お礼の品が何であろうと受け取っておくべきだろ?
そこは科学者達が研究内容を発表する場だった。
「長年の研究成果を今ここで!」
(シュピーン!キラッ☆)
「私は、長年…(以下略)」
「というわけなのだ…ゴホンッ!」
あまりにも下らない長話が多くて皆眠っていた。
「だから皆さん、くれぐれも赤信号は止まってくださいね!」
一人の研究者が真顔でルデンを見つめる。
「ん?何だねその顔…照れるだろうw」
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ルベラに案内された村が見えてきた。何度も激しい閃光が、あちこちで見える。たぶん魔法の訓練でもしているんだろう…
「いや待てよ、何か黒い物体が見える…」
その黒い物体は、瞬間移動でもしているような速度で移動しながら魔法を放っていた。
「え?何か見えるの…?何も見えないよ…」
ルベラにアレが見えないらしい、それほど速いのか…見えている方が変なのかもしれない。
「謎の物体が村に攻撃をしている。急ごう!」
アンユは、ルベラの手をとり…
力強く…
跳躍!
「いやあああああああっ!」
アンユとルベラは、黒い物体に向かって一直線に跳んだ。
「これぞ、邪神魚雷だ!」
それは、一瞬だった。アンユは、黒い物体を華麗?に貫いた!だが直ぐに再生する(させた)
「ルベラは、怪我人を集めてほしい!」
しかし返事がない、ルベラは失神していた。頭を抱えてアンユは後悔する。
速すぎた…
「あっ…ごめんね。もしもし?おーい!」
そうしている間に黒い物体は、形を変える。その姿は、アンユと瓜二つだった。
「複製魔法と補食魔法…」
複製魔法とは、能力や見た目をコピーした物を作る厄介な魔法。自身のクローンや相手のクローンを生み出し連携することが多いが、黒い物体は、それを喰らい習得している。
「クローンで互角、それを喰らい差が生まれてしまった。どうしよう…やっぱり回復止めておけばよかったかな…って、あれ?」
謎の違和感がある。それが何なのかは、まだ理解できない。
アンユの姿をした物体は、影となりアンユの中に入り込む。その行動にアンユは、困惑していた。
「あ、あれ?消えた…のかな?」
黒い物体は、アンユを複製し補食したことで主を見つけた。主の影となり一生過ごすと忠誠を誓った。正確には、アンユの魂ではなくラマンの魂である。破壊の衝動を抑えられない邪悪な塊であり邪神である。名を邪神ドゥヴァレン=レイ
アンユは、影となったドゥバレン=レイの全てを無意識に認識でき理解した。
それと同時に能力の共有も行われ複製魔法と補食魔法に幻影変化魔法を習得した。心に囁いてくる邪悪な声がアンユを襲う。
「ハカイシロ…スベテヲッ!」
「私に身体を…貴様など意味のない存在…消えろ!」
ドゥバレン=レイとラマンの怒りが伝わる…
しかし、屈したりしない。私は、全てを守るんだ!
「存在意義なんて関係ない!無駄かもしれない…でもそれでいいんだ。私は、そう生きていく…」
むしろ開き直ればいい話だ。精神から追い詰める以外に何もできないからだ。そうやって陰から見ていろ!無駄な生活を無駄に過ごし続けてやる。
と色々考えていると謎の違和感の正体が判った。
「どうして魔法の種類が一瞬で判ったんだ…?回復のことしか知識がないはずなのに、それに使い方まで理解できている。この身体は危険だ…」
「んっ…ん~っしょ!あれ…寝てた?」
失神していたルベラが起き上がる。町の人々も周囲に集まっていた。アンユに歓喜の声が
「助けていただき、ありがとうございました!」
「もしかして勇者様!?」
「あの邪神を一瞬で倒したぞ!」
どうやらドゥバレン=レイが影になったことまで、いや、私が回復するとこすら見ていなかったようだ。安心した…
「アンユお姉ちゃん邪神倒したの!?」
そんな周囲の声にルベラも驚く
倒したわけではない、ただドゥバレン=レイが主を見つけただけだった。
だが、影になったことで攻撃を止めてくれた。不幸中の幸いだろう。
アンユは、無言で立ち去ったがルベラに引っ張られる。
「アンユお姉ちゃんにお礼するって言ったでしょ。私の家は、こっちだよ~♪」
そういえば忘れていたなぁ…ぐらいの気持ちでアンユは、町全体に回復魔法を放つ。怪我人や破壊された建物も全てが元に戻った。
ルベラがドアを開ける。大きな広場に無数の本棚と魔導書が並ぶ。魔法の研究施設みたいだった。人間の魂が二つ地下から見える…両親だろうか?
