


「うわー、メニューがいっぱいだね。どれにしよっかなー」


 しばらくして鳴海さんは注文を決めたようで、俺にタブレット端末を渡す。


 タブレット端末には、色とりどりのケーキやパフェ、飲み物がいくつも表示されている。


 何でコーヒーだけでこんなに種類があるんだ? 一通り目を通した後で、結局カフェオレと苺のショートケーキにした。


 注文した飲み物とケーキがテーブルに運ばれてくると、鳴海さんは目を輝かせながらケーキを頬張る。


「んー、このケーキ、美味しい!」


 どうやら、機嫌も良くなったみたいだ。


 ケーキを食べながらこの世界のことや、お互いの学校生活の近況など話す。もちろん、双原の話題にならないように、気を使いながら話をした。


 鳴海さんは向かい合って話をしていると、目をじっと見て話すので、俺の心臓は高鳴って仕方ない。もっとも、鳴海さんは何も意識していないのだろうけど。


 ケーキも食べ終わり、二人でリア充カフェを出た。さて、これからどうしようか、と思っていると、鳴海さんが提案する。 


「せっかくお金が手に入ったんだから買い物しようよ」


 買い物デートのお誘い!? 俺は二つ返事で了承し、二人でショッピングモールに向かった。




 * * *




 この箱庭内にあるショッピングモールは、いわゆる大規模店舗ではなく、地方にありそうな程々の大きさの二階建ての店舗だ。


 建物内部には、様々な服の店や食料品売り場、本屋、薬店、フードコート、ゲームコーナー等々があり現実世界とほとんど変わらない。


 鳴海さんはキョロキョロと店舗内を見回す。


「それにしても、ここがゲームの中なんて信じられないね。ほとんど現実と変わらないけど?」


「そうだよね、でもあの辺りはゲームの世界って感じがするよ」


 俺は武器を売っている店を指差した。ショーケースの中には剣や槍、他にも多種多様な武器が陳列されている。


 数人のスタッフさんがいるが、全員美人なお姉さんだ。俺はつい目を奪われてしまう。


「へー、柳津君はああいうお姉さん系が好みなんだ?」


 鳴海さんが冷やかすように声を掛けてきたので、俺は慌てて否定する。


「違うよ! 店のスタッフさんって髪や瞳の色がファンタジーな感じだから、ここはゲームの世界なんだなぁ、って思っただけだよ。それに俺の好みのタイプは、なる……じゃなくって、えっと、その……」


 危うく告白しそうになり、俺があたふたしていると、鳴海さんは俺から視線を外し、ゲームコーナーを指差す。


「あ、あれやろうよ」


「……いいよ」


 二人でゲームコーナーに行き、レースゲームをやることにした。ゲームの世界でゲームすることになるとはね。


 いくつか並んでいる筐体のシートに二人並んで座り、ハンドルを握ってゲームスタートだ。


 俺より先に最初のコーナーに侵入した鳴海さんは、手慣れた様子でドリフトをしながら声を掛けてきた。


「柳津君ってさー、彼女出来た?」


 俺はドキッとして操作を誤り、派手にコースアウトしてしまった。ハンドルを大きく切ってコースに戻りつつ答える。


「出来てないよ」


「作らないの?」


「そりゃ欲しいけど、俺ヘタレだから女の子に話し掛けたりできないし。鳴海さんこそ彼氏いるの?」


「気になる?」


「いや、まあ、……うん」


「いないよ。大体彼氏がいたら、双原君を追い払ってもらってるよ」


「それもそうだよね」


 鳴海さんの勝利でゲームは終了した。筐体のシートから立ち上がり鳴海さんを見ると、何やら不敵な笑みを浮かべている。


「柳津君はもっと積極的になったら、意外と上手くいくかもね」


 どういう意味だ? もう一度告白したらOKしてもらえるとか? んな訳ないか。DTは好きな女子の行動とか発言を、自分に都合良く解釈するってなんかで見たな。ここは冷静に慎重にしないと……。


 さて、お腹もすいたことだし、そろそろ夕食にするか。二人でフードコートに向かった。




 * * *




 フードコートでは、再び鳴海さんと対面で着席した。ドキドキしながらの食事になりそうだ。


「柳津君の学校には可愛い女の子とかいないの?」


 先ほどに続き恋バナ関連だな。女子ってそういうものなのか?


「同じクラスに一人すごく可愛い子がいるよ」


 鳴海さんの表情に、一瞬ピクっと変化があったような気がする……。


「へぇー、例えばその子と私って、柳津君的にはどっちが可愛いと思う?」


 『私』が可愛いのは前提なんだね。さすがだ。


「うーん、どっちかな? 両方とも物凄く可愛いからな……」


 俺は考えながら、つい本音を口にしてしまう。すると鳴海さんは半眼で俺の目をジッと視る。


「あのね、そういう時は、目の前にいる子の方が可愛いって言うべきなんだよ!」


「え? あ、鳴海さんの方が可愛いよ」


 鳴海さんはまじまじと俺の目を見て「ホントに?」と確認する。そのあまりの可愛さに俺の心臓は破裂しそうだ。


 俺の口から「ホントだよ。鳴海さんの方が可愛い」と言葉が漏れると、鳴海さんは「よろしい」と満足げに微笑んだ。


 ふう、女子との会話は楽しいが難しいな。それにしても面と向かって可愛いとか言ってしまった。今になって顔が熱くなってきた。




 * * *




 食事も終わり、宿泊施設に向かった。フロントで別れ際に鳴海さんを見る。すると、俺の視線に気が付いたのか鳴海さんはこちらを向いた。


「どうしたの? 私と一緒の部屋に泊まりたいとか?」


 鳴海さんはニンマリと笑顔を浮かべている。俺は慌てて首を横に振った。そして一息ついて感謝を告げる。


「鳴海さんのおかげで、今日はとても楽しかった。ありがとう」


「私も楽しかったよ。ありがとう。ゲームがクリアされるまで時間が掛かりそうだから、今後ともよろしくね」


 なんて素敵な笑顔だ。俺が感激していると鳴海さんは「じゃ、おやすみ」と手を振って部屋に向かって行った。


 俺も「おやすみ」と返事をして、高鳴る自分の心音を聞きながら、鳴海さんの後ろ姿を見ていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