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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
復之章
27/112

小鬼は突然やってくる

静かな森


「そんなに嫌なら別にいいが…」


あれから俺は結局、生け贄の女と会話することはなかった。異世界で初めて買い物したものだ大切にしなければ…

スキンシップは大事だがガツガツし過ぎたのかもしれない。今の俺は魔王なのだ。手綱を引っ張って連れるのはよくない。というわけで抱えて運ぶことにした。

背中と膝の裏を腕で抱えるお姫様抱っことやらだ。

女の表情は今にも死にそうな顔だった。何か勘違いされたのかもしれないが触れないでおく。

俺は街を後にした。そして途中、洞窟のようなものを発見した。帰る場所が判らないので、ここで野宿だ。

洞窟内で女を降ろす。するとブルブル震えながら女が


「ここが…私の…」


ダメだ…また何か勘違いされている。


―――――――――――――――――――――――――――


まだ外は明るい、何時くらいになるんだろうか?高校の友達は太陽の角度で当てていた。俺には出来ない…

魔王がこんなところにいていいのか?そして誰も来ないのだから不思議でしかない。せめて勇者くらい出てもいいような…それか新米冒険者みたいな雑魚でもいいから誰か来て欲しい。相変わらず生け贄の女は無言で俺も無言のまま洞窟に座っている。誰が見ても変だ。俺もそう思う。

ぐぅ~

腹の音が鳴る。俺じゃなく女からだ。食事の時間でもあるな…何時なのか知らないけど何か食べ物を探そう。俺の…

女を置いて洞窟を出る。


「何か食べてくる…」


そう言い残して去った。


洞窟を抜けた先に広がる湖に浸かる。そして静止…

剣を構えて獲物を狙う。食べれるのだろうか…?そもそも食事って必要なのだろうか…?試すしかない!食べれなかったら、もしくは必要なかったら生け贄に捧げよう。

キラキラと光ながら優雅に舞う小さな生き物に意識を集中する。妖精だと思う。

(的が小さく狙いが定まるか…)

不安しかないが剣を投げてみる。


サクッ…


ヒットした。異世界で初めての食事だ。あまり期待しないが噛ってみる…


ペッ…!


吐き捨てた。




――――――――――――――――――――――



洞窟に戻ってきた。だが、そこに生け贄の女がいない…


「逃げられてしまったか…せっかくの食料が無駄だったな…」


と思っていた。

よく見ると首輪が引きちぎられた後がある。人間がこんなことできるはずがない…

誰かに襲われた可能性が高い。まあ生け贄だし仕方ないか…


俺は、手にした妖精を握り潰した。


「だが俺が買ったのだ。許せん…」


五感に意識を集中する。何か臭う…獣?何か聞こえる…男?

複数に聞こえた男の声は「グヘヘ…!」と人じゃないことが判った。ヨダレを垂らす音…何かを打ち付けるような音…だが変だ?女の声が聞こえない…

声のする方向へ走る。死んでいるかもしれないが俺の所有物を持ち去ったのだ…死んでもらう。

結構、近くに別の洞窟があった。音がここから聞こえる。

何かを打ち付けるような音が段々速くなり止まる。それが繰り返されているようだ。そして見えた…

そこには…


「はぁ…はぁ…」


生け贄の女に緑色の肌をした人型の何かが群がっていた。

そして驚いたのは女が嫌がっていないと言うこと、抵抗どころが自ら動いてもいた。


「ぐきゃっ…!?」


見覚えがある。ゴブリンだ。俺は一匹仕留めてみた。脳天に直撃である。そして引き抜く…


ブシャァアアアアア…


ゴブリンの体液が噴水のように吹き出る。




腹が立った。


「おい、お前…」


結局コイツは…


「どうして…」


どうして…


「俺とお話しするよりゴブリンの母体になるほうが良いと言うのかっ!?生け贄のくせに度胸だけあるな…活きが良いと聞いたが中々だな!そんなに嫌なのか!?死ぬ覚悟は出来ているんだろうな…」


ゴブリンが数匹、俺の足にナイフを刺す。

つもりだったのだろう…刺さるはずがない。


「いっ嫌…来ないで!悪魔!」


慣れることなど必要なかった。こんなのさっさと消えてしまえばいい…それとも人間の肉は魔王が食べると美味しいのか?大人しくしていればいいものを余計な台詞を…

俺の前に母体を守ろうとゴブリンが突撃してくる。様々な薬品を塗った矢を放ったりナイフで突進したりとシンプルな戦法を全て受け止めて何も痛みも痒みも感じられない。魔王がゴブリンと戦うのだ…力の差など誰もが理解できるはずだ。だがゴブリンは理解しない…子孫を残すことに必死だ。無慈悲に捻り潰してやった。一匹ずつ確実に首を掴み、一度上に振った反発で重力と俺の体重を合わせて地面に潰してぐるっと首を捻る。


バキッ…!と首の骨をへし折る音と血飛沫


洞窟が血祭りになる。全てのゴブリンを仕留めた後に女の前に立つ…


「あぁ……くぅ…………」


怖くて何も声が出そうにない様子だった。白から黄色に変わった水溜まりが物語っている。


「うぅっ!」


首を掴む、ベトベトしているのが不快だったが耐える。


「どの世界でも同じだと言うのか…哀れだ人間…どこまでも堕ちていくのだな人間…呆れてしまう」


剣を胸に突きつける。





だが…止めた。


「冷静に考えてみれば出会ったばかりなのだ…一度嫌われてしまうと中々、難しいのが女だったな…大切な所有物を壊してしまうところだった。嫌われるのに慣れていたつもりだったが俺も未熟だな…」


掴んでいた首も離す。パシャ…と水溜まりに落ちて倒れた。

自分の手に付いた液体を洞窟の壁に擦りつける。


「さて、そんな姿だと不快だ。近くで湖を見つけたのだ。そこに投げるとしよう…」

「あぁ……ス…素敵…」


生け贄の女から妙な言葉が聞こえたが無視した。

俺は湖まで女を抱えて放り投げた。

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