最後の一手
「くっ……!?」
彼はボロボロで膝をつき、俺も何故かボロボロで倒れている。見事なフラグ回収だった。とても清々しい負けっぷりであるが、詳細は未だに理解できない。というか彼がやたらキメ顔なのが凄く疑問である。
「俺達は負けない!」
彼から何かを流し込まれたような感覚が来た。とても力が沸き上がるソレは脳裏に台詞を叩き込む。何処かで見たようなソレは彼が何を言い出したのかをハッキリさせた。
「絶対に負けない!」
なんとなく察した俺は立ち上がり脳裏に出た台詞を言ってみる。そのまま後ろに下がり彼の背中に当たる。二人揃ってサイコロを構えていた。彼は二つ、俺は一つだ。そして……
「「仏教の道を極めるまでは!」」
なんか違うが、だいたいキマった。出任せで俺もやったが少々恥ずかしいものだ。そんな俺に比べて彼は一切の恥じらいも無し、流石である。というか色々と疑問点が多すぎるが勝ち確定のようなサイコロの目が出たらしい、素直に喜ぼう……
いや、無理だ……
「かかってくるがいい…」
ヤバい猫ちゃんもノリノリなのが凄いんだがwこれ何ていうゲーム?ジャンルが定まらないからバカゲーで良いよな?
彼は目を閉じて両腕を胸の前でクロスしてサイコロを構える。周囲のサイコロもそれに合わせるかのように浮かび猫ちゃんを囲む、何かの儀式だろうか?たぶん考えちゃいけないんだろうけど……
[そうだぞ、考えるな感じろ]
目を開くと同時に俺の持っていたサイコロを取る。すると彼が二人に分身したように見えた。それぞれオーラが違う。これは陰と陽だろうか?
「一撃必殺!」
「紅だ!」
それぞれオーラの違う彼が叫ぶ。そしてやることは変わらずサイコロを投げるだけであった。そういえば俺のターン飛んでね?
「なあなあ俺のターンは?」
「お前のサイコロねぇから!」
「そうかそうか……ならば戦争だ」
「サイコロを賭けて勝負だな!いいぜ!」
「ん?!まあいい……銃を構えろシダ」
「いやいや、俺は盾だけだから撃たないから」
「そうだったな、打つんだったな……」
俺も段々とペースを掴んできた。動揺を隠せず度々、思考停止しかけるが何とか持ちこたえる。日頃から停止しそうな彼とは逆だ。かなり難しいものだ。単純だから故だろうか?自分を保つのに必死である。そういった心境を揺さぶり壊すのが精神汚染で力なんだと認識していた。そういったものは立ち向かうべき敵のような認識でいた。しかし彼は、そういった自我が見当たらない。不要と言いながら、それを捨てることさえ不要と言って何もしないやつだった。それでいて彼の行動が不自然なので予測できない。というのは過言であったな、行動そのものは結構パターン化されている。そしてアブノーマルな方面でしか活気が出ないためジャンルさえ絞れば動きはシンプルなのが彼だ。結果が災難なことが多いが……
[アブノーマルも行き過ぎると無我になるのね]
「そりゃストッパーが上にも下にも付いてないからな」
[こっちも下だけ限界突破しとく?]
「oh……」
下を目指すのは、冗談でしか無理だ。ネタ込みであればやると言う訳でもない、上を目指す以外に考えられない。理論のみ述べて俺はやったことないし、これから先もたぶん無理だろう。下に見られるのは屈辱でしかない、一つのプレイとしてなら別だが……
「俺はここで良い……親父の故郷であるここが」
なのに何故、彼は自ら落ちるのだろうか?戦闘放棄なら、まだ分からんでもないが妙な台詞を放ちながら落ちていった。たぶんここで俺が手を差し伸べるのが正解なんだろうけど、笑顔で手を振り見送った。
「はい、お前のサイコロ」
「サンクス」
[開始前から倒すのは見てきたけど自滅する奴って]
(それが彼だ)
そう、それが彼なりの戦い方だ。上に落ちる変態だ。空気の読めない、いや読まないで無力でブチ壊しに行くのが天災だ。というかホントお前は何と戦ってんだ?と言いたくなるような行動ばかりだ。記憶を覗き心境も見透すが実に彼らしい。
サバイバルゲームで自給自足が最低限の全く動こうとしない、RPGで攻撃を最低限に回復エンドレス始める。自作RPGの敵味方の回復量高すぎてテストプレイ頼まれたが一瞬でリタイアした。というか序盤から敵の攻撃痛いって、何で最初から最後までクライマックスなんだコイツ……
ゴルフゲームで人に打つなw音色奏でる保健室の先生よ、何処でも煙炊くから普通になってたよ。肉の配置は必ずトライアングル、くノ一の動きがドゥエリストになりだす。学校から帰宅すると俺の部屋を掃除しているお前がいる。雨の日に学校から帰宅して部屋に入ると俺の服を着ているお前がいる。従兄の引っ越しの手伝いにお前がいる。幼馴染みより先に俺の実家にお前が来るし泊まる。親が駅まで車で迎えに来たときも……
[ナニソレ鳥肌]
(それが彼だ)
[全てにツッコミ所が満載なラスボス]
(それも普通になってた俺も変か)
[まさに天災な邪神]
しかし逆に考えてみたらだが、そんなフレンドリーでありながら俺以外に拒絶され続けた彼の青春は、やはり暗いものだ。もはや自身すら拒絶してしまった彼は、壁を作ったというより何もかも消し去ったような心だ。現実逃避して楽しいことだけ考えていた俺と違う。多重人格でもない、何者でもない、器もない、全て溢れてしまうが故に表に見えるのは、いつもカラフルだ。本気で自分を圧し殺したら彼のようになるのだな……
「じゃあ俺の番だな」
俺はサイコロを投げる。彼を助けたい。
だが、それは俺の為であり俺の自己満足の為であり俺の世界の為である。偽りだっていい、むしろそうであれ、彼を無我から引き戻すのだ。器もない彼に空っぽという表現も該当しないなら作ってしまえ!世界の為に俺の為に嘘で固まってしまえ!
「絶対に死なせない」
生きる為に……
「お前は人間だとダメだ」
「ん?急に何言い出してんの?」
相対性を作り生きることを絶対なる者に……
「すまない、ワガママなのが俺なんだ。お前を創る」
「ニャ?!それは……!」
俺がオリジナルってのが大体理解できた。全て俺に委ねられているんだろう、やるしかないさ……
「全て俺のモノなんだから」
眩い光と禍々しい闇が対となり壁となる。その両方に依存の概念が構築され【生きる為】と【生かす為】となった。【生きる為】に邪神の肉体が構築の連鎖を引き起こし【生かす為】にも究極の回復能力が供えられる。それらは壁でありながらも一つの生命体となる。私欲に満ちた【回復依存の邪神】となった。そして自我の無い【回復依存の邪神】は異世界へ飛ばされ二つの消滅しようとしていた魂を吸い寄せ自我を得る。
「さてと……今日のスレは何があるかな~?」
[向こうも気づいていたのかな?]
「何がだ?」
[サイコロ]
「え?」
最後にゼノムが彼から受け取ったサイコロ……
それは間違い無く本物のサイコロだった
後書き:過去編おわり~次から本編に参ります




