表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
回之章
4/112

もう!頭にくるっ!(物理)

綺麗な夜空をアンユは、ぼーっと眺めていた。見覚えのある様々な星座に気づく…


「よく皆で星を眺めたな…」


この世界にも星がある…宇宙がある…

アンユは、その大きな世界を見つめ自分の問題など些細なことだと言い聞かせる。

星を眺めながら歩いていると村に着いた。日の沈んだ今の時間に出歩く者など、誰一人として存在しない。

はずだった…


「やっほー♪こんな遅くに何をしているのかな?」


陽気な明るい女性の声だった。その女は、全く警戒などしていなかった。アンユは、黙っていた。


「私ね、この村を守るために天から舞い降りた天使なの。アナタから神秘的な魔力を感じるの、悪いヤツじゃなさそうね?」


アンユは、自分の立場を必死に考える。邪神である今では、全てが敵になるような感じがするからだ。もしラマンの邪悪な魂を感知していたら戦闘になっていただろう。癒しのオーラのおかげで怪しまれることは、なかった。しかし何を話せばいいのか…


と、アンユが考え込んでいると天使が顔を近づける。


「んーっ?迷子なのかい?よかったら私の部屋に泊まる~?」


アンユは、頷く


「じゃあ、着いてきて!」


天使は、古い小さな小屋の扉をゆっくり開けた。

何もない部屋だった。壁のシミが少し目立つ。


この村を守るために…つまり貧しい村なのかもしれない

私にできることは、あるだろうか?


「アナタ冒険者だったりするの?こんな遅くにウロウロしてたらモンスターが出て危ないもん。」


冒険者、モンスター…聞き覚えのある単語だ。

もしかしたら私のいた世界と、あまり変わらないのかも。

アンユは、頷く


「そっかー♪じゃあさじゃあさ!どんな魔法が得意?」


天使は、目を輝かせて問う。もちろん回復魔法しかない。

自信を持って言いたいが今の私は邪神だ。少し不安でもある…


「回復魔法です。まだ、よくわかりませんが…」


それを聞くと天使は、跳び跳ねた。


「か…カカカカカ、回復魔法使えちゃうの!?なんですかアナタ?無敵ですか?最強ですか?神ですかぁっ!?」


そんなに驚かれるようなことだろうか…


「じゃあ是非、この村の人々を治療してほしいです!」


天使に腕を引っ張られ小屋を出る。天使の突然の行動に思考が追いつかなかった。ぼーっとしていたアンユは、引きずられた。

大きな屋敷に着く、ここに怪我人が集まっているのだろうか?

天使は、扉を蹴って開けた。うむ、荒いよ天使さん…扉を大切にね。


「タダとは、言わない!お駄賃あげるから~よろしくぅ!」


アンユは、震える。目の前に広がる無数のゾンビの群れ…いや、待て待て…怪我人じゃなくそういうヤツですか?これは、治療の域ではない…


「蹴散らしても構わんよ、ゾンビだからね♪」


天使とは、時に無慈悲である。荒い…本当に荒い…

焦るアンユだったが、近づくゾンビ達は、まばゆい光に包まれ人間に戻って倒れる。これに驚かない方が変なものだ。


「詠唱無しで魔法使うなんて冒険者さん凄い!」


無意識に展開している癒しのオーラは、みるみるゾンビを包む…


「…っ!?」


アンユは、自分の能力に驚き固まっていた。しばらく呆然と立ってから、幾つか疑問が出てくる。

(何故こんな場所にゾンビが大量に閉じ込められていたのだろうか?いったいこの村で何が起きたのか…天使は、先ほど蹴散らしても構わんよと言った…本当に天使なのか?)


「ありがとう冒険者さん、これお駄賃ね。7000アースだよ♪」

「…っ!」


今アースって言った?そんなことって、あるの?


「あの…アースって勇者の…」

「そうだよ~、26000年前に伝説の勇者となったアース=マテラを称えて全世界の基本通貨は、アースになったの。よく知っているね、凄い昔話なのに…」


26000年!?落ち着こう…私は、魔王と転生したのだから、変なのは、むしろ私の存在のほうだ。冷静になれ…いつラマンが主導権を奪うのか判らないのだから。


「じゃあこれは、知ってる?伝説の勇者とその仲間の名前を…勇者には、三人の仲間がいたの。その三人は、英雄として語られているの…ナイト・ウィザード・プリーストの職業よ。」


そんなの誰よりも知っている、その一人なのだから…


「ナイトのマキアにウィザードのルデン、そして…」

「そのプリーストがアナタ…でしょ?」

「……………!?」


そう言うと天使を邪悪なオーラが包むと中から悪魔が現れた。突然の出来事にアンユは、少し怯む。だが先ほどからの出来事が全て繋がり頭の整理が出来た。


「ずっと待ってた、ラマン様の復活を待ってた。復活の儀式を何度も何度もやってきた。沢山の生け贄を捧げてきた。闇を集めた。それでもダメだった。アナタが…アナタがラマン様の魂を引っ張った…死んでもアナタがラマン様の邪魔をしたから…!でも意外ね、邪神に転生するなんて」


