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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ファンタジーな異世界に召喚されたら銀髪美少女が迫ってくるんだが?

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ダンジョン攻略

 ――翌朝。



 屋敷内の食堂にてセフィリアと向かい合って朝食をとっている。今日もセフィリアは綺麗だなぁ……。見とれている俺に気が付いて、微笑んでくれた。


 はぁ、俺の嫁さん、可愛すぎるよね。


 朝食の後、メイドさんに女王から話があるから来て下さいと言われ、城内の応接室に付いて行った。




 応接室に入ると既に女王はソファーに座って待っていた。俺とセフィリアもソファーに腰掛けた。


「今日は何の用ですか?」


「イツキさんの強さを見込んでお願いがあります。とあるダンジョンを破壊して下さい」


「ダンジョンの……、破壊?」


「ええ、そうです。この世界では魔力が集中する特異点が稀に発生します。集まった魔力が一定の濃度に達するとコアが生成され、空間が歪んで周囲と隔絶された空間が出来上がります。それを私達はダンジョンと呼んでいます」


「ダンジョンコアは周囲の魔力を集め成長します。また、ダンジョンコアからは次々とモンスターが発生します。ダンジョンを放っておくと、強力なモンスターが外に出てくることもあります。そうなる前にダンジョンの最奥まで行き、ダンジョンコアを破壊しなければいけません」


「南の山脈、アイラスタニアとグレンガルドの国境付近にダンジョンが出現したのを確認しました。通常、ダンジョンは冒険者に始末してもらっているのですが、今回は今までにないほどの異常な強さのモンスターが巣食っているとの報告を受け、赤竜騎士団を派遣しました」


「ですが、あまりに強力なモンスターを多数確認したため、ダンジョンコアを破壊できずにやむなく赤竜騎士団は撤退しました」


「イツキさん、そのダンジョンを破壊していただけませんか? 王宮騎士団からは聖竜騎士団長レハタナを同行させるのでお願いします」


 この世界のダンジョンってどんなだろう? 興味はあるな。黙って考えていると、女王は続ける。


「召喚したのも、結婚式を行ったのも我々の都合です。面白くないとは思いますが、ダンジョンを放置すれば多くの国民がモンスターによって苦しめられることになります。どうかお願いします」


 女王は真剣な眼差しで俺に頭を下げて頼み込む。女王がこうまでして俺に頼むのは、自身の利益や見栄のためなんかじゃ無くて、国民のためなんだろう。


 結婚式を盛大に行った理由は、俺の押しの弱い性格を見抜いた女王が、俺とセフィリアをこの国の勇者に仕立て上げるためだったんだろう。


 そうだとしても、国のお金を相当使っているだろうし、セフィリアの素敵なドレス姿を見れたのは俺にとってもプラスだったし……。やらないと多くの人が困るんだよな……、仕方ない、やるか。


「分かりました」


「ありがとうございます」


 俺が引き受けると、女王はほっとしたように見えた。




 女王との話も終わり、俺とセフィリアが部屋から出るとレハタナさんが立っていた。


「今からすぐにダンジョンに行くの?」


「ダンジョンが発生した南の山脈までは、ここから200kmほど離れていて精鋭の騎士達でも移動に四時間はかかります。準備はよろしいですか?」


「俺とセフィリアなら全力で飛んだらすぐ着くな。さっさと行ってサクッと破壊してこよう。レハタナさんも飛べるよね?」


 この前レハタナさんも空中にに浮いていたから飛べるだろうけど一応聞いてみた。


「私の今はいている靴も王家の秘宝です。この靴を履けば空を自在に駆けることが出来ます」


 俺はレハタナさんの履いている素敵なデザインのブーツを見た。すらっとした脚によく似合っているが、履くだけで飛べるようになるのか。そんな魔導器もあるんだね。


「なに他の女の脚をガン見してるのよ?」


 セフィリアに耳をつままれて引っ張られる。地味に痛い。


「いや、見てるのは脚じゃなくて、ブーツの方だよ」


「ふーん、どうだか」


「嫉妬してるの? セフィリアは可愛いね」


 セフィリアは赤くなって目を吊り上げた。


「してないし!」


 レハタナさんは半眼で俺達を見ている。新婚夫婦のしょうもないやり取りを見せられて呆れているのか。なんか申し訳ないのでそろそろ出発するか。


「じゃ、行こうか?」


「私が全力で飛んでも二時間は掛かかる距離ですが、問題ありませんか?」


「俺の能力で空気抵抗を無くすから、レハタナさんもいつもより速く飛べると思うよ」


「そんなことまで出来るのですね」


 三人で城の中庭まで移動して、ゆっくりと空中に飛び上がった。レハタナさんに方向を確認して、指差す方向に飛行する。徐々にスピードを上げていくが、レハタナさんも俺達に頑張ってついて来ていた。

 

