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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

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娘をよろしく

 朝起きると、陽那を抱き枕にしていた。


 陽那は俺の腕の中で、頬を染め息を乱している。結月が「私にもー」とせがむので、結月も抱きしめた。


 やっぱり朝は陽那と結月を抱きしめると、気持ち良く目が覚めるな。俺は背伸びをしつつ「一旦自宅に戻ろうか」と二人に言った。


「戻ってきてから、昨日のお父さんの話をするね」


「うん、朝食を済ましてからここに集合しよ」


 結月と陽那はそう返事をして、それぞれの自宅に転移した。




 自室に戻って、朝食を食べるために一階に下りていくと、母親が変な目で俺を見る。


「なんか女の子の匂いがするけど?」


「昨日、二人が来た時の残り香かなぁ……」


 さっきまで二人とイチャついていたなんて、言えるわけないので俺はしらを切った。明日からは戻ってきたら着替えるか……。




 朝食を食べ終え、顔を洗い歯磨きを済まして、自室に戻り着替る。早く二人に会いたいので、せわしく動いた。


 再び箱庭に転移すると二人の姿はまだない。また俺が一番乗りだな。


 真夏の日本とは違って箱庭は快適な気温だ。俺は庭に出て、アイテムストレージから虹刀を取り出し素振りを始めた。


 一つ一つの動作を、結月に教えてもらったことを確認しながら行った。しばらくそうしていると、後ろから声を掛けられた。


「朝から真面目に鍛錬してる。感心だね」


「あ、結月」


「少し相手するよ」


 結月はミスリル刀を出したので、俺もミスリル刀に持ち替えた。


 しばらく稽古を付けてもらっていると陽那も転移して来たので、俺達はログハウスに入り、リビングのソファーに座って結月の話を聞くことにした。


「昨日、道場に行くのサボったから、お父さんに怒られちゃった」


 結月はけろりとした様子で話している。叱られても気にしないタイプなのかな? などと考えつつ話を聞く。


「なにしてたのか問い詰められたから、樹と遊んでたって言ったら、そいつを連れて来いって物凄い勢いで怒られたんだ」


 かなり厳しく怒られたみたいで、なんか申し訳ない。しかし結月は、普段と変わらない様子で続けた。


「それでね、お父さんと勝負して私が勝ったら樹と遊んでもいい? って聞いたらいいって言うから勝負したの」


「今までは一度もお父さんに勝ったことは無かったけど、箱庭で魂力が上がった状態でのに慣れていたから、簡単にお父さんに勝てたんだ」


「涙目のお父さんが、樹と遊ぶのを渋々認めてくれたんだけど、そいつを道場まで連れて来いって言われたから、いいよって返事しちゃった」


「……その流れだと、俺もお父さんに怒られるよね?」


「大丈夫! いまの樹なら、お父さんよりも、兄さんよりも強いから」


 問題はそこなのかと思いつつ、今日は結月の家の道場に遊びに行くことになった。


 一旦それぞれが転移ゲートで自宅に戻り、俺と陽那は待合せて一緒に結月の家に向かう。二人で結月の家に到着すると、結月が外に出て待っていた。


 結月は俺の手を掴んで道場の中に入っていく。


 中には体格のいい強面のオジサマが仁王立ちしていた。あれが結月のお父さんか。怖っ……。隣には隙のない立ち姿のイケメンがいた。どことなく結月に似ている。お兄さんか……。


「これが私の大事な人、樹だよ」


 結月のお父さんがギロリと俺を睨む。


「初めまして、柳津樹です。結月さんにはいつもお世話になっています」


 挨拶ってこんな感じでいいのか? まぁいいか。


「私が結月の父であり、師でもある。樹君、これで語ろうか」


 そういって竹刀を俺に渡すので、俺はそれを受け取る。結月のお父さんの顔を見ると、鬼の形相で俺を凝視している。怖っ……。結月は俺の手を握りニコニコと笑顔だ。


「防具はつけなくてもいいのか? 寸止めできないかもしれないぞ」


「遠慮なくブッ叩いて下さい」


 どうせ防御フィールドは有効だし、魂力が上がって強化された体が竹刀で叩かれたぐらいで傷つくとも思えない。


 魂力制限の弱化は、普通の人を傷つけないようにするためで、あくまでも外に向けてのみだ。体内では3万を超える魂力が有効なので、今の俺は車に轢かれたって無傷だろう。


「度胸はあるようだな。後悔するなよ?」


 結月のお父さんが構えるので、俺も竹刀を持って構える。


「なるほど、構えだけは中々の物だ」


「結月に手取り足取り指導してもらっているんで」


「なにっ? 貴様……!」


 しまった、余計怒らせた。


 はじめ! の合図で結月のお父さんが襲い掛かってきた。


 基本動作は結月と全く同じだが、箱庭での戦闘経験がある俺からすると遅い。相手の動きを予測して動くのが本来の戦いなんだろうけど、相手の動きを見てから動き出しても充分に間に合う。


