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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
復之章
26/112

できませんでした

俺は、待ち続けた。のだが…

来ない…。

何故だ?

いったい俺をいつまで待たせるつもりだ!

やはり自分から動かなければ始まらないのか…


「ドアがあるな…木材で作られている。窓は、ないから外がどうなっているのか確認できないな…。いや、待てよ!」


明らかな盲点にやっと気づいた。俺は魔王だった。

そんなやつの拘束がない上に一匹は仕留めてミンチと化した。そんなところに誰が入るのだろうか…


「盲点だった。やっぱ俺は、こっちでもコミュニケーション下手のようだ。たとえ戦いであっても…」


仕方ない、そんな気持ちでドアを開けようと手を伸ばすが一つ思いつく。


「そうだ…懐かしいゲームにあったな…もしかしたらRPGじゃなくアクションで考えた方が楽かもしれないな。せーの…」


合図する必要ないかな?そう考えながら軽くドアを蹴る。


ガンッ!


ドアの枠組みごと綺麗に前へ飛んでいき回転する。

扉の向こう側は、街だった。今いる部屋との反対側に建物が見えドアが衝突し砕けた。


「軽く蹴って正解だった…」


周囲に誰もいない、本当に女一人だったのか?

まだ警戒されて隠れているのか?


「まだって何だ…いや、違う。そんな場合じゃなかった」


自問自答を繰り返す。前世の癖が残っている。

こんな状況なのに少し笑ってしまった。


「誰もいないのか…魔王の身体だから何か察知とかできないのかな?馴染めていない可能性もある。というか俺は魔王が何なのか知らないし知る必要もない」


僅かの期待が俺の身体を止めてくれた。

数時間ほど、待ち続けた。何かが来てくれるのを待ち続けた。だが、何もこないし何も起きなかった。


「周囲の建物を探索しよう。同じ部屋に戻っても、あの女の身体には飽きた。」


女と言うより肉の塊になってるが、何をしてたかなんて言うまでもない。正直に言うと暇潰しだ。


反対側に行くことにした。ドアが衝突したから一番に目が行ったから、それだけの理由で…

意味を無理やり表現したらの話でもある。


一応、三回ノックする。そして一応、待ってみる。


「………………。」


何も起きなかった。知ってた。


「失礼します…」


もちろん蹴った。最初からそのつもりだったが礼儀だと思った。そんなことは、どうでもいい…情報収集だ。


変わった内装だ。ほとんど石材で作られていた。そして紫色に黒い模様の入った石だ。あ、そういえば魔界かもしれないから変わってるのが普通なのか…

沢山のガラスケースが並んでいた。その中身は、人の形をしていた。たぶん人間の標本だろう。

様々な部位や一人まるごと展示しているものと…


「ごく普通の人間…俺の知ってる人間と一緒かな?」


見た目こそ同じだが能力が異なるかもしれない。だって魔王とかいるじゃん…

俺だけど…


「随分と悪趣味なやつがいるんだな…」


机の上にメモ用紙のようなものがあることに気づいた。

よく見れば本棚も沢山並んでる。暇だったら読もう。

他に暇潰しがなければ…

本は、あんまり読まないタイプだ。漫画も興味ない。アニメもあんまり…というかテレビつけないんだ。こっちの世界じゃ、あるのか知らないけど。たぶんない…

メモ用紙を調べる。もちろん読めなかった…


「暗号にしか見えない…」


魔王の身体なら何か勝手に読めちゃう!みたいな機能なかった。少し残念…


カツン…カツン…


その音で階段があることに気づいた。ヒールの足音のような気がした。そういえば二階建てでした。

赤いヒール、黒いガーターベルト、白衣、緑色の髪、黄色の瞳…


「また女か…」

「なんや魔王様か…今日は、どうしたん?」

「警戒しないのか?」

「ん?いつもの生け贄なら奥やで…」


会話にならなかった。どうやら気づいてないし魔王は常連だったようだ。しかも生け贄って…


「すまない、不可抗力でドアを…」

「それドアやないよ?」

「え?ドアじゃない?え?」


あ、なんか蹴った感触がグニュ…って鈍かった気がする。なんだ残像だったか、ドアじゃないなら壁だったか…

材料なんて気にしません。気にしたら負けです。


「それより活きの良い生け贄、今いるけど?」

「そうだな…見ていこう」


どうせ行くとこ決めてないので…


