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そうして僕は、全てを語った

ロギャルは、幼馴染だった。


僕は、ジャイロダイン教国ガングロ家に勤める庭師の息子だ。

と言っても、親はおらず、孤児だった僕を拾ってくれたおじいちゃんに育てられた。


意外と才能はあるようで、僕は日々、おじいちゃんの仕事を手伝っていた。



「ゼフェルー!勉強マジつらーい!ふけてきちゃった」


「ロギャル様、また侍女長さんに怒られますよ」



ロギャルは、ガングロ家の四女だ。

歳が近いせいもあってか、僕達はすぐに仲良くなった。

それが、恋心になるのも、すぐだった。



だが、彼女は令嬢で、僕は庭師だ。

仲良くなったと言っても、やっぱり「壁」が存在していた。



「ねぇゼフェル、そんな堅苦しい言い方やめなよー、チョー余所余所しい!」


「すみませんロギャル様、そんなの見られたら、また叱られてしまいます」



そして、ロギャルはけっこう砕けた物言いをする。

それは令嬢としては致命的らしく、良く家族と揉めていたようだった。


ガングロ家の四女として。

その立場に相応しい人間になれ。


それはロギャルではなく、ガングロ家四女として生きろと言う事だ。

そんなのおかしいとは思ったけど、僕如きが口を出していい世界ではない。


ある日、ロギャルはガリウス王国のキングスナイト学園へ、留学することになった。

その御供…そして、ロギャルの言動を矯正する係として、僕もついて行く事となった。


とにかく、ロギャルの砕けた物言いは改善されなかった。

だけど、気持ちはわかる。

恐らくだが、ガングロ家四女ではなく、ロギャルとして見られるためだろう。

僕もソレは尊重したかったが、立場的に無理だった。


だからだろうか。

最近では、会うたびにロギャルに嫌な顔をされ、避けられるようになった。

彼女へ恋心を抱く身としては、本当に…つらかった。



そんな時、アイツが現れたんだ。



金級冒険者、ヤラー=レヤック。



「君は貴族の道具ではない、人間だ」

「令嬢として振舞わなくていい、ロギャルと言う一人の女性として振舞ってくれ」

「僕には君が理解できる、僕は君の味方だ」


アイツはロギャルへ…普段僕が思っていても口に出せない甘言を弄して、彼女へと近づいた。

…ガングロ家四女して抑圧されていたロギャルが、ヤラーへ心を許すのはすぐだった。


そして、目の前で…ロギャルとの営みを見せつけやがった。

僕は斬りかかった…だけど、敵うはずが、なかった。

笑いものにするように、僕を甚振り。笑っていた…二人してだ!


後日、僕に待っていたのは…ロギャルからの拒絶、だった。




〇 ● 〇 ● 〇 ●



「そして、僕は…ニムバスさんに拾われました」



この話をするのは、初めてだ。

話している最中も、胸が苦しくなった…けど、前ほどでもない。

だけど、こんな情けない僕は…皆さんから失望されるかもしれない。

それだけが、怖い。



「なんだ、ニムバスと一緒だな」


「本当だな、いや、その気持ちは良くわかる」


「つか、女の落とし方マニュアル化されてないッスか?」


「あるとも思うわよ、ホントあいつ等、女の敵ね…!」



僕の心配をよそに、皆さんは笑っていた。

って、え?


「ニムバスさんも、ですか?」


「詳しくは言ってなかったが、俺もあいつ等に大事な存在を奪われたよ…だが、今はそれ以上の存」


「おっとニムバス、止めろ。話し合い中に顔がにやけてしまうではないか」



そんな、…今のニムバスさんからは、想像もできない。

そして隊長があんなにニヤニヤしてるの、初めて見た。



「ゼフェル、ガングロ家には報告したッスか?」


「はい…、ですが、ロギャルに先を越され…、僕は彼女を襲おうとしたため追い出した、とされてました」



玄関先で、思いきり殴られ…聞く耳も持ってもらえなかった。

ガングロ家で良くしてくれた人々の、あの蔑む目が忘れられない。

ごめん、おじいちゃん。



「…で、そのロギャルって娘が、傭兵団と接触してたのね」


「はい、王国に寄った際偶然…、未練があるわけではないんですが、追いかけたら」



ロギャルは近い内に、自分の理解者だと妄信しているヤラーを助ける。

いくら使ったか判らないけど、本当に愚かな行為だ。



「…自分が被害者と言う認識は無く、恋人と引き離された悲劇のヒロインとでも思っているのであろうよ」


「王国側には通達済み。今回は王国騎士団と合同となる。…ゼフェル、今回は君にも出て貰う」



ニムバスさんの言葉に、心臓がはねた。

初陣…だけど、ロギャルと敵対するって事に…。



「コレは復讐のチャンスだ、…だけど、どんな行動を取ろうと、俺は君を軽蔑しない」




そうか、ニムバスさんの言う通り。

僕を貶めたロギャルとヤクーに、借りを返せる…機会、なんだな。

絶望と共に湧き出た殺意を、今も覚えている。

いや、忘れられるものか!



でも、僕は…!



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