神々の遊び開幕
ひたすら待ったが中々、彼は帰ってこない。
俺は瞑想していた。膝枕をするように猫っぽい人?もしくは人っぽい猫が寝たが気にせず瞑想をした。この生命体の行動よりも存在に疑問を抱くが全て彼のせいだろう。
彼は全てを持ってコチラに還ってきた。たぶんアパートの下敷きになったはずの彼が知らぬ間に復活しているのもそのためだろう。
「やりやがった……」
彼の理想通りの世界となっているのだ。俺も彼のような夢があれば、実行したのだろうか?そもそも異世界転生は可能なのだろうか?しかし、俺には私欲がない。
「何度もアイツに語ったな……」
とにかく探した。自分探しで見つけた自分が何者であるのか、何をしたいのか、何のために、等と語り続けた自分語り。そして正解が無かった。無いのは正解である。無が正解なのだ。俺に言葉なんて該当が無く、返ってきた答えが【ありません】だったのだ。客観的に自分を見たときの歪みかたが世間一般と大きく違った。それを個性があるんだから仕方がないものだろう。等と言う心の広い者だっている。だが俺のは心の広さだけでは理解すると壊される。俺がどれほど控えて発言しているのかも知らないで周囲は、もっとオブラートに包んで欲しいなーといったリアクションしかしないのだ。唯一彼のみだ。俺の全てを聞いた上で挑む者。たぶん中々いない狂人に耐性を持つ者だろう。だが彼でも理解しているのだ。一歩必ず食い下がる。理解したら負けであることを理解しているのだ。
「もしかしたら彼も俺を嫌いになったのだろうか…」
そんなことも考えながら、だが嫌いとは違う何かを感じさせるのが彼だった。友情だろうか?腐れ縁だろうか?どの道、嫌っていたのは自分でしたー何て言いそうだ。いや彼になりきった上で彼を潰す彼になりかねないのが俺なんじゃないか?いや、やはり考えれば考えるほど俺が何なのか判らないのが俺であった。独り遊びだって独りで遊んでる気がしない楽しさもある。客観的に考えてみれば不思議であった。ゲームをし過ぎたゲーマーは無感情で無気力と聞く。俺もそれをよく疑われていたが全く無縁であった。そもそもゲームをする時間なんて一般人と変わらないのだ。プレイ時間の8割は寝ているような俺にゲーマーと色々比較すると、それこそ変なところばかりだ。俺が人間じゃない決定的な部分といえばゲームで説明しやすい。ゲームとは、その人の個性が出るらしい。そのなかで一番、説明に最適なジャンルだとカードゲームだろう。俺は独りでやるのだ。キチガイという単語がピッタリな理由。
並べられたカード、配られた五枚のカードが四セット、ジャンケンが始まる。
もうお分かりだろう?
「ジャンケン、ポン!」
「いくぜ!」
「くっ、今回は厳しそうだ…」
「じゃあ、俺からだな」
俺は独りでやるのだ。まるで四人で遊んでいるかのように笑い叫び怒り悲しみ楽しみだすのだ。これに真っ向から挑む者がいたのだ。
「あぁ、独りぼっちは寂しいと勘違いされるやつね」
とはいえ、彼は俺を理解しようとしない。まあ俺も求めていないし俺自身が判ってなかった。だが、俺の認知力が人間じゃないのだけは最近、判明したんだ。それが彼との出会いだ。
――――――――――――――――――
[来たね]
「あぁ……」
俺が叶えると同時に彼も転生前から厳選済みな領域にいることに転生から帰還後に知ることになる事実。全てを手に入れた。そして持ってきた。それで待ち構えていたのが友人だったとは中々、熱い展開ではないか……
邪神になる前からお前は、やっぱ違うんだな……
ゼノムは追い込まれていた。これが宿命だと感じさせるようなショックがある。彼の考えが全て読めるのだから尚更、俺はアイツが怖いのだ。いや、恐れてはいけない。彼のペースに流された時が俺の最後だ。
[そこに追い討ちかけるような現在の状況を伝えましょうかい?]
