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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
邪之章
99/112

アンチヒール

開眼された世界の目、その力は超次元故に魔力の消耗が激しい。ピンポイントに座標を狙えたら良いのだが現状不明なので探索となる。

開眼から5分。ルデンは魔力の限界が来てしまう。


「アンユ、補給を頼む」

「あいよー【見つかりそうか?】」


リレーのバトンタッチのような形で触れるアンユの手から光が注がれる。

改変された世界を次々とマーキングしていくルデン。その改変は天変地異そのもの、そして星の生命がそれに対応するべく進化あるいは突然変異を起こす。この変化が個々の反応なのか邪神によるものなのか不明だが一言で表すなら「無茶苦茶」であった。

そんな変異の中で一つだけ変わらない場所が存在していた。近辺にてサキアと黒い天使が戦闘中なことから邪神の砦と化してるのは間違いない。そんな中、あの声が聴こえる…


「何をしている?早く来るんだ基点トリガーよ」


黒い天使がルデンに遠隔で喋っていた。これで開眼中の会話が二度目となるがコチラが言葉を伝える手段が判らない。見えているだけに過ぎないからだ。そんな考えもお見通しなのか天使は続ける。


「思考は伝わる。感覚で喋るといい…」

(アンユはなるべく邪神から遠ざけたい)

「ククラの考えは逆だがな」


その言葉を最後に身体の力が抜け落ちて膝から体勢を崩す。ルデンの鼻から血液が吹き出ていた。アンユの補給を継続してもらいながらも彼女の身体がやや壊れかけていた。


「【おい!どうした!?】だ、大丈夫?」

「治らないか…ははは」


アンユの回復魔法で傷が癒えず、しばらく安静にするしかない状態となった。


「遺骨はアンユの実家だった場所だ…アイツもそこにいる…」


せめて情報だけでもといった様子で、方角を指差しルデンは眠った。何故アンユの治療すら効果がなかったのか、突然の鼻血といい謎だらけのままだった。

リュートは脈の確認をするとルデンが示した方角へと歩む。


「【ソイツは任せた】行くんですか…出会うかもしれないのに【どの道会うことになる】」


スライムとゲジの二人にルデンを託す。


「私も…行く…」

「あのー勝手に決められても困りますよ?」

「皆で行った方が…【これはアンユの戦いだ。他は巻き込むべきじゃない】」


リュートの意志は強く、踏みとどまるアンユの足を突き動かす。それは叶わぬ願いに対して励ましの意味も込められていた。


「【回復っていうのは永遠じゃない、何時か壊れる身体なのが生命だ。でもその精神体や魂といったものは違う何処かへ還るんだ。それはファンタジーなこの世界でも言えるんじゃないか?】えぇ…そうですね、私が死んだ後のルデンは控え目に言って愚かだったでしょう」


何年も研究して禁術にも手に染め、様々な悪魔との契約、そして人ではない存在にすら成り果ててもいた。たった一人の冒険仲間を蘇らせる為だけに多くの犠牲を良しとした。それが元ウィザードのネクロマンサー・ルデンだ。


「【アンユも同じように蘇生するなら俺は止めないが、それがアイツの為になるのかはアンユが決めることじゃない】もしかして怒ってます?」


目覚めさせたのがアンユであるリュートにとっても同じことが言えるのではないか?安らかに眠っていた彼を邪魔したことになる。アンユはそう考えた。そうでなくても怒りを感じるからだ。


「【確かに怒っている。アンユに怒っている。だが君じゃない】別のアンユ…」


邪神は複数いる。アンユという邪神が複数いる。リュートも含めて様々なアンユがこの世界に集められていた。彼は語る…


そんな邪を祓うのも手だが絶対的アブソリュート想起イデアはそれを良しとしない。その概念そのものがあるから祓うなどという戯れ言がある。そんな邪の概念と戯れ言の塊みたいなアンユを俺は許せない。


それは魔法世界において魔法への根本否定でもあった。アンユの回復魔法をこの男が相殺したのではないか?

と少し考えてしまったアンユは、そんな想像をしてしまう自分が嫌になった。

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