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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

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PvP

 陽那と結月はMPが全回復したので、モンスター狩りを再開した。とは言っても、俺は彼女たちが魔法と魔刃で、モンスターをなぎ倒しているのを見ているだけなのだが。


 このエリアのモンスターは、今までのエリアよりも強いはずだし、一度に複数出現する。でも、昨日よりも明らかにモンスターを狩る効率は上がっている。


 そのおかげで、お金と魂力がどんどん増えていく。


 Crは家を買うとかでもしない限り、ほとんど必要ない。食料品や、普通に衣類を買うぐらいならログインボーナスとして毎朝貰える1000Crで十分だ。


 武器や防具なんかは高価なものもあるが、今のところ全く必要性を感じない。陽那と結月の強さがチート級なおかげだな。


 この世界のお金は、硬貨や紙幣があるわけじゃない。端末上の数字がモンスターを倒すと増えて、何か買うと減る、ステータスの一部のようなものだ。


 お金は邪魔にならないから、どれだけあっても困らないんだけど。


 また、強さ判定で確認できるモンスターの強さは『強い』から『やや強い』に変わってきた。魂力が上昇したおかげだろう。


「またMP無くなったから、今日はもう帰ろーか?」


 陽那がそう言いながらこっちに歩いてきている。結月もこちらに向かっている。俺も「そうだね」と返事をしながら彼女たちと合流した。


 それにしても、これからは毎日一回MP回復の大義名分でキスできるのか……。


 隣で歩く陽那の唇をジッと見つめてしまった。俺の視線に気が付いた陽那は、照れ笑いになる。


「べっ、別に樹がキスしたいならMP回復とかなくても、いつでもしていいんだからね!」


 中学生のとき、ずっと憧れていた女の子が完全に俺にデレてる。何とも言えない感情が込み上げてきて、思わず吹き出して笑ってしまった。


「なんで笑うのー?」


「いや、陽那が可愛いなーと思って」


 陽那の白い肌が、顔だけ真っ赤になって俯き黙ってしまった。するとそこへ、結月が膨れっ面で、割り込んできた。


「ハイハイ、そこの二人! 少し目を離した隙にイチャイチャしない!」


 結月に対して最初の頃に持っていた印象は『クールな美人』だった。今ではそんな表情も見せてくれる。俺は嬉しくてまた笑ってしまう。


「膨れっ面の結月も可愛いよ」


「――へ?」


 結月も目を丸くして、顔を真っ赤にした。


 俺の一言で、憧れの美少女二人が頬を染めている。そんな奇跡のよう幸せを噛みしめながら、第二エリアの広間にある転移ゲートに戻って行った。




 * * *




 広間の転移ゲートから、北の転移ゲートの広場に戻ってきた。


 センターにつながる通路に向かって歩いて行くと、ガラの悪そうな男二人が、すれ違いざまにわざと大きめの声で言ってきた。


「カワイイ女二人も連れやがって」


 俺に向けられた言葉だと思ったが、面倒なので無視して歩いて行くことにする。


「おい、待てよニーチャン」


 仕方なく振り返ると、嫌な感じの男がニヤニヤしながらこっちを見ている。こんな輩に現実世界で絡まれたら嫌だよなぁ。でも、不思議と全く怖くない。


 男たちは威圧的な目つきで俺を見ている。


「ちょっと、俺と勝負しよーぜ?」


「最初の説明で、プレイヤーキルはできないって言ってなかったけ?」


「PKは出来ないけどPvPはできるんだぜ? 知らねぇのか?」


 ん? PvPってなんだ? 考えると、アシスト音声が聞こえる。


「Player versus player。対人戦のことです。対戦を申し込み、相手に受理されると対戦開始です」


「攻撃手段に制限はありません。先にHPが0になった方が負けです。戦闘終了後にどちらもHPは全回復します。個人でもパーティーでも対戦できます」


「なお、勝っても相手からアイテムやお金を奪うことはできません」 


 ふーん、対人戦ね……。勝ってもうまみは無さそうだな。


「やってもメリット無いしな。断ってもどうせ接触制限で、俺達に危害も加えられないだろ?」


「ハハッ、ビビってんのかニーチャン。そんなに可愛い子二人も連れてるのに?」


 なんかイラつく言い方だな。仕方ない相手してやるか。


 広場の真ん中でやり合っても周りに迷惑なので、端の方に移動する。移動する際に結月がそっと耳打ちをした。


「立ち振る舞いからすると、樹の強さが10だとするとあの二人は3くらいだよ。遠慮なく切り捨てて」


 結月もかなりイライラしているみたいだ。このゲームは安全志向だから、多分切り捨てることはできないと思うよ。


 男が槍を取り出したので、俺も刀を取り出す。男が視界に映っているアイコンを操作する素振りを見せると、音声アシストが聞こえた。


「決闘を申し込まれました。勝負をしますか? ……Yes/No」


「……Yes」


 音声アシストが「礼!」というので軽く頭を下げる。続いて「はじめ!」の掛け声で戦闘開始だ。


 俺はひとまず様子を見ることにする。


「クックック、俺の『魔槍紅蓮龍牙』がお前の血をすすりたいと言ってるぜ」


 男が気分良さそうに何か言っているので、俺はため息交じりで言い返す。


「……その槍、紅蓮っていうより黒いけどな。あと防御フィールドがあるから血も出ないと思うよ」


「ごちゃごちゃうるせぇ! いくぞ!」


 突進スキルを使用し、間合いを詰め一突きしてくるが遅いので軽くよける。


「ホウ、今のを躱すか。やるな!」


 次に連続して突きを放つスキルを使用してくる、一つ一つの突きが遅いうえ、次にどこを狙って突いて来るのか、なぜか分かってしまう。すべて紙一重で避けてやった。


「やるではないか! なら俺様の奥義を受けてみろ!」


 コイツなかなか発言が痛い。さてはこじらせてるな? 俺が冷ややかに眺めていると、男の持つ槍に魔力が流れ、穂先が炎に包まれた。


 あれは……、魔刃じゃなくて、訓練場にあった魔法を武器に付与するスキルか。


紫電轟烈絶火(しでんごうれつぜっか)!」


 おっ、なんかカッコいい! でも遅い。火炎を伴う突きや払いの連続攻撃をすべて躱しきった後、刀を振るのも馬鹿らしくなっていたので、グーで顔面をぶん殴った。


 男は思っていたより吹っ飛んでしまった。


「WINNER 柳津樹!」


 一発殴っただけでHP0とか、弱すぎるだろ……。


 勝負がついてあたりを見渡すと、いつの間にかギャラリーが大勢いてみんなが拍手してくれた。口々に「あいつ強いな」とか「速すぎて動きが見えなかった」とか言ってるのが聞こえる。……ホントか?


「お疲れー 樹、カッコよかったよ!」


「樹、いい動きだったよ」

 

 陽那と結月が褒めながら近寄ってくる。あまり目立つのも嫌なので、そそくさと俺達はその場から立ち去った。


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