四葉精機 七百年前の全て『二章 魔導工作』
薄暗い部屋の中には、一人の男が佇んでいた。
男はタブレット端末を起動し、その端末に向けて言葉を発する。
「論文No.4の前回の所から。ライティング」
その言葉に対して、端末からは人語のような、滑らかな発声発音が聞き取れる。
「論文No.4。四葉精機 七百年前の全て。ライティングモード起動完了です」
それを聞いた男は、ベッドに寝そべり、何らかの資料を見ながら、論文の執筆内容を話し始めた。その言葉を受けて、端末が復唱し論文を纏めていく。
画面には、発した言葉が自動で変換され、段落や句読点などが適切な位置に配置された。
その様子は、部屋の大画面に表示され、その場で誤変換をはじめてして、適宜修正が可能であるようだ。しかし、その機能の必要性を疑いたくなるほど、正確にまたは、適切に記録されていった。
「第二章。魔導工作」
魔導工作……
それは現代科学の発展において、基礎ともなる技術である。
魔導とは、当初は遺伝的な要素での発現が主であり、先天的な側面が強かった。
そのため、大量のロットを生産する工業的な用途としては、魔導は不向きであると考えられ、主としては軍事転用がなされるケースが多々あったという。
しかし、希少な魔導師を最前線に送ったとしても、魔導は万能ではない。
凶剣に斬られれば当然に死ぬ、弓矢に当たっても死ぬ。
そんな状況で、魔導と工業を結び付けたのが、七百年前に存在したとされる"四葉精機"であったのだ。
魔導を軍事ではなく、工業へ転換し、当時の工作技術のブレークスルーテクノロジーとなった。
その基礎実証データは意図的であるのか、当時の資料は失われたものの、統一暦:二千三百年現在の"技術大国日本"と、呼ばれるに至る、礎となったことは言うまでもないだろう。
男は世間が周知の内容を話した後、四葉精機と魔導師達の邂逅について、一気に踏み込んだ内容を端末に向けて話し始めたのである。
まるで、当時そこに居たかのように、克明に……
この男は何者なのでしょうか。想像を膨らませていただければ嬉しいですね。
次回は、四葉精機の一ノ瀬達が魔導師との初の接触を図る話です。
更新間隔は1日~3日間隔でやっていきます。
次話はできたら明日更新します。