 結月のお父さんが竹刀を振り下ろすのを確認してからでも、俺の竹刀を振る速度の方が速い。常識では考えられないほどの速さだろう。


 俺は結月のお父さんの竹刀を叩き落し、頭の上に振り下ろした竹刀を寸止めした。強面オジサマは目を丸くして、何が起こったか分からず呆気にとられているようだ。


「素晴らしい動きだ。ぜひとも私ともお手合わせを願いたい」


 見ていた結月のお兄さんが前に出て来たで仕方なく応じる。今度は相手の立ち方や、力の入れ具合などを見て動きを予測した。


 はじめ! の合図とともに踏み込んで、竹刀を寸止めした。


「まいった」


 お兄さんは降参し、見ていた結月のお父さんは感心しているようだった。


「まさか私との時は、手加減をしていたのか。実力の底が全く見えない」


 まぁ、魂力が違いすぎるので……。箱庭に行く前だったら、俺の方が手も足も出なかったと思いますよ。


 俺のやっていることは実質チート行為なので、後ろめたい。ところが、結月のお父さんは俺に頭を下げた。


「将来は結月と一緒になって、幸せにしてやって下さい。よろしくお願いします」


 結月を見ると、満面の笑みを浮かべている。


「俺達はまだ高校生なんで、その辺は卒業してから考えます……」


 その後、陽那もやってみたいと言い出し、結月のお父さんとお兄さんを軽く一捻りしてしまった。


 結果、三人で血の滲むような厳しい特訓をしていると勘違いされ、結月は道場に行かなくても良くなった。


「樹君、もう君は息子も同然だ。いつでも遊びに来て下さい。結月をよろしくお願いします」


 帰り際、結月のお父さんが涙を流しつつ俺を抱きしめるので、俺は苦笑いで流しておいた。




 後で箱庭で集合しようと結月に伝えて、俺と陽那は自宅に帰ることにする。


 そうこうしている間にも、モンスターは地球に転送されているようで、時折スマホに通知が入ってくる。だが、モンスターを倒せば現金が貰えるので、競うように即座に討伐されていた。


 そんなことはどこ吹く風の、俺と陽那は手をつないで歩いている。真夏の日差しが照り付け、アスファルトからの熱気で空気が揺らいで見える。


 しかし、俺達の周辺だけは陽那の魔法のおかげで快適だ。氷の微粒子をいくつも宙に浮かべて太陽の光を減衰し、氷からの冷気で熱気を中和している。これくらいの魔法なら使ってもルイさんにお仕置されないよな……?


「いつか私の親にも会って欲しいな。……でも、うちの親いつも仕事で帰りが遅いからなぁ」


「まぁ、そのうちね」


 しばらく歩いていると、陽那の家に着いた。


「ちょっと、上がって行かない?」


 俺の返答を待たずに、陽那は手を引っ張って、家に連れ込まれた。そのまま二階の陽那の部屋に通された。


 陽那のいい匂いがする。綺麗に片付けられた部屋だ。この時点で既に俺の鼓動は高鳴っている。


「ちょっと待っててね、お茶持ってくるよ」


 俺はフローリングの床に座って待つ。少し待つと陽那がお茶を持ってきた。


「何も床に座らなくても……」


 勉強机にお茶を乗せたトレイを置き、俺の手を引きベッドに座らせる。


「タンスとかクローゼットを漁っていても良かったのに」


 そんなことしたら変態だよ。ふと部屋を見渡すとセーラー服が掛かっている。


「陽那の学校ってセーラー服なんだね」


「そうだよ。見たい?」


 陽那は俺の返事を聞かずに、服を脱ぎだしセーラー服に着替える。俺は鼓動が跳ね上がり目を覆った。


 着替え終わった陽那を見つめる。

 

「やけにスカート短くない?」


 するとセーラー服の裾を少し上げて、スカートの腰の部分を見せる。


「こうした方が樹は嬉しいでしょ? ここで折りたたんで短くしてるんだよ。普段は膝よりちょっと長いくらいだから心配しないで」


その場でくるりと一回転して見せる。


「どう?」


「すごく可愛いよ」


「それだけ?」


 俺の横に座り足を組む。普段着とは違う陽那の姿。しかも動くたびにチラリと下着が見えてしまう。興奮した俺は陽那を押し倒し抱きしめキスをする。


「陽那が可愛すぎるからドキドキする」


 俺は陽那の太ももに手をあて、スカートの中に滑り込ませようとするが――。


 スマホがブーブブッと振動した。結月からメッセージだ。俺は我に返りメッセージを見る。


「どこでイチャついてるの? 私はもう箱庭にいるよ」


「残念、今回はあと一歩だったね」


 陽那は俺から離れて着替える。


「さあ、箱庭に行こうか」


 俺は頷き、二人で箱庭に転移した。


 


 箱庭のログハウスの中に入ると、結月が待っていた。


「二人とも顔赤いよ。どこでイチャついてたの?」


「陽那の部屋でちょっとだけ」


「ちょっとって?」


 結月は俺の目をジッと見つめる。


「押し倒して、抱きしめて、キスしたの? さらに太もも触ったんだ」


 なぜわかる? 俺の目を見ると心でも読めるのか?