「なんだ?」
[可能性と平行世界の概念を消された]
「そうか……」
[考えられることを既に別の私が実証している]
「実践じゃなく?」
[観測したのが、この世界の私のみ残ったからね]
「残った。あまり聞きたくない表現だな……」
俺のスキルである内演算は、こう言いたいらしい。彼に負けた。全てを持って負けた。今度は、俺の番となるのかもしれない……
[平行世界の私達が記憶のみ集合したオリジナル、それがこの世界の残されたゼノムという存在]
「疲れてるようだな…」
[全てを否定されながら今を生きてるんだ]
「別世界で何があった…」
内演算は、そこから何も言わなくなった。いったい何があったのか気になってしまう。教えないということは知らない方が本当にマシなくらい彼がヤバかったのだろう。元々、彼を知って転生した俺と俺の記憶からしか彼を知らない内演算では耐性に差があったようだ。彼を想うだけで異世界の格下に通用してしまうほどの破壊力があった。帰還後に実際は、どうなのか気になるが極力見ないようにしてる。
「さて、どうしようか……」
問題は、内演算の全て、俺が持つ能力全てが通用してないことだ。それもそのはず彼に力は意味がない。単純な勝ちを狙うと必ず負ける。というのも彼が常に壊れた存在だから…
「干渉したら負けだったな、出来ても間違った情報しか出ないはずだ」
彼が可笑しいのは分かりきっている。それをどう倒す?戦闘中に定期的にポーズボタンやTV画面を消す友人とは、比べものにならない対応の難しさだ。彼には一切イタズラが含まれない、ガチだ。しかし感情を抑えきれなくて関係者を抹殺する妹や全て受け止めて死んでもいいと笑顔で死ぬ狂人でもない、理解し難いのは例であげた者にも送るが彼は特別だ。彼は、この先の未来ですら理解する見込みがないほど意味不明だ。それを時も運も支配した上で言わせる日が来るのが彼である。今なら彼が言ってたことの意味が少し分かる。
あれは、この世界でいう二年前となる。
「だから縦も横も封じたら詰みじゃん」
「え?斜めは?」
縦は可能性であり運、横が時間であり普通なら詰む。いや…本来なら逆だったが彼の中では、コチラになっていた。だが彼は斜めを強調した。俺は斜めの線だと思い理解してもいないんだと思っていたが、今ならあの意味が分かる。あれは線じゃなかった。彼は斜めに破ったのだ。何を言っているのか分かりにくいだろうけど、そういうことだった。彼に干渉して封じようとすると、こちらの首が絞まる謎現象が起きる。カウンターだと勘違いしたら最後、コチラは滅びる。彼は何もしていないのだから……
「虚空に生存する方法が、彼では理論が逆だ。むしろそっちがあるべき姿と言わんばかりの本気になった。そして全て終わった。内演算が言っていたのも理解したぞ、俺にも影響され別世界の記憶が次々と出てくる……」
彼が望む無だの虚無感が特徴的な彼を虚空間に吹っ飛ばした世界の俺からは、彼の消失と同時の世界の消失といった不可思議な観測だ。恐ろしいものだ。「吹っ飛ばしたら、ここにいました」って自分がここにいるのだから……
「しかし人格やら記憶やらが重なって尚、俺であるこの世界は何だろうな?」
誰に言っているのだろうか?もしかしたら、これが彼の持つ特性だろうか?自分らしさを感じないのは何故だろうか?疑問に思いながら理解しようとせず突き進む。少しずつ彼に近づいているような気がした。不思議だ。この俺がこんな考えをするのは、どういうことだ?ダメだ!これも別の世界から来た失敗の影響だろう。冷静に自分を取り戻さないと……
「自分って何だ…………。はっ?!おいおい、これはヤバいぞ!?」
本当の全能である自分が本当の無能に狂わされる。単純に力を求めた俺とは違う。彼は常に捨て続けた。そもそも出会ってはいけない存在しない存在だった。再び彼の言葉を思い出す。
「この世界は嘘偽り全て邪念」
全てをはね除け落とされる感覚と引っ張られる感覚が来る。そういえば常に彼はステージランクを下げてくれた気がした。そんな彼のリミッターを勘違いして外したのが別の世界から来た記憶だろう。
内演算が黙るのも無理ない。神が作ったはずの脳内ストッパーが外れてるの自覚して自分で作ってるような人間がいるのだから……
その自作ストッパーも俺から見たら結構な上位に付いちゃってるから恐ろしいのだ。何とも言えない手遅れ感が滲み出るのだから思わず笑ってしまうのだ。狂人なら最高到達地点のはずの領域がスタートラインな友人は可笑しいとしか言えないのだ。
「クッサwwwあれ?w追い詰められているはずなのに笑っちまうぞ……w」
まるで自分の最後を感じて狂ったのかと思わせてしまう笑いが出てしまう。それもそのはず、俺は普通に帰ってしまったのだ。
「おかえり」
「お、おう……」
こんな心理状態で彼に久しぶりに再会してしまった。
「何だ?気持ち悪い笑顔で反吐が出そうだぞ…」
「おっと、すまんすまん……」
本心じゃなかった。彼を理解しかけて敗北間近な俺には彼の全てが怖くて耳を塞ぎたい。何も無いことをぶつけられて、こんなに苦しくなる日が来るのか……
これも全て力を手に入れた故の敗北感だろうか?
