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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
復之章
46/112

魔王の覚醒

俺をじぃじと呼びながら空から幼女が降りてきた。

翼に尻尾に爪と見た目からして悪魔だった。

俺が怒鳴ったので少し不安な様子、俺も嫌な予感しかしないので不安しかない。だが、この身体は初代魔王のものだ。転生していきなり拉致られてるのだから速やかに始末しておくべきだろう。面倒だ。特にこんなガキだと余計に面倒だ。だが種族が悪魔としか判明していない今の状況では弱点が判らないのだ。慎重にいかなければ彼の意志に流される可能性が高い…


「お前は誰だ…敵か?味方か?」

「じぃじ!何処に行ってたの!?ずっと探したんだよ!三日も魔界に帰ってこないなんてリリィは、じっとしていられないよ!」

「誰だと聞いている…!俺は、お前の知っている魔王じゃないんだ。敵であるなら戦うことになるだろう…」

「どうしちゃったの?もしかして実験に失敗して変になっちゃったの!?」

「俺の質問に答えろ…」


ヤバい、俺はガキが嫌いだ…考えろ!弱点を探せ!初代魔王との関係性が不明だ。どんな繋がりとなる?まさか祖父と孫なのか?じぃじと呼んでいるが初代魔王をそんな呼び方をするとなると孫になるのかもしれない、つまり三代目の魔王候補なのか?コレが!?


俺が必死に考えていると背中がムズムズした。何かが飛び出すような感覚を背後に感じた。まさか…


「リリィ!早く、コイツから離れろ!コイツは危険だ!私の身体を乗っ取ったのだ…!早く…我が愛する孫リリィよ…早く…」

「えぇっ……」

「じぃじ!?」


俺の背後から霊体だと思われる初代魔王が出てきた。


「まだ生きていたのかコイツ、そして何で出てくるんだコイツ、今どういう状況なのコレ…」


思考が追いつかない、パニックになりそうだった。

落ち着こうとするが情報量が一度に多く脳に迫って圧迫される。気分が悪い、冷静に対処しなければ敗北を予感したからだ。彼の意志によってこのままだと流されてしまう。


「じぃじを乗っ取った…?誰か知らないけど、じぃじをいじめりゅなぁあああああ~!!」


ひたすら次の行動を考えていた俺に向かってリリィが走ってきた。そして泣きながらポコポコ叩かれた…


リリィが何かしら特有の喋り方をしているのを聞いて俺は彼の意志によるものだと即時、察した。これはヤバい、彼に流される。どうしたらいいのだ?この運命のネジ曲げをどう回避したらいいのだ?彼の考えが手に取るように解ってしまう。次に何が来るのかなんて予想できてしまう。それを阻止しなければ俺の理想から離れてしまう…


勘ではあった。だがラマンにとって彼との意志のぶつかり合いは、ここで始まったわけではないのだ。意味不明なレベルで自分が最も望まぬ結果が迫る感覚になるからだ。


「リリィ!早く逃げるのだ!そして皆に知らせるのだ!」

「嫌だぁああ!じぃじと一緒がいいもぉん!」

「…………………。」


俺は様々な考えや感情が出てきそうになった。だが、俺には前世から備わった謎の特性がある。一定のラインに達すると誘発する謎の特性だ。


「うるさいな…」


頭を空っぽにした後に冷酷になることだ。それが発動してしまった。これになると俺は止まらない…


「や、止めろ!孫に手を出すな!」

「………………………。」

「じぃ……じ…たすっ」


リリィの首を掴み湖へ投げた。リリィの身体は水を切り何度か跳ねた後、樹木に直撃した。初代魔王が叫ぶが何も変わらない。

ラマンは、ゆっくりとリリィの前まで歩く。そして翼を掴んだ。

リリィは頭を打った衝撃で気絶していた。今のラマンに何をしても無駄であろう。

血飛沫を出しながらリリィの翼は引きちぎられ地面に落ちる。

初代魔王は発狂していた。魔王になったとはいえ、家族を想う気持ちは人間と一緒のようだった。魔王とは悪の象徴のようなものだが、それは人間からしたらの話だった。それなりの正義があった。変わった正義がそこにあった。

だがラマンは違う。彼の理想を壊すため、あらゆるものを破壊していく。利用価値があろうがなかろうが関係なく、求めるものでないのなら容赦なく切り捨てる。

ラマンが魔王の肉体を手に入れたのも運命なのかもしれない。


リリィの髪を引っ張り上げ、その顔面に向けて拳を入れようとした。その時だった。

彼の意志がラマンの運命をネジ曲げようと操作する。初代魔王の霊体が突然消えた。

リリィの顔面に近づく拳がリリィの手で抑えられた。ラマンの腹に蹴りが入る。


地面を削りながらラマンの身体は湖へ落ちる。

起き上がったラマンの前には、ちぎったはずのリリィの翼が紅く色の付いた六本の翼になっていた。

強烈な怒りを感じさせる覇気が向けられるがラマンは無反応だった。二重に声が重なって聞こえる。初代魔王とリリィの声が同時に聞こえた。


「許さない…私が殺らねば!気が済まない!殺す!私の身体を奪った怨み…仲間を殺した怨み…愛する孫を傷つけた怨み………復讐してやるっ!!」

「…………………。」


彼の意志が魔王を通じてリリィに憑依させた。リリィの隠された能力を最大限に引き出し怒りの刃をラマンに向ける。


――――――――――――――――――――


「効果無かった…」

「もっと練習したらいつか骨抜きにできるはずです!」

「本当!?」

「この私が言うんです!間違いありません!」

「私、頑張るよ!」

「その剣って…もしかして貰ったんですか?」

「うん、重いけど魔王様の闇がいっぱい…」

「やっぱり好きなの?」

「うん…」


初代魔王とラマンの死闘が始まろうとしていることなど、アラクネとモーガンは知るはずもなく魔法の練習をしていた。

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