飴と鞭
俺の口に目掛けて迫り来る大豆。二度は流石に通用しない、身体を傾けて回避する。
ジレスとの最初のくだりが再び。だが初回は口に入れた大豆も今は現在進行形で何個も俺を襲う。
(ダメだ…このままでは進みそうにない)
弾幕を回避しながらの急接近。これにはジレスも驚きトリガーを引く反応に遅れる。
屈んで下から潜り込むように足を踏み入れ垂直に肘へと叩き込む。
「わりぃ、急用でな」
一応の謝罪をして次へ進んだ。
「ちょ……サキア!?いったぁっ!」
痛覚のタイムラグ。そんなジレスの言葉など無視していた。いや聞こえてなかったのかもしれない。
ジレスが一番驚いたのは行動ではなく速さだった。
(避けられた。と思った次には目の前にいた!私の動体視力で追えていないほど速くなってる…!)
走行中の悟も同様に違和感を感じ始めた。
「あれ?こんな速かったか?」
かなりの老体と聞いたサキアの肉体がこれほど動けるとは思ってなかった。一種のバグでも発生したのか疑いはじめる。
「何かしらの原因で加速したか…原因はなんだろな…」
思い当たる節など勿論無かった。
何秒で到着したのだろうか?体感速度と実際の速度が合わない。何処かでバグが発生した余波にしては大胆だ。
「やっと来たか」
モノホンルーシー再臨でございました。
「バグのせいでニューゲームしちゃってな」
「そうかそうか、とりあえず単刀直入に言おう」
単刀直入。何か急ぎの不具合修正といったとこか?他の二人がいないことから察する。
だが違ったようだ。
「これはゲームじゃない」
「ゲームになってなかったか…アイツらしい」
「そうではない…ククラが構築した世界ですらないんだ」
「ドユコト?」
異世界インフレの追体験し過ぎでゲーム作ってたら世界作ってましたwという無茶苦茶な解釈が彼を余計混乱させた。
これにはルーシーも呆れる。だが、それを見下し嘲笑いながらも状況が状況なのか途端に真剣な表情となる。
「どうやら面倒な遊びに付き合わされてるようだな、だからこうして来てやったぞ?」
「これも何かのルート変更の為ってことで良いんですかね?」
「それとニューゲームと言っておったが…首を跳ねたのは私だ」
衝撃の展開。だがそれでもいい。むしろやれ。
そんなブッ飛んだ脳内思考が連鎖する。そして我に返り一人の女が気になりだす。
「気づいたか…」
「はぁ……なんかそれらしき名前が挙がってたがアイツなのね」
「ククラの指示でな、サキアの首を跳ねた方が魂の回収だけで早いと」
「失敗してますやん!?」
「確かにそうだな。意外…」
そして事の重大さ、面倒っぷり、既に嫁が失敗済み。
相変わらずの襲来。いや再来。え?来てるの俺じゃね?招待?
そんなパーティー招待なんてお断りだ。
「ラマンは来てないのか?」
「時間を戻される前は一応臨戦していたが相変わらず異質だったな友人とやらわ」
「ルーシーでダメだったのか…今の俺に勝ち目なくね?」
「そうでもない、と言いたいが直接本体と戦って実感した。【わからない】」
【わからない】【そうじゃない】【嘘偽り】【全て邪念】
またこれだ。知ってた。アイツはそういうやつだった。それの完全体…を何とかねじ曲げて邪神にしたのが俺だ。絶対的想起に真っ向から俺がぶつかっても勝ち目がない。勝負にならないからだ。
つまりルシ姉の言う実感とは「マジで勝負にならなかった」のだろう。よく分かる。あれを化け物と見るより先に生きる罠と考えてもいい。現に罠にはめられた。完全に捕獲クエストクリアしました。30秒後に帰還します。状態だ。そこにHP0はあり得ない。
「やはり連想での理解が早いな」
「アイツと判れば簡単さ」
「それでこそ夫にふさわしい、だが今の身体では遊べんなぁ?」
「これは最大の致命傷だ…」
「ならば私が」
「ルーシーストップ!」
欲情した嫁が危うい。
そうでした。やろうと思えばやれる形態がありふれすぎている…
「落ち着こう。まずは戻る方法を考えるんだ…」
「その肉体ごと転移も試運転済みだが」
「アッハイ」
「どうしても魂だけこの世界に残ってしまう」
「あーなんか心当たりあるなー(棒)」
何としても友人は俺をここに残したいらしい。ねじ曲げて作った邪神だから友情も腐りまくって当然だが畜生めぇっ!
「なんで跳ねてるの?」
「揺れるであろう?」
(そんなネタの協調!?)
全く接続が遮断されているが何となく伝わる。ククラの大量の芝が…
一方的に読まれてる俺の思考。そして挟まるネタ。身体が離れようが世界が変わろうがやはりそこには俺達の繋がりがある。
「ククラから伝言だ。【友人もじゃね?】だそうだ」
「お、おう……」
即座に邪神とかいう鞭




