緊急クエスト発令!
「ふんふんふーん♪」
鼻歌を歌いながら墓場で独りスキップをする美女
「アンユ?アンユなの?」
「お母さん、ただいま~♪」
美女は霊と会話をしていた。霊は美女を娘だと思い込んでいた。愛する娘アンユだと思い込んでいた。
「その姿は生まれ変わったの?」
「そうだよ!お母さんも生まれ変わろうよ♪」
「うっ!痛いよアンユ……」
美女は霊に光を撃ち込む、霊の姿が次第に薄くなっていき消滅しそうになった。美女は笑顔で手を振る。
「だって、お母さん……本当のお母さんじゃないもん」
アンユは拾われた村娘
彼女の母親代わりになっていた女性の魂をあえて留めて悪霊にさせた美女は、その悪霊を自らの手で葬った。正しく言うと浄化した。
「皮肉ね~アナタが殺したんだから」
アンユの両親は、この女に殺された。
美女は再び墓場をスキップする。
今度は違う霊が来たのだった。
「アンユ?アンユか?」
「お父さん、ただいま~♪」
今度はアンユの父親が現れた。
「その姿は悪魔になったのか?」
「違うよ、お父さん……」
「ガハッ?!」
「お父さんが悪魔でしょう?メイドさん丸焦げだったね♪」
霊に向けて美女は光を撃ち込む、霊の姿が薄くなっていき消滅しそうになった。美女は無表情で手を振る。
「私が悪魔に狙われやすいのアナタのせいなんだから」
美女は再び墓場をスキップする。
美女の鼻歌は終わり、無表情のままスキップしている。
霊の気配など全て消えてしまった。そのまま美女は廃墟の扉を開く。これが彼女の家だった。
「ただいまアンユ……おかえりアンユ……」
独りで喋る美女、変わらず無表情のまま自分の部屋まで進むと棺が部屋の中央に置かれていた。そこに文字が刻まれている。
【光の英雄アンユ】
枯れた花束が棺を囲うように並んでいた。
美女は棺の中身を覗いた。
頭蓋骨が見える。きっと彼女のものだろう、棺を全て開き全体を確認すると一部が足りないことに気づいた。
「ルデンちゃんってば右手の骨だけ取ったのね~」
(我が宿敵となるのだな)
ラマンの声が響いた。急に右手が熱くなり美女は、左手の人差し指から光を放ち右手を吹き飛ばした。
吹き飛んだ右手は消えることなく床に落ちる。
「目障りな魔王ね~アンユを起こしちゃダメだよ!」
(ラマン・アンユよ!)
「はいはい黙って寝てなさい」
右手首の断面は光輝き元通りとなった。吹き飛んだ右手は未だに熱を感じさせるほど出血し続ける断面から水蒸気が吹き出て止まらない。美女は棺を蹴っ飛ばし部屋に骨が散らばる。
「私はアンユの為に生きるんだから、生かすんだから……」
――――――――――――――――
研究施設の地下ではルデンとルベラが作戦を練っていた。
ルデンから現在の状況を全て聞いたルベラは、しばらく考え込んだ後に疑問点をぶつけていた。
「ルデン様、確かにマテラの魂は死んだのですね?」
「やっと整理できたようだな、勿論マテラは邪神の呪いで完全に死んだ。目の前で見たのだ間違いない!」
「それでも動いている現在のマテラは何なのです?」
「帰還後に確認したが邪神の思念が混じってるように見える。マテラのようでマテラじゃないんだ」
「難しいですね……蘇生は可能でしょうか?まだ動いていますし可能性も…」
「いやダメだ。むしろ動いているのが原因となるんだ……マテラは元々不死身だからな」
「不死身なのに死ぬんですか?」
「あぁ……あまり知られていないがマテラは一応の死があるんだ。しかし若返り蘇生するから不死身といった具合だ。だが今のマテラは無い、全てを消された上での呪いだ」
「つまりマテラの魂は別にあるのですか?」
「ん?いや、これが一番厄介なんだ……」
「すみません、やはり理解に苦しみます」
「無理もない、だがヤツだからできるようなもの」
「思念を注ぎ魂を殺したけど動かすって何ですか!?」
「私も同感だが死んだのだけ間違いないんだ」
納得できていないのは二人とも同じだった。
「とりあえずマキア護衛の為に私は契約している悪魔に監視を頼んである。マキアのことだから気づくことなど無い、監視にも暗殺を企む呪われたマテラにも……」
「とりあえず護衛と監視で行くのは良いのですが最後に、もうひとつ質問いいですか?」
「なんだ?」
「人型のスライムは味方なのでしょうか?」
「それも判らない、邪神も敵意を剥き出しかと思えば飲み物を渡したりと謎しかない」
「その飲み物ってマキア様も飲んで…」
「あぁっ!?」
「ビックリした…」
ルベラの指摘に何か思い当たる部分があったのかルデンは、顔色が悪くなっていた。
「その飲み物の缶を私は気絶して落としている!」
「もしも何かしら仕込まれていた飲み物なら危険ですね!早く回収するべきです!」
「あんな台詞を残すような邪神が普通の飲み物を私に渡すはずがない……」
「万が一ですが、ルデン様の飲み物だけ毒だったりして…」
街は騒がしくなった。
ルデンの研究チーム全員の携帯端末では緊急出動のサイレンが鳴り響いた。
街の冒険者に緊急クエストが発令された。
【355ml缶のドリンクを集めよ】
こんな不思議なクエストに街の冒険者達は、ため息しかなかった。またルデンが変な研究を始めていると誰もが思うからだった。しかしクエストを受けないわけではないのだ。街の冒険者にとっての唯一の大金稼ぎとなるのがルデンの緊急クエストらしい、王室との密室な繋がりのあるルデンにとって金の問題など容易いのだ。実験の日々が続いていた頃などコンビニの買い出しで家が買えるほどの報酬を付けたりと、とにかく依頼内容は下らないが報酬の桁が可笑しいものばかりだった。
緊急クエストを発令したルデンを見届けたルベラも苦笑いしかない。
「やっぱり、自分で探さないんですね……」
「それじゃあ作戦会議で疲れたし弁当買ってよルベラ」
「はーい!行ってきます」
(この人、さっきまでの危機感どうしたの…)
ルデンが一番好きな弁当はコンビニに売っている唐揚げ弁当!
後書き
ラマン「おいウィザードの女、私が死闘を繰り広げている最中に何をしているのだ!?」
ルデン「いやいや死闘まだ始まってないでしょ!てか今はネクロマンサーだし!ちゃんと仕事してるんだよ!」
ラマン「弁当くらい自分で買いに行け!」
ルデン「アンユ寝かせるのと転移魔法で魔力ほぼ無いんだよ!」
ラマン「飛ぶ前提!?」
アンユ「ねぇねぇ、私って主人公じゃないの?」
ラマン「主人公だよ」
ルデン「主人公なんだよ、活躍できないだけで」
アンユ「じゃあ活躍できるように新しい魔法考えるね♪」
ラマン・アンユ「私も一緒に考えようか?」
アンユ「そうだね!二人で考えたら、きっと凄い魔法できそう♪」
ラマンとルデン「「そいつとはダメだ!!」」