地下への階段と二階への階段が玄関から見て左右の通路にある。特殊な構造だった。アンユは、お礼が何か少し気になっていた。ルベラは、大きな袋をアンユに渡す。
「これはルデン様から貰った貴重なお骨だよ。是非受け取ってほしいな!」
お礼に渡されたのは、骨だった。しかもルデンから貰っただと!?でも26000年経った今生きてるはずがない…でもルデンは、ウィザードだった。何かしらの儀式で寿命を延ばしていても不思議では、ないかもしれないが…
だが何故に骨!?
「ありがとう…大切にするわ。ところでココは、研究施設かしら?」
ルベラの表情が曇る。
「ここは、ルデン様の研究施設だよ。毎日ずっと蘇生だとか魂だとか研究してるよ。」
まさか地下にいる一人がルデンなの!?本当に生きているのかしら?それとも同じ名前の人?
「ルデン様は、自分を実験台にしてネクロマンサーになってしまったの…26000年も研究し続けているの…ちょっと悲しいよね?」
ネクロマンサーになった…?信じられない…
全身の力が抜けて膝から崩れ落ちる。その様子にルベラが動揺して声をかける。
「だ…大丈夫!?ごめんね、変な話をしちゃって」
胸が苦しくて仕方ない、会って事情を聞きたいが自分もこんな姿である。見た目は人間と変わりないが、かつての姿と異なる以上、他人のようなものだ。会うべきなのか悩んでしまう。だが会わねば気が済まない!
「えぇ、大丈夫よ。少し疲れてたみたい、そのルデンって人に会いに行ってもいいかな?」
ルベラは、少し驚きながらも頷く。ルベラからルデンは地下にいると案内してもらった。暗い階段が続く…階段を降りた先に扉が見えた。
「この向こうに…」
ルベラがドアを三回ノックし開ける。
「失礼しますルデン様!お客様です。」
その緊張した姿にルデンの偉大さが伝わる。恐る恐る部屋に入った。
「やあ…アンユ…26000年ぶりだねぇ…」
あの時と変わらない姿のルデンがそこには座っていた。少し違うのが魔力の量と元気な声ではなくなっていた。
「ずっと研究してた。君を蘇生するために研究ばかりだった…でも最近判明したんだ。そもそも魂が別の次元に飛んでしまったら蘇生しても動かないんじゃないかってね~」
一緒に戦ってきた仲間なのに、その言葉に不気味さを感じていた。そうだ…ここにいるルデンは、私の知っているルデンじゃない、ネクロマンサーとなった26000年後のルデンだ。
「私…邪神に転生したみたいだけど、どうして判るの?」
転生しても気づけるなんて普通じゃない、それに感動の再開になるはずなのに、それすらない…不気味だ。
「研究だけじゃなく魔術の習得もしてただけさ、全部見えてるよぉ~何もかも…あの魔王やさっきまで暴れてた邪神だってねぇ…」
そういうとルデンは、本棚から一冊の本を取り出す。
「ラマンの書だ。これは、魔王ラマンが残した闇の魔導書…しかし見てくれ、白紙だ。」
何も書かれていないその本をパラパラとめくって見せる。そして、その本にロウソクの灯りを当てる。すると文字が浮かび上がった。
「邪悪な化身だったラマンが光を求めていた証拠だ。本来なら闇魔法についての暗号が記されていたが、ラマンの死と同時に消えてしまった。だが、光を当てるとこのように文字が浮かび上がってくるんだぁ…不思議だろぉ?」
何が言いたいのかアンユには、理解できなかった。どんどんアンユの中の疑問が増えていく。
「そしてアンユの時空を超えた転生にラマンも着いてきた。君が死んでしまい、魔王も死んだ時に何が起きたか教えるよ。」
心の底から、あの笑い声が聞こえてくる…たぶんラマンは知っているんだろう。
「あの時、世界は崩れたんだ。何もかも…そして部分的に異世界に移動した。」
「崩れた…?」
もう何がなんだか理解できなかった。話のスケールが大きすぎる。
「部分的というのは、物理でもあり文化でもあり魔法でもあるんだ。世界共通の通貨がアースなのも理解できるだろ?」
そういえば、異世界転生のはずなのに元いた世界と変わらないと感じるところが多々あった。回復魔法の使用が可能なのも魔法の存在が移動したってこと?