まるで弱き者を罵った後の後悔が来るような敗北感だ。それでいて弱き者が実はラスボスでした。そんなオチすら感じさせるような天災だ。
今の俺には彼に膝枕している猫の方が上にすら思えてきてしまうほど絶望している。あぁ、良い寝顔だ……
「この猫は何なんだ?」
「ん……亜人種最高だろ?」
「やっぱお前だったか……」
「まあ、あがってくか?」
「おう!」
やはり全て彼の意思じゃない、彼の本心が全く見えない。知らない方が楽しく会話できたであろう普段のノリだったが、全能の俺には全て俺の楽しみに対する反射にしか見えなくなったのだ。俺なら絶対に楽しめないが、彼は常にそんな状態で本当に楽しみながら、うわべで喋り続けているのだ。全く恐ろしい、あの頃から結構問い詰めては返答が無だが楽しいって意味が分かる。知りたくもない彼の心理状態が筒抜けで、むしろコチラが苦しくなってくる。下心やらが見えてくれたら罵り楽しめるのが格上と格下の娯楽と言えたが彼だと圧倒的に違う。「お前、それが楽しいのか?」と思わず言いそうになるが無駄だ。今まで何度も疑問に思い結果として「聞く相手を間違えてしまった」を本人にも関わらず、やらかしてしまうのだ。普段なら、あのまま猫から入り俺のペースに持っていくはずだった。だが知りすぎた今の俺には、出来ないまま彼を家に入れてしまった。やはり余裕が今の俺には無い……
[焦るな]
(やっと喋ったか……)
[余裕が無かったのは、お互い様だ]
(俺は、どうしたらいいんだ?)
[知るか]
(ですよねー)
[言わなくても分かるだろうけど、彼は死ぬと本番だ]
(そうだよな、転生前から彼は仕上がっている)
[いつも引っ掛かっていたが転生前提じゃないと語れないの?]
(いや、彼がそれほどヤバいと言いたいだけだ)
[同感]
(どうやったら、あんな独り遊びまでやるんだ人間が)
[しかも本気で楽しんでるのがスゲーよな]
(人形遊びの黒歴史を聞いたときは驚いたよ)
[まあ、呪いや儀式の類いですし?]
(こちらの世界も昔はそうだったな)
[むしろ今では女向けな傾向の玩具なのが不思議だ]
(あー、確かに)
俺が内論して実際は無言だろうと彼は何も言わないで何も感じていないが、まるで何かを感じるかのような動きをするから不思議でしかない。行動と実態のギャップに加えて本心が何処にも見当たらない心理状態に俺の何かしらの値チェックを強制させられそうだ。
(いや、サイコロ振る映像をここで流さないで)
[あら?実物をお望みかなー?]
「ん…何でそんなにサイコロ持ってんの?」
俺は気づけば右手に大量のサイコロを握っていた。手の大きさに合わない量のサイコロが滝のように床に落ちる。こんな大量のサイコロをどうしろと言うのか……
「新しいゲームでも始めるのか?」
「あ、いや……」
「ほぉ…3マスや20マスとかもあるのか~♪」
「そ、そうだな♪」
俺ルールを本気で貫き通さなければいけない極限の狂ったゲームが始まることとなった。