「前から不思議だったんでけど、二人は俺の心が読めるの?」


「武術などを極めて境地に達するとすべてを見通す目『心眼』が開花すると言われているんだよ。私はまだ心眼の域には達していないけど、洞察力はそれなりに鍛えられていると思う。最近は樹の考えていることが何となく読めるようになってきたよ」


 何となく読めるって……。俺が絶句していると、陽那が続けた。


「私は、固有スキルが発現してからは、樹の考えてることを読もうと思えば割とはっきり読めるよ。ほら、私の固有スキルって魔法の境地だし『心眼』も身についてるのかも」


 なんてこった。二人には隠し事できないんだね……。隠し事をする気も無いから別にいいけど。とりあえずさっき陽那にしたことと同じことを結月にもした。


 結月が納得したところで、結月はお父さんの話を始めた。


「お父さん、樹をすごく気に入ったみたいだよ」


「……うん」


「早く孫の顔が見たいって」


 俺は、ゲホゲホとむせてしまう。


「それはさすがに嘘でしょ」


「てへ、ばれた」


「結月のお父さんも、お兄さんも本当ならかなりの達人なんだよね」


「うん、箱庭に行くまでは全く勝てなかったよ。勝てる気もしなかった」


「結月のお父さんと、お兄さんが箱庭で鍛えたらルイさんよりも強くなるかもね」


「どうだろうね、ルイさんの強さはいろいろと別次元だから」


 その後は話が逸れて、他愛のないことを話していたが、三人でそうしているとあっという間に時間が過ぎてしまう。


 陽那が夕食の準備をしないといけないので、一旦解散とする。昨日と同じように、また寝るときに集合すると約束した。




 転移して戻ってくると俺は陽那の部屋にいた。そうだ、陽那の部屋から箱庭に転移したんだった。陽那と二人で部屋にいると、「ただいまー」と女性の声がした。


「あ、お母さんが帰ってきた。今日は早いな」


 二人で一階に下りて行き、陽那は俺をお母さんに紹介した。


「私の彼氏の柳津樹君だよ!」 


 俺は緊張しながら頭を下げる。


「初めまして、お邪魔しています」


「陽那が男の子を家に連れてくるなんて珍しい……いや、初めてね」


 その後、俺達は陽那の部屋に戻った。


 陽那は何を思ったか、俺をべッドに押し倒し俺に覆いかぶさる。


「樹、静かにしないとお母さんに見つかっちゃうよ」


「ちょ、ちょっとまずいんじゃない?」


 ドアがノックされ、陽那のお母さんが部屋に入って来た。


「あら、邪魔しちゃった?」


「そうだよ、せっかく樹が襲い掛かってきてくれたのに」


「陽那が樹君に襲い掛かっているみたいに見えるけど? ……二人とも年頃だから細かいことは言わないけど、できないようにしてからするんだよ」


「はーい」


 陽那って、親とそんな話を平気でする感じなの!? 俺は驚きのあまり口をパクパクさせていた。


 陽那のお母さんは、お茶とプリンの乗ったトレイを机に置いて部屋を出ていった。


 陽那は俺に乗ったまま、嬉しそうに笑っている。


「こういうのなんていうか知ってる?」


 俺が答えられずに黙っていると、陽那は一言「既成事実」とだけ呟き、不敵な笑みを浮かべ俺にキスをした。


 陽那が俺の上からどいたので、せっかくなのでプリンを頂いてから帰ることにする。


「陽那はお母さんと仲がいいんだね」


 陽那は嬉しそうに微笑んだ。


「うん! お父さんとも仲がいいよ。だから安心して樹も家族になってね!」


 ……さて、プリンも食べ終わったしそろそろ帰るか。


 俺が玄関から「お邪魔しました」と声を掛けると、陽那のお母さんが出てきた。


「これからも陽那をよろしくお願いします」


「……はい」


 今日一日で、陽那と結月の親によろしくお願いしますって言われてしまった。


 どうしたものか。卒業するまでは先延ばしにしておくか……。頭を悩ませながら、一人自宅へ帰るのだった。


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