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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
邪之章
88/112

薔薇の香りに包まれて

じっと見つめあう二人。

片方は放心。もう片方は困惑。

片方は理解していない。もう片方は全てを理解してしまった。


「本体はどうした?」

「まてまてルーシー。早まるな」


ルーシーと呼ばれてる女性のプレッシャーの大きさに察してククラは顔を手で抑えて止めに入る。

アンユに向ける殺意を静めるとククラの手は外れていた。


「彼を知らないらしい。どういうわけか復活しているようだ。別の魂でな…」


更にククラは話を進めた。


「恐らく転生だ。しかし性別が違うようだ…」


【転生】【性別が違う】

何も詳細を知らないアンユは黙っていた。


「それで?天敵が目の前にいて悟の魂が行方不明。この状況で拷問を始めないというのは何か意図があるのかえ?」


【天敵】

その言葉を聞いてアンユは少し動揺する。


(私、ここで消されちゃうの…?)


まるでその心の声を聞いていたかのようにククラが寄り添う。


「確かにアンユ。君は敵だ。でも味方でもある!」


敵だ。と言った後に味方とも言う彼女の言葉の意味がアンユには分からなかった。


「敵視しているのは君の回復能力。それがこんな形で【邪神】の復活を許したんだ。そしてこの世界に戻ってきた。」


【邪神】というワードに心当たりがあり過ぎるアンユは何も言えなかった。


「そう、邪神なのに代わりない。でもさっき言った邪神というのは複数だ。」


邪神が複数と聞いてアンユだけでなくルーシーも驚いていた。

アンユは真っ先にラマンを思い浮かべる。そして道中で影となった邪神。しかしどういうわけか途中から記憶が曖昧だった。気づいたら身体も世界も変わっている。夢だとばかり思っていた。


「その思い浮かべた邪神は本当に邪神かい?それは【魔王】と【影】なんじゃないかな」


とことん見透かすククラに驚きを隠せない。しかし複数と言っていた邪神が違ったようだ。


「ククラよ。私にも詳しく教えろ。ヤツは何処だ?」

「わからない」

「ならば異世界に探しに行くか?」

「その必要はないな。たぶん悟のとこだ」

「勘か?」

「せやで」


アンユには目の前にいる二人が何かを超越した化け物に見えた。


「そんなに緊張することはない、アンユが来たことで状況を把握できたからな」

「あのー私はこれからどうしたら…」

「待つんだ。トキィは来た」

「トキィ?」


時ではなくトキィと謎のイントネーションが加わって不自然な単語にティンとこないアンユ。


「手っ取り早く済ませた方が良いんじゃないか?」


質問を続けるルーシー。


「ゲームだと思ってあっちも楽しんでいる。邪魔しちゃ悪いさ」

「アホだな」

「アホだよ」

「ていうか見えてるんだな」

「見えてるんだよ」

「私も見ていいか?」

「ダメだね!」

「いや見せろ」

「何故か鳥の糞まみれで閲覧注意だ。これはボウガン?」

「ならば直接見るまでだ」


ルーシーの背後から黒い霧が溢れていき縦に割れた。

それは異世界に繋がるゲートであった。


「ルーシーも中々の探知ですな」

「ふん、暇なのでな…悟がなしでは…」


ルーシーの姿は門と共に消えた。

消失を確認したククラは突然、顔を抑えて笑っている。


「ヤッベェ…今の…激写したわw」

「あのー、邪神って誰のことなんですか?」


邪神が複数。という部分に先ほどから疑問を抱き続けていたアンユだった。


「君のその肉体の持ち主。林田龍斗」

「ハヤシダリュウト?」

「またの名を…」


ククラは少し表情が曇った。無意識にプルプルと震える握り拳を作っていた。

その表情と震える拳からただならぬ怒りを感じる。


「邪神ラマン・アンユ。邪神の肉体はアンユの再生能力で魂すら甦らせた…」

「でもそれは私じゃ…」

「潜んでいた。と言うべきか…しかし彼の肉体は邪神になっているはずだった。アンユがこの世界に林田龍斗の肉体で現界するまでは、ずっとそう思っていた。」


アンユは邪神だった肉体が元に戻ってしまった。

そして元の世界に来てしまった。彼を置いて


「どういうわけなのか邪神の肉体はアンユが、邪神の魂はラマンがベースとなっている。復元されたんだ。アンユとラマンの接触が二つを揃えた。」

「復元ですか…確かに影が私と同じ姿をしたドッペルゲンガーになったりしてましたけど…」

「まあこれ以上説明しても理解はできないだろうな。とりあえず言えることはアンユが邪神のオリジナルをこちらに持ってきたことでラマン・アンユは真の転生を得た。」


ククラは説明しても理解できない。と言いながらも喋り続けた。


―数時間後―


日は暮れて寒さが増す。

ククラは脱け殻となった悟の肉体を眺めていた。

そこにアンユがくる。


「魂だけ異世界に行き。相変わらず憑依して強くなってるなー」

「これが旦那さんですか?」

「そうだ。そしてアンユの肉体の持ち主、林田龍斗とは友人関係で悟は彼を開拓者などと色々と評して呼んでいたな」

「開拓者ですか……何かを生み出したんですか?何かしらの宗教とか」

「あーいや、そういうのじゃなくアレだ…新たな刺激というか未知なる領域というか」

「なるほど、噂で聞いた仏教っていうものですね」

「まあそんな感じだ。その無我に到達した男」

「つまり悟さんも仏教を?」

「ん?!あ、いやコイツは~あははは…」

「ん~?」


ククラもまた彼に思考を毒されていたが、アンユの知識や経験の少なさに加えて、それらの関連性を見出だした未来予知がどれもこれも邪神の影響なのか全く見えない。


(メス堕ちの可能性は全く無いな……これも邪神の力なのか?不思議と加護を受けてるのかアンユは…)


などと妄想していたククラは少し考えた。


「アンユは恋とかしたことあるのか?」

「恋ですか?無いですね」

「とりあえず服を用意しておいた。これでシュミレーションしよう」

「はい?」


何故かアンユはメイド服を渡された。そして周囲の空間が歪む…


「あの、これは男性が着るようなものではないですよね?」

「何言ってんだ。アンユは女だろ」

「いや、そうでしたけど…身体が今は…」

「安心しな!私が保証するから!」

「何をですか!!」


歪んだ周囲の景色は海が広がる砂浜となっていた。

その砂浜に見える一人の男。


「あの…ククラさん?これは…」

「シュミレーションだよアンユ。恋はいいぞぉー!」

「でも、あの男の人って…!」

「ん?あー気にすんな!」


砂浜に見える男の姿。それは紛れもない上木悟であった。


「林田龍斗さんと上木悟さんは友人じゃ…」

「おう!男友達!ゲーム仲間!そして宿敵!さあ、いいもん見せろよ~アンユ!」


ニヤニヤしながらククラはカメラを構えていた。


「あの…これ絶対ダメなやつです!」


アンユの言葉はククラに届かなかった。



後書き


ゼノム「なあシダ」

ラマン「ん?どったの?」

ゼノム「俺の嫁がソリッドヴィジョン越えて薔薇ビデオ作ってるんだよ」

ラマン「へーえっちじゃん」

ゼノム「その出演が俺とお前らしい…」

ラマン「ふぁっ?!」

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