 目的地の山脈のふもとまで30分ほどで着いた。レハタナさんは「これほど早く山脈に到着できるとは……」と驚いていた。


 俺とセフィリアはたいして疲れていないが、レハタナさんは軽く息が上がっているようなので、ふもとの街に寄って少し休憩した後、山の奥地にあるダンジョンに向かって出発した。




 木々の生い茂った険しい山道を進んでいくと、徐々に魔力が濃くなっていくのを感じる。


 しばらく進んで行くと、妙な気配のする場所にたどり着いた。前方の景色の一部分が揺らめいており異様な光景だ。そこからは禍々しい魔力が染み出てきている。


 レハタナさんは立ち止まって俺達に言う。


「ここから先がダンジョンです。この歪みに踏み入れると異空間であるダンジョン内に進入できます」


 景色が揺れている部分に一歩踏み込むと、転移ゲートに入った時によく似た感じがした。森の中にいたはずが、周囲の景色が変わり、真っ暗になった。


 俺は火球を浮かばせて明かりにし、周囲を見渡す。地面に壁面そして天井までがゴツゴツとした岩で出来た洞窟だな。


 レハタナさんは何やら呪文を唱えている。唱え終わると、いくつかの光球が浮かんで、周囲を明るく照らした。


「おお、明るくなった」


「低位の照明魔法です。この世界では多くの人が使えます」


「へー、そうなんだ」


 俺は感心しつつ、洞窟内をもう一度観察した。


 背後には空間の歪みがあって、揺らめく森の景色が見えている。ここに入れば元の森に出られるのだろうか。まぁ、ダンジョンコアを破壊すれば、出られるだろうからどうでもいいか。


「ダンジョンコアってどこにあるか分かる?」


「正確には分かりませんが、魔力が濃くなっている方に進めば、ダンジョンコアがあるはずです」


「なら、サクッと破壊して、早く帰ろう」


 俺は探索能力を思いっきり広げてダンジョン内を探った。 


 強力なモンスターの気配がする。それも相当な数だ。確かにキベリアスとか言う騎士団長には荷が重いだろうな。でも、セフィリアの成長した固有スキルを試すには丁度いいだろう。

 

「そういえば、セフィリアの固有スキルってどんな能力なの?」


「大地の支配者。大地に関連する魔法を強化してくれる。もちろん植物操作も強化されるわ」


「今はエルピスのサーバーから切断されてるから、セフィリアが自分で名付けたんだよね?」


「ええ、そうよ」


「ちょっとアサカの能力を意識してる?」


「してないし!」 


 目を吊り上げ語気を強めるセフィリア。


「かわいいなぁ」


 俺が頬を緩めつつ呟くと、セフィリアは赤くなるが、それを誤魔化すように真面目な声色で言う。


「私の能力を確かめながら進むから、イツキは手を出さないで」


「了解」 


 セフィリアは自身の能力を確認しながら、出現するモンスターと戦う。

 

 固有スキル『大地の支配者』か。セフィリアの主観で大地と関連がある炎、土、岩、水魔法が強化されみたいだな。


 今までの植物操作に加えて、植物を具現化させて自在に操れるようにもなっている。燃え盛る薔薇の花や、ガラスでできた茨など、セフィリアのイメージ次第で実際にはあり得ない植物も具現化可能のようだ。


 武器も自身で具現化できるようになり、土魔法を収束させて作った大剣は、白くて透き通っている。石英ガラスとかダイヤとかかな? 一振りごとに煌めく粒子が散って綺麗だ。


 その大剣を握り締めて振り回し、ダンジョンの壁ごとモンスターを切り捨てていた。


 魂力のおかげで重量を無視して振り回せるとはいえ、華奢なセフィリアの腕で大剣を豪快に振り回すさまは、何ともギャップ萌えである。


「ガブリエルも試してみてもいい?」


「あれは魔導器とかで魂力をブーストしないとまともに扱えない。魔力が暴発するかもしれないから今はやめておこう」


「仕方ないわね。箱庭で試すのを楽しみにしておくわ」


 固有武器は威力が暴発して無差別に壊してしまいそうだからな……。俺なら魔導器なしでも魂力をブーストして限られた時間ではあるが使いこなせるだろう。でも、消耗が激しいから普段使いはとてもじゃないが無理だ。


 自然発生で魂力9万以上のモンスターがゴロゴロ出現するのは驚きだが、セフィリアの能力で苦も無く全て薙ぎ倒して進んで行く。


 レハタナさんに目をやると、無言でセフィリアの戦いぶりを見ているので、俺は声を掛けた。


「セフィリアも結構強いでしょ?」


「あなた達とは、決して敵対したくはありませんね……」


「今のところは仲良くしたいとは思ってるよ」


「助かります」


 驚くというより警戒しているのかな? 


 俺達は順調に魔力の濃くなっている方向に進んで行った。


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