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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

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陽那vs結月

 三人で遅めの昼食を食べている。


 俺は、さっきのことがまだ気になっているので、大人しくしている。陽那と結月の会話も途切れてしまい、沈黙がなんとなく気まずい。


 不意に陽那が口を開いた。


「昼から私もPvPしてみたい。結月、勝負しよ?」

 

 俺と結月がえっちしそうだったことを、やっぱり怒っているのかな? ドキッとして陽那の顔を見るが、機嫌は悪そうではない。


「陽那……、もしかして怒ってる?」


 結月が恐る恐る尋ねると、陽那は顔の前で手のひらを振って、それを否定した。


「怒ってないって。楽しそうだから、私もPvPをやってみたいと思って」


「そっか、じゃあやってみよ」


 二人は外に出て庭に行こうとしたので、俺はそれを制止する。


「陽那と結月が暴れると地形が変わるから、この家を壊さないようにフィールドに行こう」


 陽那は半眼で俺に視線を送り、軽く抗議する。


「樹は私達のことをなんだと思ってるの?」


 俺は前々から言おうと、準備しておいたセリフを言ってみた。


「美人で可愛い、俺の大事な人」


 陽那は半眼になって、呆れた様子で俺を見た。


「樹も言うようになったよね」


 結月は両手を腰にあてて、俺を窘める。


「口先だけで、女を喜ばそうとしてもダメだよ!」


 思っていた反応と違う……。真っ赤になってデレてくれると思ったのに。




 * * *




 気を取り直してやってきたのは、北の山岳地帯フィールドの二番目の広間。


 俺たち以外に人の気配はない。この近辺のモンスターと戦える人は少ないんだろうなぁ。


 ここなら陽那と結月が大暴れしても問題ないはずだ。


 陽那と結月はそれぞれの得物を手に、向かい合って礼をする。早速始めるようなので、俺は巻き込まれないように離れて見物することにした。


「じゃいくよー」


 陽那は予備動作もなく、炎の矢を撃った。かなりのスピードだったが、結月は難なく避ける。あれ、俺なら避けられないな。


「どんどんいくよー」


 陽那が杖を振ると、色とりどりの魔法が四方八方から結月に襲い掛かる。結月はそれらをひらりひらりと躱し、陽那に鋭く斬りかかるが、陽那は軽々と避けたように見えた。


 結月は不思議に思ったのか「刀の軌道が滑った?」と呟いた。


 陽那は胸を張って、得意げに語る。


「風の魔法を体の周りに覆って、ガードしているんだよ。魔刃を使わないと多分切れないよ」


 結月の雰囲気が変わる。あ、本気出したな。「甘く見ないでね」と言い終わると同時に結月が消え、次の瞬間ギィィィンと衝撃音が響く。


 俺が気付いた時には、陽那の正面には氷の壁が出来ており、氷の壁に結月の刀がめり込んでいた。


「驚いた。風の壁を切っちゃうなんて。とっさに氷の壁を出して正解だったね」


 陽那はふわりと後ろに跳んで結月から離れる。氷の壁がピキピキと音を立て、結月の刀を包んでいく。


「驚いたのはこっちだよ。まさか本気でも切れないなんて。しかも氷に飲まれて刀が動かせない。しょうがない……魔刃を使うよ」


 結月の刀に青色のオーラが宿る。氷を粉々に砕き仕切り直しだ。その様子を見た陽那が笑みを浮かべながら言う。


「じゃあ、私も本気で行くからね!」


 今まで本気じゃなかったのかよ……。え? 陽那が宙に浮いてる!


「へへっ、風の魔法の応用で飛べるんだよ」


 得意げな陽那に、それでも全く怯まない結月。


「魔法使いみたい。でも魔刃を使えば空にいたって、刃は届くんだから」


 陽那は空から氷の矢を雨のように降らせた。氷の矢が着弾した場所は、たちどころに凍り付いていく。


 結月は青いオーラを纏った刀で氷の矢を叩き落しつつ、陽那に斬撃を飛ばす。あまりに高速な戦いに、ただ見ているだけの俺も必死だ。


 陽那は縦横無尽に飛び回り、結月の放つ魔刃の斬撃を危なげなく躱しながら、氷の矢を連射し続ける。氷の矢は次々と地面に着弾して、氷が高さを増していき次第に柱のようになっていく。

 

 広間が氷の柱だらけになったところで、陽那は炎の矢に切り替えて連射し始めた。炎の矢が氷の柱を砕き、無数の氷塊となって結月に落下する。

 

 結月は、高速で絶え間なく放たれる炎の矢に対処しつつ、崩れ落ちてくる氷塊にも対処しなければいけない。


 結月は渋い顔で「厄介な……」と呟き、刀を強く握り締めた。刀に宿る青いオーラが増大し、渾身の一振りで周りの氷柱と氷塊をすべて吹き飛ばした。


 しかし、一息つく間もなく巨大な火球が地面をえぐりながら結月に襲い掛かる。結月が大技を使うのを見越して、陽那は強力な魔法を放っていた。


「結月、私の全MPをぶつけるからね」


 陽那の全てのMPを使って放った巨大な火球。これはさすがに結月でも避けきれないかな……と俺は思った。だが結月はその巨大な火球すら、青いオーラを伴う斬撃で両断してしまった。


「今のは、ギリギリだった……MPも無くなった」


 結月は苦悶の表情を浮かべるものの、一気に陽那に近づき一閃、陽那は吹っ飛んだ。同時に結月も何かの衝撃を受けて倒れた。

 

 陽那は試合序盤の受け攻めで、アイテムストレージからミスリルロッドを出し、上空に魔法で待機させておいた。結月が勝負を決めに来たところを狙って叩きつけていのだ。


 二人の試合が終了して、音声アシストが聞こえる。


「DRAW」


 俺は倒れている二人に近づき「大丈夫?」と声を掛け、手を差し出して起こした。二人のステータスを確認すると、MPは0だけどHPは全回復してるな。良かった。


 それにしてもどこかの戦闘民族みたいな強さだな。


「やっぱり結月は強いね!」


「陽那もすごく強かったよ」


 陽那と結月はお互いを讃え合っている。


 二人の美少女の本気バトルを見て、俺は自分が一番弱いことを再確認し心で泣いていた。


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