「むぐぅううううう…うぅん!ぐふっぐふっ!」


荒い息をしながら拘束された何とも言えない姿をした女がいた。


「また女か…」

「ん?男よりも女が使い道が多くて便利言うたのアンタやで」

「そ、そうか…」


学生時代の記憶が浮かび上がった。異性に対する考えや感じ方が歪んでいる。母子家庭で尚更だった。


「買っていくかい?魔力供給してくれるんならタダやで」

「…………」


ため息しか出てこない。早く…早く皆のところに帰りたい。働きたい。なんでこんなどうでもいいことしてるの…


「一応、聞いておくが…」

「なんや?」

「これは普通の人間か?」

「当たり前やろ…」


どうでもよくて悩んだ結果、買うことにした。

支払いは、魔力で!

供給方法が分からなかったが、女が俺の手を触れただけで済んだ。

実に楽でした。とても助かった。


「じゃあ、ほい…」


手綱を渡された。もちろん生け贄の首輪に繋がっている。

そして手慣れた手つきで口にハマっていた何か表現しずらい物や手錠や足枷を外す。これじゃまるで奴隷だ。


流されるかのように外に出ていた。生け贄の女を手綱で引っ張りながら…

しかし抵抗を見せないあたり調教済みのようだ。


「まいど~」


これから何をするかなんて決まっている。女に慣れる練習をするんだ。そのために買った。今のところ誰とも上手く会話ができていないのだ。生け贄なら話を聞いてくれそうだ。その…さっきの店主らしき女とだと質問の度に胸が苦しい。


「さて…」

「ひっ…!」


一息つこうとして何か嫌な反応された。あ、そういえば魔王だったな…生け贄には辛いだろうが俺のためだ。

せっかく買ったのだ。逃げないように手綱は掴んだまま外だが座る。直後、生け贄は涙を流しながら


「お願いします。命だけは…何でもしますから…命だけは…命だけは…」


魔王に命乞いか…無理だと分かっていても最後が近づくと出てしまうのだろう。だが…


グギィ…!

そんな音だった。

手綱を引っ張り近くまで生け贄を寄せる。


「うぐぅっ!がはっ…うぇっほ…げほっ…」


生け贄の肩に手を起き、なるべく笑顔で口を開く



「話をしよう…」

「ひっ…!」


やっぱり嫌な反応をされた。

仕方ない部分が大きいけど…



―――――――――――――――――――――――



夜中に嵐が襲う。


「荒波に飲まれなきゃいいけどねぇ…どうだろうねぇ…」

「飲まれたら…泳ぐ…」


波に流され、始めにいた島から遠くなっていく。

横転することはなかったが、落雷が直撃した。

船は簡単に砕けてしまい暗い海へと落とされる。


「あちゃーダメだったみたいだねぇ~」

「そう…だね…」


ザバァーン…

水の衝撃による痛みは特にない


浸水したが暗くて見えない。何かが足を絡み動けない。


「見えない…だけど…感じる…」


全てが認識の範囲内であり創造した範囲内だった。手に取るように解る。


「あなたは…違う…知ってるから…」


スライムの足に絡みついていたのは、魚人の長い舌だった。


「でも舌が長い…それは…知らない…」


スケルトンの時と同じ邪神の加護を受けし者だった。


「どうして…離してくれないの…?」

「……………」


魚人は無言だ。教えるつもりはないらしい。

背後に巨大な影が見えるのに気がついた。

槍が見える。とても大きい、そして槍の先端にスケルトンが刺さっていることに気づいた。


「殺した…?」

「…………」


無言で次はお前の番だと言わんばかりに大きな槍がスライムに向けられる。

そしてスライムの身体を刺さったスケルトンごと貫く。

血液が海水を染めながら吹き出る。刺さった槍を伝って電流が襲う。スケルトンとスライムの身体がビクビクと揺れる。

足を抑えられながら槍を引き抜かれる。

血がドバドバと海を染める。

二人の肉体は、ゆっくりと沈んでいった…



………………。


………す………。


微かに何かが聞こえた



…こ……ぉ…


すぅ……………。



ぐったりとしていたはずのスライムの瞳が見開く


その声は珍しくハッキリと感情を剥き出しにしていた。


「殺す!」


水を蹴ったスライムが一瞬にして相手の腹部に拳を入れていた。そして…


「燃えろ…」


海の中にも関わらずに魚人の肉体が焼き払われた。

スライムが大きな影に向けて指を指す。


「アンタは違う…消えろ…」


明確な殺意であった。

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