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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
復之章
63/112

精神戦争

私は私…


(ナゼキコエナイ)


彼に正確に意思を伝えることができない


(ソッチデハナイ)


何故か彼は全く真逆の国へ走った


(トドケ)


届かない


(ヨコセ)


「さてと何をしようかな…」


近くにいるはずなのに、同じ身体にいるはずなのに、彼には届かない。遠く感じさせるほど届かない。


(アノニンゲンノシネンタイメ)


本来なら闇の者は彼ではなく私だった。だが、あの人間が強すぎたのだ。軽い気持ちだった。パズーラも同じはずだ。自我を生み出す素材にするはずだった。だが結果は大きく違った。


「戻るとしよう…」

「ごちそうさまでした!」

「俺は食えなかったがな~」

「えぇ、ラマン様の分までしっかり食べておきましたよ!」


あの人間の思念体が生まれてしまった。そして彼は、あの人間だと思い込んでいる。とても皮肉だ。しかも何かしらの強力な意志すらぶつけられている。あの人間の心の中に入り込んでみた時から私も呑まれそうだ。とても恐ろしい人間だった。あんなものがいるとは誤算だったが少し成長できた。しかし、あの人間の自己投影が闇の中にまで来てしまった。その思念体に私もパズーラもあっさり乗っ取られた。そして我々の野望を狂わす恐ろしい馬鹿だ。光を求めて世界を支配し破壊せねばならないというのに、この思念体は少し影響を受けたようだが真逆へ突っ切る。一時的に意識を奪うことができたが呑まれそうになるのだ。私という存在意義を否定され頭が真っ白になっていくのだ。どうしたらいいのだ?この馬鹿を光の化身の所まで誘導するには、どうしたらいいのだ!?


「うーん、何か聞こえるが何だろうか?」


(ワタシダキコエタカ)


「ラマン様?最近、様子が変ですよ?」


(オマエモコノジダイデハヘンダロ)


「ジレスの方が変だろ?」


(ヤハリキコエテイルナ)


「まあ、確かにそうなのですが…」

「否定しないのだな」


当たり前だ馬鹿野郎、ジレスは未来の存在だ。それをこの時代まで呼び出した頭のおかしい馬鹿のせいで色々と滅茶苦茶だ。ジレスは、それを知っているが言わない。気づいているのだ。ラマンという存在が不完全な今の時代に…


「私は敵ですから」

「知ってる」

「それでも私を生かすのですか?」

「理由がないからな…」


(コロセコロセコロセコロセコロセ)


「ん?さっきから何かは判らないが、うるさいぞ…」

「私がですか?」

「いや、何か聞こえるんだ」

「何も聞こえませんよ?」


ダメだ聞こえているが聞き取れていない。伝えたい思いが全く伝わらない。存在してはいけない時代に二つもの存在がいる。しかもリリィの身体に憑依したパズーラの覚醒も意外だった。このままでは不味い…


「やはり気のせいか…」

「………………」

「戻ったら俺は実験を続けるとしよう」


そうだ。彼の魔法も異質極まりない超常現象だ。ありえない現象が起きるのも仕方ないのかもしれない、彼は存在してはいけないのだから、存在しない魔法を使えるのも当然だろう。


(ヤメロヤメロヤメロヤメロ)


この恐ろしい思念体に勝たなければアカシックレコードが崩壊する。あの御方の創造をこの馬鹿は壊してしまいそうだ。それだけは阻止せねばならない、未来からの意志が来るように…


あの御方の意志が来るように…


(シネシネシネシネシネ)


「うるせぇえええぞっ!?」


魔法の実験をするラマンは突然怒鳴る。一瞬の沈黙の後に再び実験に戻る。


「ラマン様…んぅ……何かありました?」

「なんでもない」

「ビックリした…」


ジレスと少女が怒鳴り声で起きてしまった。まだ真っ暗な深夜だった。


「むぅ……何だろうな?心に直接叫ばれたような感覚だ」


胸に手を当てラマンは考える。ここに誰かいるのだろうか?そういえば持ち主はどうなったのだろうか?だが、そんなことよりも心を突き動かす実験への好奇心も不自然だった。


「魂とか魔法で操れるのかな~?」


(ハカイシロ…スベテハカイスルノダ)


ラマンは寝ているジレスの胸の中心に手を当てる。そして魂を見透すイメージをする。


「うーん、これではダメか…」


違うものが映った。ジレスの夢だった。


「反吐が出そうな夢だな…」


見知らぬ少年とジレスが結婚式をする夢だった。結婚式のはずだが周囲が暗かったのは不思議であった。そして見知らぬ少年の剣に見覚えがあり違和感を感じながらも、夢だからと自分に言い聞かせる。


「戦争………」

「ん?」


ジレスの寝言だった。戦争と確かに言った。


「お前の見ている夢は結婚式だろう…」

「戦う………待っててね…」

「どうなっている?」


夢と寝言が噛み合っていない、本当に夢を見ているのだろうかラマンは疑問に感じる。


「精神……カー」

「興味深い夢だ」

「マキア、必ず助けるから…」

「?!」


その単語?が聞こえた時、鈍器で頭を殴られたような激痛が来た。周囲を確認するが誰もいない。少女も寝ている。


「なんだ……今のは」


微かに何か見えた。そんな気がしたのだ。

ダチの反応をずっと待っていた。

何も来なくなった。

もう一人でやるしかないようだ。

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