「まあ、何とかあの二人も無事だったみたいだし、ネクロマンサーになってまで研究してるの私くらいだし…それよりもアンユ…君は邪神になってしまったんだ。それが一番の問題と言える。世界が変わったことよりも問題だ。」
そこまで問題視していなかった…私が何とか抑え込んでいれば大丈夫と考えていたからだ。
「魔王ラマンの魂と、よくわからん邪神の影なんて気にすることはない。それよりもアンユ自身の邪神の力が暴走してしまうことが大変なんだ…他の魂なんて後付けされたお飾りに過ぎないんだよ。転生したのは、アンユであり…その際にラマンの魂を引っ張ったんだから。」
それって、自分の力に溺れるってことか…でも回復しか出来ないし大丈夫だと思うけどな。
「邪神に転生しても私は、苦しんでいる生命を癒すだけよ…心配する必要なんてないわ」
「変わらないねアンユ…でも既に少し暴走して世界を一瞬で一周しただろ?各地で被害報告が確認されていたぞ。」
あれ…そんなことしたっけなぁ…?知らないな…
「自覚なしか…それが問題なんだ。よく聞いてくれアンユ…光魔法で回復すること以外に活躍できそうにないアンユが邪神になったんだ。力の差が大きく異なる身体でコントロールできる方が変な話なんだ。自分の今のステータスランクがどれほどか把握しているのか?」
まるで説教だ。だが懐かしい気もする…ルデンは、いつも回復ばかり考えている私をこうして怒っていた。だが、あの時とは比べ物にならないほどスケールが大きい…
「もし、完全に暴走したら…どうなってしまうの?」
そんなことが起きてしまった時に誰が止めてくれるのだろうか?
「誰も止めることが出来ないと思う。君は、この世界で一番強い…誰かが異世界から強者を呼び出すくらいしか未来がないと言える。」
アンユは、自分に恐怖を抱く…絶望する…もう一つの私が今の私を包み込む…私自身に…私自身の力に…
溺れた
「うぅうううっ…あっ… ぐぅあぁあああああああ!」
引き裂かれる。魂の中身をえぐり出される。
アンユの背から翼がメキメキと伸びる。瞳は赤く光る。身体の所々がギラギラと白く光る。その瞬間、苦しみから解放された。全ての感情が消え失せる。記憶が消されていく…認識ができなくなる…意識が何処か遠くへ
突然の出来事にルデンは、焦る。直ぐにドクロの怪しい杖を手に取り構える。だが、光の衝撃波が杖を弾きへし折る。
打つ手がない…私は、ここで死ぬんだ。そう確信したルデンだった。
徐々に魔力の増加を続けるアンユから放たれる衝撃波は天井や床に亀裂を作っていきながら引き剥がし砕く。
だがアンユとは別の光が見えた。
ふと気づく、大きな袋がアンユに向かって飛んでいく。
「あれは…!」
ルベラに渡した骨だった。その骨がアンユに反応して結合していた。
「あの骨は、プリーストだった時のアンユの遺骨…何が起きているんだ!?」
アンユの身体に、その遺骨が溶けるように入っていく。やがて暴走していたアンユの身体は、元に戻り倒れた。元に戻ったのは、暴走前の姿ではなくプリーストだった時の姿だった。
「眠っているのか…また一つ研究課題が増えたな!」
ルデンは、アンユを抱えてベッドに運ぶ。
アンユが目を覚ましたのは一週間後だった。
「あれは夢だったのね!」
アンユは、ウィザードの姿をしたルデンに飛びつく。