その言葉には、様々な感情が込められていた…怒り憎しみ悲しみ…そして愛。戦闘になるのかと思ったが、そうではないらしい。悪魔は、ゆっくりと


「ラマン様に御会いしたい…愛しのラマン様に、もう一度…どうかお願いです。」


土下座をした。


普通ならその思いを伝えるために人は、悪魔だろうと手助けしてしまいがちだが、今の私がそんなことをしたら世界は、再び支配されてしまうだろう。魔王なんかに主導権を譲るわけには、いかない。ましてや悪魔のために


「それだけは、出来ません…私は、世界を守るために魔王の魂を抑え続けなければなりません。」


それを聞くと悪魔は、膝から崩れ落ち泣き出した。しかし同情したらダメだ。だが、胸が苦しい…


しばらくアンユは、考えた。この気持ちをどうしたらいいのか…そして思い付いた。私が出来るのは、コレだけだと…


「私は、回復だけしか取り柄のない愚かな存在です。邪神となった今、全てを癒すと心に決めております。アナタの気持ちが少しでも楽になれるように癒しましょう。」


アンユは、悪魔に指先を向け光を集めて癒しの波動を放つ。つもりだった…光の中に少し黒いものが見えたような気がした。まさか、こんな時にまで邪魔をすると言うのか…だが、違った。光と闇の混ざった波動は、確かに癒しの波動だった。それを受けた悪魔の顔の表情が優しい笑顔に変わる…善意も悪意も何もかも満たされた悪魔は、眠ってしまった。


「ラマン様…やっと会えた…」


あれから26000年が経っていたのかと思うと寂しくなるが、私のやることなど決まっている。


「ただ回復するだけ、癒すだけだ…」


村を後にしたアンユは、丘で朝日を眺めながら呟く…

今日も苦しむ魂のする方向へ歩むのであった。


「そういえば、このお駄賃どうしようかな…?この身体に食事や睡眠は、必要ないみたいだし貧しい方を見つけたら分け与えよう。」


そう考えながら歩いていると頭に何かが当たる…


「ぎゃっ!」


と声が聞こえた。もちろん私は、無傷で痛みもない。その声の主は、倒れていた。意識がない…魔力もない…重傷だ。

アンユは、慌てて回復魔法を放つ。すると悲鳴と同時に起き上がった。

女の子?いや、何で空から落ちてきたの…っと色々考えていると、その女の子は、土下座をしていた。


「すみませんでした!つい、ドラゴンから逃げようと慌てて飛行魔法を全力で使ってしまい…このような結果に」


おお…ルデンの人間魚雷と同じか、私がいなかったら死んでいた。いや、綺麗に散ってた。


「人間魚雷は、危ないから今度から気をつけてね」


そう言うと女の子は、目を大きく開いて驚いた。


「それ…お母さんにもよく言われてた。伝統芸でありウィザード最強の魔法とも聞いた。」

ん?伝統芸?ウィザード最強の魔法?ちょっとよく解らないな~!?心当たりは、凄いあるんだけど…


「お姉さん、どこで知ったの?人間魚雷って、どうしたら上手く使えるの?教えて教えて!」


女の子の熱い眼差しに複雑な気持ちとなる。何故なら、ルデンの飛行魔法を全速力で使用させ魔力を切らして飛んでいくさまを例えて名前を付けたのだから…



私が。


「人間魚雷じゃなく、普通に飛行魔法の練習をしようね…あはは…」


笑って、誤魔化す。というか伝統芸になるとは、どういうことだ。ルデンのやつあの後、どんな人生を送ったのだ…考えたら頭が痛くなってきた。


「ねぇねぇ、私の身体すっごく軽くなったけど、お姉さんがしてくれたの?私って空から落ちたんだよね?かすり傷一つもないよ~?」


さっきから質問ばかりだ。若いって良いな…


「回復魔法をしただけだよ、ほらあそこ見て」


女の子が倒れた地面に指差す。


「うわぁ…」


真っ赤である。


「でも、魔力も戻ってるし私って何日寝ていたの?」


魔力が戻ってる?もしかして私の魔法って魔力も補給できるの?邪神に転生したから魔法の形も変わってしまったのだろう…


「さっき落ちたばかりだよ、そういえば君の名前は?お姉さんの名前は、アンユ」


「すっごーい!アンユお姉ちゃん回復の天才だね!私の名前はね、ルベラだよ♪アンユお姉ちゃん冒険者さん?」


冒険者か、転生したからプレートも何もない…


「お姉さんね、転生してきたの。転生する前は、冒険者だったわ…」


子供にこんなこと話しても理解しないだろう…だが、それでいい。

それくらいが今は、都合がいい。


「そっかー、助けてくれたお礼がしたいから町まで来てほしいな!」


そう言うとルベラは、アンユの手を掴み案内する。

見覚えのある町が見えてきた。

私が冒険者となり皆と出会った場所に…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