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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ファンタジーな異世界に召喚されたら銀髪美少女が迫ってくるんだが?

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救出

 今日のセフィリアは気合が入っていた。


 イツキに頼まれたことをきちんと果たす。そうすればきっと喜んでくれる。「さすがセフィリアだね。もう俺にはセフィリアだけいればいいよ!」って私を抱きしめてくれるはず……。


セフィリアは妄想して、だらしなく笑みを浮かべている。それを見た樹はセフィリアに微笑みかけた。


「どうしたの? 何か嬉しいことでもあった?」


 その言葉に我に返ったセフィリアは、慌てて表情を引き締め樹に応じる。


「いえ、何でもないわ。それよりも今日の試合、イツキなら大丈夫だとは思うけど、気を付けてね」


「ああ、分かってる、セフィリアも気を付けてね」


 樹はセフィリアを抱き寄せてキスをすした。


「任せて、必ずミササギを試合会場に連れて行くから」


 樹とセフィリアがルミーナに視線を送ると、ルミーナは軽く頷きハイドフォグの呪文を詠唱し始める。程なく詠唱は終わり杖から湧き出る紫の霧に包まれ、セフィリアの姿は見えなくなり気配も消えた。


 セフィリアは穂乃香を救出するために王都を出発した。





 セフィリアは、穂乃香が軟禁されている屋敷まで駆ける。彼女の魂力は今や約12万。魔法を併用しなくても時速100kmは軽く出ているし、そのスピードを維持することも容易い。


 穂乃香が軟禁されている部屋に忍び込むと、穂乃香はセフィリアの気配に気が付き声を掛ける。


「セフィリアさん、早かったわね」


 セフィリアは軽く魔力を放ちハイドフォグを解除した。


「さあ、こんな場所さっさと脱出しましょう。ミササギは飛べないのよね?」


 穂乃香は申しわけなさそうに頷く。


 セフィリアは穂乃香をお姫様抱っこして、周囲の気配を感知しながら慎重に窓から飛び立った。

 

 屋敷を囲っている塀を飛び越えようとすると、警報が鳴り響いた。


 セフィリアたちは瞬く間に、大勢の騎士達に囲まれてしまった。穂乃香には逃走防止のために、屋敷の敷地から出ると警報が鳴るように魔法が掛けられていたのだ。


 セフィリアは「仕方ないわね」と、煩わしそうに呟きながら、地面に降り立った。そして「すぐ片付けるから、少し待っていて」と穂乃香の周囲に障壁を張った。


 警備をしていた大勢の騎士達は、セフィリアと穂乃香を取り囲んで剣を抜いている。一人の騎士が大きな声で言う。


「もう逃げられないぞ! 大人しく投降しろ! 抵抗しなければ怪我させないことを約束する!」


 するとセフィリアは、妖しく微笑む。


「ふーん、優しいんだ。でもダメね。私、弱い男の言うことなんて聞く気無いから」


 セフィリアが魔力を放出すると、騎士達の足元から大量の蔦が生えてきて絡みつけ拘束した。なす術もなく次々と倒れる騎士達の中に、一人だけ立っている女騎士がいた。


 セフィリアは、その女騎士に余裕をはらんだ笑みを見せる。


「あなたは多少骨がありそうね」


「私はグレンガルド国王親衛隊No3のベレッタ。テトラステラの一人よ。大人しくその娘を返しなさい」


「断ると言ったら?」


「力ずくで奪うのみ!」


 ベレッタは抜剣して、セフィリアに斬りかかった。


 セフィリアは大剣を具現化して、振り下ろされる剣を受ける。そのまま力任せに大剣を振りベレッタを弾き飛ばした。


 地面に叩きつけられたベレッタは、すぐに立ち上がるも膝が震えている。


 対峙している銀髪赤眼の美しい少女から感じる、底知れぬ恐怖を押し殺そうとベレッタは声を張り上げた。


「少しはできるみたいね。でも、テトラステラの力はこんなもんじゃないわ!」


 ベレッタは呪文を短く詠唱し、剣に冷気を纏わせて、セフィリアに襲い掛かった。


 その刃がセフィリアに届く前に、地面から茨が這い出してきて、ベレッタを打ち付ける。


 弾き飛ばされたベレッタは、空中で姿勢を立て直し、地面に降り立った。


 ベレッタはすぐさま攻撃に転じようとするが、何枚もの赤い花びらが舞い落ちてきて、彼女の周囲の地面が削り取られた。


 セフィリアはゆっくりとベレッタに歩み寄る。


「一応言っておくわね。それ、外れたんじゃなくて、外してあげたのよ」


 その言葉と同時に、強烈なプレッシャーがベレッタを襲う。彼女は逃げ出したくなる衝動を押さえつけて、剣を構えた。


 セフィリアは軽く地面を蹴ってベレッタとの距離を一気に詰めた。そして、間髪入れずに大剣の切っ先をベレッタの鼻先に突き立てて威圧すると、ベレッタはその場に崩れ落ち気を失った。 

 

 セフィリアは周囲の気配を探ると「他に敵はいなさそうね」と呟やき、穂乃香に張った障壁を解除した。穂乃香はセフィリアの強さを目の当たりにして驚いていた。


「セフィリアさん、強いんだね」


 セフィリアは、自分よりも強い者が何人もいることを、うんざりするほど知っている。


「この程度じゃ、強いなんて言えないわよ」


 それは、彼女の心からの言葉だった。





 セフィリアと穂乃香は試合会場まで来た。


 結界に覆われた会場の中からは、二つの大きな魂力が激しくぶつかって、凄まじい衝撃が発生していた。


「早くあの二人の戦いを止めなきゃ!」


 穂乃香が駆け込もうとすると、結界に阻まれて進入できなかった。


「かなり強力な結界みたいだけど、一部分に穴をあけて中に入るくらいなら造作も無いわね」


「なら、早くしないと!!」


「今あなたが出て行くと、タカヒラは試合をやめるでしょ? この試合はアイラスタニアとグレンガルドにとって重要らしいから、どうしてもやるってイツキが言ってるの。だから私はそれに付き合ってあげることにしたのよ」


「でも!!」


「それに今試合をやめたら、タカヒラはグレンガルドに報復するために暴れるでしょ?」


「それは私が止めるから!」


「タカヒラがイツキに負けるのが怖いの?」


「そんなわけないでしょ! 光希は誰にも負けない!」


「なら、試合が終わるまで待ちましょう」


「システムアシスト、二人の戦いの状況を私とミササギに見せて」


「承知しました。柳津樹及び高平光希の視覚情報と音声を処理した映像を表示します」


 樹と光希が戦っている状況が、セフィリアと穂乃香の視界に表示された。


(私、イツキの正妻としての役割を果たしてる♪)


 セフィリアは穂乃香に対してクールに接しつつ、内面では満足して浮かれていたのだった。

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