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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
復之章
58/112

天使と悪魔の誘惑

何かに導かれ走り続けたラマンの先には、国と思われる大きく、そして多くの建物が並んでいた。それは時代を感じさせるような石造であった。


「あれが俺を呼ぶものか?」


ラマンを導く何かは、はっきりと言葉で伝わることがない。なんとなくそんな気がした。そう説明するしかないような何かだった。だが、そこに強い意志を感じるのだから動きたくて仕方ないのがラマンだった。


門だと思われる場所まで近づいてきた。そこに二人の門番だと思われる男が立っている。

その姿は、とても門を守るには不適切なほど装備が薄い。

布一枚と棒に尖った石が付いているだけの簡単な装備である。

その姿を見たラマンは足が止まる。


「いや、待て……ここはいったい何時代なんだ?俺の見てきた街の人々は、洋服くらい着てたぞ」

「そこの男!何者だ!?」

「あ、あれは姫様!?やはりアイツが……」


男二人の目線は後ろにいるジレスと少女に移っていた。そして男二人はラマンに武器を構えて突進する。

ラマンの胸に二発同時に刺さる。だが、痛みなどは相変わらず無かった。出血も無い。


「あ、あれ…?抜けないぞ!」

「まさか悪魔か!?」


男二人は引き抜こうと力を入れるがビクともしない。

後ろからジレスと少女が追い付いた。ジレスの目付きが殺意が伝わる鋭い目へ変わった。


「我が主に触れるということは死ぬ覚悟はあるのですね?人間よ…」


答えなど聞く時間もなくジレスの剣が男二人の首を跳ねた。

首のない男二人の身体は倒れる。


「ラマン様、お怪我は!?」

「いや無傷だけど…」

「よかった…」

「よくない…」


せっかく何か聞き出せそうだった人間に出会えたのに、それを切り捨てたのだ。幸い、門番が無能だったので誰も呼ばなかった。騒ぎになることはなかった。


「いやああああああああああぁああ悪魔だああああっ!!」


と思っていた。だが違ったようだ。二人以外にも余裕で百人くらいの兵がいた。人々は急いで門を閉じる。

騒がしくなった。臨戦態勢に国全体が移っているような、そんな気がした。無数の火の矢がコチラへ放たれる。


「あーめんどくさい…」

「ラマン様、ここは私が」

「俺はいいから後ろの女でも庇っておけ」


素早い剣術でジレスは全ての矢を弾く。余力があるのか魔法も放っていた。ジレスの魔法は門に当たると消えてしまった。


「くっ!魔法が効いてない……」

「おお、てっきり簡単に片付けると思ったが違うのか?」

「お姉ちゃん頑張って!」

「ふぉおおおおおおお♪」


ジレスが少女の声援を聞いて吠えた。ラマンは少しイラッとしたが堪えた。少女も少しジレスの反応に苦笑いだった。

ジレスは目を輝かせて構える。


「ジレスお姉ちゃん頑張っちゃうよ!」

「あ、うん……」


ラマンと少女は後ろで座って見守った。

ジレスの猛攻が始まる。まずラマンと少女を守るための防御壁を展開、門に向かってドロップキック……

門を押さえていた大勢の人々を吹き飛ばしながら門を壊した。


「怯むな、放て!」

「遅い…!」


放つ前に兵の首を全て跳ねた。倒れた兵にジレスの指先から出た糸が入った。

首のない兵が立ち上がる。

切断された断面から口のある触手のようなものが生えてきた。死んだ兵は全てジレスの配下となった。


「殺れ、我が下僕……そして喰らえ!」


応援要請が入ったのだろうか騎乗した兵がコチラへ向かってきている。ゴムのように伸びた触手が馬の脚を喰らいバランスを崩して次々と横転する。


「しゅるるるるるるぅ……ごぎゃぁおぁっ、ふひっふひっ…」

「く、来るなっ!化け物め!」


触手は意味不明な言葉を発しながら兵を啄む。建物に逃げた人々を見つけては喰らう。

食い殺された人々も触手に何かを入れられて震え、首が弾けて触手が生える。

それを遠くで眺めていたラマンと少女はしばらく呆然と座っていた後に感想を述べる。


「うわ……」

「悪趣味な野郎だ……」

「ふははははははは!!どんどん殺っちゃえ下僕!」


ジレスの優勢と思われた無双状態だったが、それも長く続かなかった。触手の生えた兵を斬り倒す何者かが近づいてきたのだ。全身鎧を纏った騎士だ。


「そこまでだ悪魔よ!」

「親玉の登場ですか?ずいぶん早いんですね」


遠くから眺めていた少女が目を見開き叫ぶ。


「お父さん!?」

「え?お父さん!?」


少女の言葉にラマンも驚いた。だが門の先にいる二人に聞こえていない。


「娘を拐ったのは、お前なのか?」

「娘さん?知りませんね……!」


ジレスは剣を構えて突撃した瞬間に背後を取る。だが騎士は容易く反撃した。ジレスの剣を弾き腹に蹴りを入れる。

バランスを崩すことなくジレスはその場で耐えた。


「硬いな…流石悪魔の女だ」

「効きませんよ、少なくとも腹に関しては私は硬いですよ!これくらいの蹴りなんて気持ちいいくらいです」


両者は剣を構える。


「赤ちゃん守るところですから!」

「変なことを言う悪魔だな……」


両者はそのまま相討ちを繰り返した。かなり時間が経っただろう。特に変化がなかった。ずっと眺めていたラマンが立ち上がる。

ため息をしながらラマンは門を抜ける。


「あ、ラマン様ダメです!ここは私がやりますから」

「ん?いやそっちに興味ない」

「何をするつもりだ!行かせないぞ!」


不審なラマンの行動に騎士は動く。ジレスもまた動く。

ラマンを挟むように二人が来た。


「なんだ?俺はただ話し相手を探しているだけだ」

「何を言っている…この悪魔め!私が相手をしよう」

「ラマン様、そんなやつ放っておいて私が相手します!」

「は?」


ジレスの発言にキレそうになったラマンだったが騎士の攻撃が先だった。


「私に背を向けるとは舐めすぎたな…」

「ラマン様!?」

「ん?別になんともないぞ」


騎士の攻撃によりラマンの右腕が斬られた。それでもラマンに痛みが伝わることがないため気づくのに少し遅れた。


「おっと俺の腕が……」

「そのまま切り刻んでやる!」

「させません!」


騎士の追撃をジレスが庇った。ラマンはゆっくり自分の腕を拾って少し考え込む。この状況でラマンは動かなかった。


「ラマン様!早く逃げて下さい!」

「なんなのだ、あの悪魔は……手応えがない!」

「…………………。」


ジレスは指先から糸を出しラマンを引っ張る作戦へ出た。

だが騎士の攻撃によって糸を切断される。

騎士からラマンを逃す術が今のジレスにはなかった。

そんな時だった。遠くから声がしてきた。


「お父さん、止めて!」


少女が叫びながら走ってきた。そして騎士に抱きつく。

騎士は動かなくなった。


「お、お父さん?」

「お前なのか?今まで何処に行っていたのだ!」

「お父さん、この人達は私を助けてくれたの!」


親子の感動の再開だった。少なくとも騎士とジレスにとって……


ニヤリ


少女から不気味な笑顔が一瞬だがジレスから見えた。その時だった。ジレスが握っていた剣が取られる。


「ぐぅおっ……!」

「ごめんね、お父さん……死んで」


剣を取ったのはラマンだった。

少女の背中を通して騎士の心臓を貫いた。

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