表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?
5/122

付きまとう男

 昼食を済まして、二人で北の転移ゲートの広場に向かって歩いていると、後ろの方から、男の叫び声が聞こえてきた。


 二人で振り返ると、一人の男がこちらに向かって走ってきている。


「げっアイツは……! 後で説明する。逃げるよ!」


 鳴海さんは顔を引きつらせてそう言うと、突然俺の手を握り引っ張って走り出した。


 何と、鳴海さんが俺の手を握っている!? 手から伝わってくる、鳴海さんの柔らかくて温かい感触に感激して、俺の鼓動は急上昇だ。


 そんな俺の心の内など知る由もなく、鳴海さんは俺の手を引いて全力疾走を続け、広場中央の転移ゲートに飛び込んだ。


 転移ゲートを抜けて、山岳地帯のフィールドを二人で走る。ここは切り立った断崖でできた天然の迷路のような地形だ。


 いくつもの分かれ道があるので、オートマッピング機能のおかげで迷いはしないものの、特定の人物を見付けだすのは困難だろう。


 男から逃げ切ったところで、鳴海さんは息を整えてから話し出した。


「アイツは同じ学校の、同じクラスの男子、双原奏介(ふたはらそうすけ)君だよ。入学直後からよく話し掛けて来たんだけど、自分のことばっか話すし、自慢話が多いから正直うんざりしてたんだ」


 鳴海さんは眉を寄せている。さっきの男は、鳴海さんにとって迷惑な奴だったみたいだ。


「でも、あまり邪険にするわけもいかないし、愛想笑いしてやり過ごしていたら、なんか勘違いされてたみたいで彼氏面するようになってきたの。ある時、慣れ慣れしく腰に手を回してきたからプチッてキレちゃって、お前なんか彼氏でも何でもないわー! 勝手に触んなボケ! キモいんだよクソが! って暴言はいて殴っちゃった」


 腰に手だと? うらやま……じゃない。それは許せんな。


「ゴメンね。気を取り直してモンスター狩ろうか」


 鳴海さんは両手を合わせて笑顔を作る。俺は掛ける言葉も見つからないので「そうだね」と応えた。


 気持ちを切り替えて、アイテムストレージから剣を取り出そうとすると、音声アシストが聞こえてきた。


「フレンドとフィールドに入場しました。パーティーを登録しますか Yes/No」


 パーティー? 登録するとどうなるの?


「モンスターを倒した際に獲得できるCrと魂力が、パーティーメンバーで等分されます」


 んじゃYesだな。鳴海さんを見ると、彼女も音声アシストが聞こえていたようでコクリと頷く。直後「鳴海陽那をパーティーを登録しました」と音声アシストが聞こえた。


 じゃ、モンスターをバンバン狩りますか! 


 俺は探索アシストを起動して、モンスターを探した。反応のある方向にしばらく進むと、昨日と同じ岩型のモンスターを二匹発見した。


「鳴海さん、アイツを狙って雷撃魔法を使ってみて」


 鳴海さんは頷くと、ミスリルロッドをモンスターに向けて雷撃と呟く。すると、雷鳴と同時にミスリルロッドの先端から、モンスターに向けて雷撃がほとばしる。命中したモンスターは、一撃で砕け散った。


「ロックを倒しました。5Cr獲得。魂力が1増加しました」


 獲得できるCrと魂力が半分になってるな。なるほど、獲得できるものはパーティーメンバーで等分って言っていたもんな。


 鳴海さんは目を大きく見開いて、口をポカーンと開けて固まったまま動かない。


「鳴海さん? おーい」


 目の前で手を振ってみると、鳴海さんは意識を取り戻して瞬きをした。そして満面の笑みを浮かべた。


「凄い! 魔法が使えた!」


 大喜びしている鳴海さんも可愛いなぁ。おっと、まだ一匹残っている。気を抜くのはまだ早い。


「もう一匹は俺が倒すね」


 残っている岩型モンスターにスキル1を発動と念じた。俺の体は勝手に剣を構え、地を蹴って一瞬でモンスターに近づき薙ぎ払う。その一撃でモンスターは真っ二つになり、砕け散った。


 昨日は一撃で倒せなかったのに一撃だったな。魂力が上がって強くなっているんだろうか。MPを確認すると減ってない。スキルはMPを消費しないのか? 連発可能なのか? その辺りはきちんと確認しなければ。


