フェイの授業その五:水属性
ラマンが動き出したのは、数時間後となる。
何故、無反応だったのかラマンも分からない。
無反応の間にモーガンが逃げようともしていたがアラクネが魔眼によって見える黒い糸を引っ張るので倒れてしまう。
「ぎゃふっ!?」
「モーガンちゃん逃げちゃダメだよ…」
「くっ…いたたぁ…」
当たり前のように引っ張るが下手をすると死んでしまう糸でもある。それを互いに知らない。
「なんなの、この心の底から引っ張られる感じ」
「逃げないように結んであげましょう…」
「ま、また糸でグルグル巻きにするつもり!?」
「他に何が?」
「逃げないから止めてぇ!」
「うん、逃げないならいいよ。それより燃えちゃってるね…」
アラクネは辺りを見渡す。ラマンを中心に地面をエグり取り湖も全て吹き飛び森は今も燃え広がっている。二人は、その悲惨な光景を悲しい目で眺める。
様々な生き物が住んでいたであろう
湖が…森が…大地が…
嘘のように消えてしまっているのだ。
「モーガンちゃん、水の魔法で火を消せるかな?」
「あれだけ広いと私一人では無理よ、並みの魔法使いが何百人と必要ね…」
「私にも使えるかな…?」
「そうか!?」
モーガンが何か思い出したようだった。この絶望的な状況でも笑顔が出せるほどの何かをモーガンは思い出した。
「合体魔法、試してみましょう!」
「合体?私は、そんな趣味ないよ…」
「ち、違う違う!私達の魔法を重ね合わせて強力な魔法を放つの!」
「その前に私が水の魔法使えるのか今は、わかんないよー」
モーガンはアラクネの背に登る。背後から手を伸ばしアラクネの手と重ねる。
「ねぇ?私は、そんな趣味ないってば~」
「いいから!水をイメージして、森が燃えちゃう前に!」
「うーん、わかった…」
アラクネとモーガンは目を閉じ水をイメージする。二人の心が重なるような感覚となる。二人の心に映る互いの水のイメージが膨張する。大自然に立ち向かうイメージ、広がる海のイメージ、全てを包み込むイメージ、生命を潤すイメージ、それらが重なる。
「見える…!見えるよモーガンちゃん!」
「いけそうね…よし!」
重なったイメージが一点に集中し魔力を元素へ変換する。
「魔物と合体すると詠唱いらないから素晴らしいわ!」
「だから、そんな趣味ないってば~…」
モーガンは高ぶっている。そんなモーガンを見てアラクネは少し引いていた。巨大な魔法陣が森全体を包み込む大きさで展開される。
「「いっけえぇっ!!!」」
火の海に異常な大雨が降り注いだ。炎は直ぐに消えエグリ取られた大地の窪みには水が溜まり土砂崩れを起こす。
「モーガンちゃん、これ逃げた方がいいよね…?」
「あっちゃーやりすぎた…」
アラクネはラマンとモーガンを抱えて、手に持っていた剣をモーガンに持たせて大きく跳躍し逃げた。
「わぁ…凄い、飛んでるわ…」
「落ちないでね…」
アラクネに必死で、しがみつき意識が飛びかけていたモーガンだった。
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街の人間を糸で捕まえ貼り付けておいた場所へと戻ってきた。そこに捕まえていたはずの人間が一人いないことにアラクネは気づいた。
「あれ?一人いない…」
「何ですかコレ…もしかして餌ですか?」
「魔王様が少し残しておけって言ってたから…」
「あ…あはは…」
街から漂う血の臭いから全てを察してモーガンはそれ以上、触れないで苦笑いした。アラクネがラマンを降ろす。
「んっ…………あぁ?ヤバい記憶が繋がらない…何があった?」
ちょうどラマンが動き出した。寝ることがないラマンが、まるで寝ぼけているように動き出した。もちろん目はずっと開いていた。そんな様子のラマンを見てアラクネが抱きつく。
「魔王様、あぁ…良かった…」
「おい、離れろ…何があったか説明しろ」
「ん?モーガンちゃん逃げちゃダメだって…」
「わきゃ!?」
逃げようとしたモーガンを直ぐに察してアラクネが黒い糸を引っ張る。モーガンは変な声をあげ倒れた。
「あぁが……くるっ、ぴぃ……」
「私にも状況が読めませんでしたが天使のような女と魔王様がいました。死闘を繰り広げていたのか湖も周囲の森も酷い有り様でしたね…」
「そうか…まあいいや、それより…」
ラマンは、モーガンの頭を掴みあげる。
「授業の時間だ」
「あー神様ぁ…助けて…ぐほっ!?」
その台詞に少しイラっとしたラマンは腹を殴った。
そんな姿を見せられて糸に貼り付けれた女達が叫ばないはずがない。




