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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

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中ボス戦

 桜花さんに一通り刀の振り方の基本を教わったところで、お腹が空いてきたのでそろそろ昼食にしようと聞いてみた。


「そうね。私もお腹が空いてきたかも」


 辺りを見回すと、近くに座るのに丁度いいサイズの岩があったので、俺は「あそこに座ろうか」と、その岩を指差して、その岩の端っこに座った。


 すると桜花さんは、俺と肩が触れそうなほど近くに座った。俺の顔の真横に桜花さんの顔がある。心拍数が上がり体温も上がっていくような気がした。


「柳津君、顔赤いよ。熱でもあるんじゃない?」


「そ、そうかな? 別になんともないよ」


 好きな女の子が間近に座ったからだよ。などと言えるわけもなく笑顔を作って誤魔化した。


 俺はおにぎりとお茶をアイテムストレージから取り出して食べた。桜花さんはサンドイッチと紅茶を買ってきていた。


 食事中、桜花さんの剣術に対する熱のこもった話を聞く。教室では凛としたクールな印象だったが実は熱い人物のようだ。


 フレンド登録もしてくれたので、これからは桜花さんとも連絡がつくようになった。フレンドリストには鳴海陽那と桜花結月の二人の女の子の名前がある。


 現実世界の俺のスマホには、女の子の連絡先などあるわけも無かったが、この世界では二人の美少女と通話もできるしチャットもできるのだ。


 体の奥底の方からジーンと何かがこみ上げてくる。あぁ、幸せだ……。



 その後は探索を再開し、二人で山岳地帯を進んでいく。


 モンスターが現れたので、先ほど桜花さんに指導されたことを意識して刀を振るいモンスターを倒した。


 その様子を桜花さんはしっかりと見てくれていたようだ。


「教わったことを忠実にやろうとして、動きが硬くなってるよ。少しリラックスしてやってみて」


 桜花さんが笑顔で俺の肩をポンと叩く。桜花さんの笑顔が眩しい、また触られちゃった。自分の心臓の音がやかましいくらいに聞こえている。


 それにしても、最初よりも口調が親しみのある感じに変わってきている……気がするだけかな?


 しばらく進むと開けた場所があり、奥に大きな扉が見えた。扉の前には、高さ2mくらいの岩の人形が立っていた。


 あれが中ボスか。アシストによる強さ判定は、やや強い。……やってみるか。俺が覚悟を決めると、桜花さんが一歩前に出る。


「まずは私が切り込んでみるね」


「了解。無理しないでね?」


「分かってる、負ける気はしない」


 桜花さんは、刀を鞘におさめて腰を下げ構える。そして勢いよく岩人形に突進した。


 この世界の強さは、素の身体能力と魂力の比例だと音声アシストが言ってた。


 幼いころから鍛錬していた桜花さんは、素の力で俺とは大きく差があるのだろう。箱庭での魂力の上昇も合わさって、圧倒的なスピードでモンスターに迫る。


 岩人形も、見た目のイメージに反してそれなりに素早い。両腕をブンブン振り回し桜花さんを攻撃する。


 桜花さんはすべての攻撃を紙一重でかわし、抜刀し岩人形を切り刻み、納刀し間合いを取る。


 彼女の動作はその全てが洗練されていて、俺は食い入るように見つめていた。


 桜花さんが何度も岩人形に攻撃を繰り返すと、ついに岩人形が倒れた。


「これでとどめよ」と桜花さんが刀を振り上げたその時、岩人形は数発の石のつぶてを放った。

 

 瞬時に反応した桜花さんは、つぶての多くを刀で叩き落したが、防ぎきれずに頭と腹に命中して、吹っ飛ばされてしまった。


 俺は思わず大声で、桜花さんの名を呼んだ。そして岩人形に向かって手のひらを向け「火炎」と叫ぶ。岩人形は、俺の手のひらから放たれた炎に包まれ消滅した。


 音声アシストが聞こえる。


「ロックドールを倒しました10000Cr獲得。魂力が120増加しました」


 今はそんなことよりも桜花さんの安否だ。倒れている桜花さんに駆け寄り、上半身を抱き起こし声をかける。


「桜花さん大丈夫? ケガしてない?」


「イタタ、あれ? 別にたいして痛くない……かな?」


 桜花さんは不思議そうに首を傾げている。


 俺は桜花さんを観察したが、特ににどこもケガをしていないようだった。でもHPは半分以上減ってる。


 俺は桜花さんに、HPは生命力ではなく体を覆う防御フィールドの耐久値だと説明した。そして、インターフェースを操作し、HP回復アイテムを使用して桜花さんのHPを回復させた。


「ありがと、ゴメンちょっと油断した」


「まさかあいつが魔法を撃ってくるなんてね。でも良かったよ、桜花さんの綺麗な顔がケガしなくて」


 俺はつい本音をポロリと漏らしてしまった。


 すると桜花さんは一瞬目を見開いた後、下を向いてしまった。俺は慌てて話題を変える。


「今日はもう帰ろうか。桜花さん立てる?」


「え、ええ……」


 転移ゲートに向かって歩きながら、先ほどの出来事を思い出す。


 腕には桜花さんの体温と、柔らかな感触が残っている。間近で桜花さんの顔を見つめてしまった。綺麗だった、可愛かった、まつ毛長かった。心臓が激しく脈打っているのを感じる。


 不意に桜花さんが声を掛けてきた。


「柳津君てさぁ、教室で私のことを見ていることがよくあったよね?」


 うぐっ、バレていたのか。俺はギョッとして桜花さんを見る。


「あ、別に怒っているわけじゃないよ。ただ、他の男子達は、……胸とか脚とかをジロジロ見てたけど、柳津君は私の髪を見ていたの? そういう視線って結構わかるんだよね」


「えと、それはそのー、なんというか……」 


 俺が返答に困って俯いていると、桜花さんはスッと近づき、少しかがむような姿勢で俺に視線を合わせてきた。ヤバい可愛い。そしてまた、俺はぽろっと言葉を漏らしてしまった。


「似てたんだ」


「誰に?」


「中学の時、好きだった子に」


「付き合ってたの?」


「いや、卒業式の日に告白して振られた」


 すると桜花さんは嬉しそうに笑う。


「フフッ、そうなんだ。その子は見る目ないね」


「えっ、なんて?」


「何でもない」


 桜花さんは何故か機嫌が良さそうに、ニコニコと笑っている。その時、鳴海さんから着信があった。「ごめん、電話がかかってきた」と桜花さんに断りを入れ電話にでた。


「柳津君、今どこにいるの? 夜は一緒に食べよー」


「分かった。もうすぐセンターに戻るから、戻ったら連絡するよ」


 今度はきちんと通話終了になっていることを確認して、視界のアイコンから桜花さんに視線を移すと「友達から?」と聞かれた。


「ああ、夜は一緒に食べようって誘い」


「私も一緒に行ってもいい?」


 一緒に!? 本来なら二つ返事でOKするはずなのだが、俺はなんとなく言葉に詰まる。すると桜花さんは、若干上目使いで顔を寄せてきた。


「ダメなの?」


「もちろん、いいよ!」


 今度は即答してしまった。俺は桜花さんの顔を間近で見て、再び心臓が激しく脈打つのをのを感じるのだった。


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