プロローグ
「スタジオの皆さん。本日は世界遺産に登録されております、四葉精機の跡地に来ております」
テレビに映っているキャスターは、なにやら遺跡様の場所で、にこやかに話している。
"四葉精機"とは、教科書にはまず間違いなく登場する、現代科学文明の時計の針を、百年~二百年は進めたと言われる集団である。
また、科学と魔法を融合させ、様々なものを製作し、人々のために尽くしたと伝えられている。
集団と形容したことは、その実態像が明確には記録にないためだ。
統一暦:千六百年頃に突如として現れ、様々な偉業を成し遂げた後に姿を消し、その生産活動の痕跡は、今や遺跡のみである。
「この謎の会社について分かっていることは優れた技術を持っていたことと、そしてこの入り口の"四葉精機"の看板から読み取れる会社名のみです」
キャスターはそう話しながら、遺跡内を歩き回っている。
山間の広大な敷地には、そこに何かがあったのだろうと推測できる建物の基礎が、文化財として保存されていた。
また四葉精機の看板は、アルミの材質および工作精度を見ても、当時の文明レベルでは作り得ないとされる代物であった。
インターネットの掲示板では、定期的に議論される話題であり、未来人? 異世界人? などと、そうとしか考えられないほどの集団と位置付けられている。
テレビを見ているとある男は、その特集を見ながら、タブレット端末を開き、ある題材について執筆作業を進めていた。
『四葉精機 ~七百年前のすべて~』