表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

そうして僕は、昇格した

[昇格研修 7日目(休日)]




「ごめん!友達とどうしても外せない用事があって!」


「私もすまない!研修でどうも昂ぶってな、我慢できずに組合の道場で剣を振っていた」



カーラとユヅキが帰ってきたのは、夕方になってからだった。

どうやら僕はサオヤックさんに吹き飛ばされた後、気を失ったようだ。


2人は、最初は僕がふて腐れているだけだと思って居たらしく、慌てて回復をしたみたいだけど…気付けは無理だったみたい。



だからと言って、ほったらかしにされたのは…正直落ち込む。



僕はドキュンさんがお見舞いにもって来てくれたリンゴを、齧った。

さっきまで指導員であるドキュンさんとサオヤックさんが、見舞いに来てくれていた。

頭を下げていたけど、今回は僕が弱かったので仕方ない…そう思わないと、余計に凹みそうだ。



まぁ、研修中は友人と接せないし、どの位強くなったか試してみたいって気持ちは解るから…強くはいえない。

何より、罪悪感からか、2人の僕への態度も元に戻った気がするし…、結果的に良いか。



僕の方は少し体が痛むが、明日からの研修には影響は無いだろう。

ベッドから起き上がり、夕食のために水を汲みに外へ出ようとする。



「…あれ、カーラ。首、虫に刺されてるよ」


「ぇ、…ぁ、あ!?そ、そうなの!痒くて痒くて!薬塗ってくるね!」



起き上がった時に見えた、カーラの首筋。

そこに、2つほど真っ赤な虫刺されがあった。

急いで部屋を出て行く位、痒かったんだろうな。



「ユヅキは随分頑張ったんだね、服、ちゃんとしなよ」


「む、そ、そうだな!慌ててたもので気付かなかった」



ユヅキに至っては、衣服がだらしなく着崩れていた。

まるで慌てて着た様な感じだが、それだけ剣を振るのに没頭してたんだろう。




皆、頑張ってる。

そして、僕は…力不足だ。


明日からの研修、死ぬ気で頑張らないとな。




△ ▽ △ ▽ △ ▽



[昇格研修 12日目]



今日も今日とて、冒険者組合本部から離れた図書館の一室で昇格研修だ。

銀級冒険者に求められる知識を頭に詰め込む作業は、本当に眠くなる。

外で活動してた方が、僕には合ってたなぁ。



「よし、んじゃカーラ、こんな時はどうすればいい?」

「えと、銀級冒険者のカードを提示し、銅級より立場が上だと周りに思わせます」

「正解!いやー、やるねぇ」

「えへへ、もっと褒めていいよ、ドキュン!」



「じゃあユヅキ、この危機を乗り越えるには何が最善か」

「はい、徹底抗戦…したい所だが、ここは逃げに徹するべき…どうだろうか、サオヤック」

「正解だ。冒険者は時には引くことも必要。くだらぬ意地で命を捨てるよりかはマシだ」

「ん、肝に銘じよう」




…この空間では、僕だけ仲間外れな気がしてならない。

僕にも質問は来るが、何故か難しくて答えられない事が多い。

その度に、カーラとユヅキから冷めた目を向けられるのだ。



家では普通に接してくれるんだけどね。

でも、最近外出が多いし、夜も遅いんだよな。

3人で居ようと提案するも、悉く断られて寂しい。

けど、大事な時期だからね、自主的に訓練・勉強している彼女ら邪魔しちゃダメ、か。

も、勿論僕も、ちゃんと訓練してるよ?

弓のウデは結構上がったと思ってる、うん。



(…ん?)



今の4人の会話に、何か…どこか引っかかりながら。

僕は、外から差し込む陽を、目を細め見つめた。



△ ▽ △ ▽ △ ▽




[昇格研修 14日目(最終日)]



僕達は、目の前に置かれた銀色のカードに目を光らせていた。



「やった・・・!」


「やったわね!」


「やったな!」



銀級冒険者を証明する、眩しいほどの輝き。

僕達は…、銀級冒険者になれたんだ!



「こんな場所で渡すのもアレだけどなー、頑張ったじゃねーかお前達!」


「試験もほぼ満点で文句なしの昇格だ、さぁ今日は俺達のおごりだ」



大通りから離れているが、ここはドキュンさん達の馴染みの店、らしい。

一見古びた感じだけど、今日は特別に貸切にしてくれたそうだ。

また、銀級冒険者カードも通常であれば組合本部で渡すのに、副組合長へ無理を言って、ここでのお披露目をしてくれた。

最初の印象は最悪だったけど、良い人達だよなぁ…。

でも、やっぱりカーラとユヅキは懐きすぎだとは思うけどさ。



「んじゃま、とりあえずまずは酒だな!」



ドキュンさんが、僕達の前にエールが注がれたジョッキを乱暴に置いた。

この琥珀色の液体はとても苦いが、大人の味、なんだそうだ。

まだ僕は大人じゃないが、銀級という門出に相応しい飲み物なんかもしれない、かな?



「では、3人の新米銀級冒険者へ、乾杯!」



サオヤックさんの言葉に、僕達はグラスをぶつけ合う。

そしてそのまま、緊張で渇いた口へと流し込んだ。


(うわ、苦いぃ!)


僕だけじゃなく、カーラとユヅキも、同じように顔を顰めている。

だよね、よかった僕だけじゃなかった!



と、そこで頭がクラリとした。

あれ?酔った…?

一口しか飲んでないのに?

僕、こんな酒に弱かったっけ…?



(いや、酔ったというより、眠い…)



この酒、まるで、僕が作、る、即効性眠り、薬のよう、だなぁ。



「…寝たか?」

「もう少し、かな?」




声が聞こ、えるけど、誰のか、わか…んな…い。




「こら、サオヤック、まだ早い、ん!」

「ふっ、にしては期待してたようだな、濡れてるぞ」


「ぁ、やだ、ドキュン!今日は痕残さないでね」

「へいへい、にしても彼氏の横でとか悪い女だよなー、お前達」





あー、また、エッチなこと、して、る。

あとで、おこられ、るぞ… … …。





「…だって、私だけを見てくれないもん」


「仕方ないだろ、弱いのだから」





…んー、…おや、すみ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 人型ゴミは死ね A級になればいいって最初に言ったんは女共の方やぞ馬鹿がよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