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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

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疾風さん

 俺の固有スキルの解説と、心の内の暴露が一通り終わったところで、ルイさんは話を変えた。


「せっかくだから、樹君と結月さんも空を飛べるようにしておいて。まずは、訓練場に行って適当に風魔法を習得してきて、適当に使っていれば風魔法のコツが分かってくるだろう」


「訓練場で魔法の形や消費MPや発動の言葉を設定しているのは、魂力が弱く魔法を制御できないのをシステムでアシストするためだ。今の君達の魂力ならイメージだけで制御できるはず」


「もちろん、陽那さんのように固有スキルで大幅な強化がされるわけではない。それでも空を自在に飛ぶくらいなら、練習すれば出来るようになるはずだ」


「飛べるようになったらご褒美をあげるから、頑張って」


 ルイさんは言うだけ言うと、転移ゲートを出して、いってしまった。


 俺達がその転移ゲートに入ると、ログハウスの庭に戻ってきた。


 俺でも、空を飛べるようになるんだろうか? もし飛べるようになれば、きっと楽しいだろう。挑戦してみるか。




 * * * 




 風魔法を習得するために、俺達は訓練所に来ている。


 訓練場とは名ばかりで、中の様子は銀行のATMコーナーとほとんど変わらない。俺と結月は訓練場の端末へ風魔法を習得しに行く。陽那はもう覚えているので、訓練場の中に設置してある椅子に座って一人で待っていた。


 俺が風魔法を習得して陽那のところに行くと、陽那がちょっとイケメンな男に絡まれていた。


「一緒にフィールドに行こうよ」


 どうやらナンパされているようだ。俺が近づくと陽那はその男に「ごめんなさい」と頭を下げて俺の方に駆け寄ってくる。


 その男は陽那を追うように、こっちに近づいてきた。嫌な感じの目つきで俺を見ている。


「お前、その子の知り合いか?」


 知り合いよりは親密な関係だと言い切れる。ゲームのシステム上は恋人だが、二股状態で「恋人だ」と言い切るのも後ろめたいので、どう答えたものかと考えていると、陽那は俺の腕を抱いて男に答えた。


「私の恋人だよ」


「そんな弱そうな男が、君みたいな可愛い子の恋人?」


 男は俺を見下して軽く鼻で笑い、得意げに語りだした。


「俺は疾風のカズヤ。超強力な固有スキルが目覚めて、さっき東のフィールドの二番目の中ボスを倒して来たんだ! 俺と一緒に行こうよ!」


 二つ名をドヤ顔で名乗ってしまう奴など、絶対に面倒臭いに決まっている。早く退散しなければ。


「疾風さんですか、凄いですね。では失礼します」


 俺が陽那を連れてその場を立ち去ろうとすると、結月も風魔法を習得し終わったのか俺達と合流する。


 結月は、陽那が俺にくっついているのを見て、空いている方の腕に抱きつく。すると疾風さんは、目を見開いて驚いている。


「なっ、まさかこの美人も?」


 俺は無視して、さっさと歩きだし訓練場から出る。ところが、疾風さんもついてきて、俺を呼び止めた。


「まて! そんな可愛い子たちに二股しているとは許せん! 俺と勝負しろ!」


 はぁ……やっぱりこうなった。即座に俺は「ヤダ」と答える。


 この男がどれほど強力な固有スキルを持っているかは知らないが、全く負ける気がしない。でも、さっさと帰って飛ぶ練習がしたいんだよ。


 そう思っていたら、結月が耳打ちする。


「一捻りした方が早いかもよ? しつこそうだし」


 しょうがないので、勝負を受けるか。俺は溜息交じりで疾風さんを見た。


「分かった、相手するよ。ここでするの?」


「フッ、俺が本気で戦うと辺りに被害が出る。東のフィールドの二番目の広場で勝負だ」


 俺は「ハイハイ」と応え、疾風さんに付いて行くことにした。


 そういえば東のフィールドって行ったことないな。どんなところだろ? 東の転移ゲートの広場に着くと、三個の転移ゲートが浮かんでいる。


 こっちのフィールドは、二番目の中ボスが撃破済みなのか。そういえば、さっき疾風さんが言ってたっけ。


 疾風さんがそのうちの一つに入っていったので、俺達もそれに続いて転移ゲートに入る。


 転移ゲートを抜けるとそこは屋外ではなく、ゲームでよく見る城の大広間のようなところだった。高い天井にシャンデリア、大理石の柱に、壁面には豪華で緻密な装飾が施されている。


 岩だらけの北のフィールドより、こっちの方が面白そうだな。でもゲームを進行するなって言われてるから、こっちを攻略するわけにもいかないが。


 周囲を見回しているとシステムアシストによって、疾風さんからの決闘の申し込みが通知されたので渋々受けた。


 俺と疾風さんはシステムアシストの号令に従い、向かい合って礼をした。


 疾風さんは剣を構えつつ、自分の固有スキルの解説を始めた。


「俺の固有スキルは『驚速』だ。スピードが大きく上昇し、反応速度も上がる!」


 興味ないんだけど、と思わずため息が漏れてしまう。疾風さんは説明を終えると、勢いよく切り込んできた。


 疾風さんが振り下ろした剣を、俺が刀で受けていなすと体勢を崩してよろけるが、すぐに向かって来て、必死の形相で剣を振り回した。時折剣スキルも使用し攻撃をしてくる。


 確かに速いが、結月よりずっと遅い。何よりこいつは剣を適当に振っているだけで剣術じゃない。


 時々使ってくる剣スキルによる剣技は、基本に忠実で正確だ。だがそのせいで読みやすく対処しやすい、と結月が以前言っていた通りだと思った。


 そもそも、魂力の大きさが違いすぎて勝負にならないことは、最初から分かっていたけどね。


 疾風さんが剣を思い切り振り上げたときに、がら空きになったお腹にそっと刀を当てる。


 そっと当てたはずなのに、疾風さんは派手に吹っ飛んでいってしまった。


「WINNER 柳津樹!」


 かなり手加減したのに一発で終了か。


 今の俺の魂力は一万以上、疾風さんは固有スキルを獲得したばかりの様子だったから、千を超えたあたりだと思う。魂力の差による強さの差は絶大だな。


 これ以上面倒ごとに巻き込まれないように、そそくさと逃げるようにその場から立ち去った。



 

 帰り道、結月が嬉しそうに俺を見ている。


「私が教えたこと、ちゃんと身についているみたいだね」


「あいつが弱すぎたんだよ」


「それでも樹はちゃんと強くなってる。見たらわかるよ。……ご褒美あげるね」


 結月は、俺に抱き着いて唇を合わせた。結月が離れると、今度は陽那が抱き着いて「じゃあ、私も樹にご褒美」とキスをしてくれた。


 面倒ごとに巻き込まれてうんざりだと思っていたが、美少女二人からのご褒美で癒されたのだった。


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