 その後も二人で何匹かロックを狩った。


 昨日よりも、俺はいくらか強くなったらしく、スキルを使えば一撃、使わなくても、ほとんどのモンスターを一撃で倒せるようになっていた。


 また、スキルはMPが減らないかわりに疲れる。三体のモンスターが出現したときに、試しに三回連続でスキルを使用してみた。


 すると200mくらい全力で走った時のように、息が上がって一時的に立てなくなってしまった。連続で使用するのは避けた方がいいだろう。


 鳴海さんも最初のうちは少し緊張した様子だったが、モンスターを数匹倒したところで楽勝なのが分かり、途中からリラックスしていたようだ。


 二人で雑談をしつつ、和気あいあいといった雰囲気で狩りを続けた。




 * * *




 もうかれこれ二時間くらいは、狩りをしているだろうか。


 俺は買っておいたペットボトルの水をアイテムストレージから二つ取り出し、鳴海さんに一つを差し出す。


「ちょっと休憩しようか」


 そこら辺の適当な岩に二人並んで腰掛ける。


「柳津君って剣術とか習ってたの? すごい動きだったけど」


「いや、習ってないよ。あれはスキル発動って念じただけで、体か勝手に動くんだ。システムが体の動きを補助してるんだって」


「ふーん、そうなんだー」


 鳴海さんは、分かったような分からないような顔をしている。どんな表情でもこの子は可愛いいな、と脳内で悶えてしまう。


 突如、三匹のモンスターが地面から這い出してきた。今まで相手にしていたのと形は同じだが、体が金色に光ってる。


 俺は即座に剣を構えスキル1を発動。間合いを一気に詰めて一体を撃破。近くにいいたもう一体はスキルなしで剣を叩きつけ撃破。少し離れたところにいる残りの一体を、鳴海さんが雷撃で撃破した。


「「やったね!」」


 鳴海さんとハイタッチする。なんか距離が近づいているようで嬉しい。


「ゴールドロックを三体倒しました。15000Cr獲得。魂力が3増加しました」


 なにっ! 15000だと? 


「15000だってー すごいね!」


 鳴海さんも驚いたようで、可愛い笑顔で喜んでいた。


「レアモンスターだったのかもね」


 お金も増えたことだしそろそろ戻ろうと提案すると、鳴海さんは賛成したので、二人で転移ゲートに向かって歩き出した。


 転移ゲートのところに戻ってくると、双原が待ち伏せしていた。そうか、迷路のような山岳フィールド内で発見するのは難しくても、そこで待ってれば嫌でも遭遇するよね。


 双原の姿を確認すると、鳴海さんは、はぁとため息を吐いて、あからさまに嫌そうな顔をした。


 でも、転移ゲートに入らないとセンターに戻れないので、俺達は仕方なく転移ゲートに歩いていく。


 双原はじっとこちらを見ている。なんか嫌な感じだ。俺と鳴海さんが転移ゲートに近づいたところで、双原は声をかけてきた。


「陽那! こいつはなんなんだよ?」 


 おいおい、下の名前で呼び捨てかよ? なんかイラっときたが、俺はなるべく冷静に答える。


「俺は柳津樹。鳴海さんのゲームシステム上のフレンドで、パーティーメンバーだが何か?」


「お前には聞いてない! 陽那に聞いているんだ!」


 双原は声を荒げて怒鳴ってきた。俺がカチンときて言い返そうとすると、鳴海さんが先に口を開いた。


「まるで彼氏気取りね。ウザくて面倒だからはっきり言っておくけど、私は双原君のことがキライなの! もう関わらないで!」


 はい、来ました……。好きな女の子からの嫌い宣言。俺は双原に少し同情した。


 すると、双原は逆上し鳴海さんに掴みかかろうとする。しかし、彼の手は見えない壁にバチンとはじかれた。


「なっ、警告? 接触制限だと!?」


 あー、この世界に転移したときそんな説明あったな。他者に勝手に触れないとか。


 鳴海さんを見ると指を動かしている。視界に映っているインターフェースを操作しているようだ。


 すると双原がまた騒ぐ。


「鳴海陽那から接触制限レベル4に設定されました。以後一切の接触を禁止します。だと? ちょっと待って……」


 双原は地面に崩れ落ちると、涙目で鳴海さんに訴える。しかし、鳴海さんは全く取り合う気は無いようだ。


「柳津君、こんなやつほっといていくよ!」


 鳴海さんは俺の手を掴むと、引っぱって転移ゲートに入っていった。


 転移ゲートの広場に出ると、申し訳なさそうに鳴海さんが謝る。


「せっかく、大金ゲットでいい気分だったのに台無しだね。ゴメン」


「いや、気にしないで。別にどうということは無いよ」


 こういう時にどんな言葉を掛たらいいのか、俺にはよく分からない。


 女子はスイーツを食べると機嫌が良くなると、どこかで聞いたことがある。なので俺は「甘いものでも食べて気分転換しようか?」と提案してみた。


「いいね! そうしよう」


 鳴海さんは笑顔で賛同してくれたので、二人でセンターに向かって歩いて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