魔王も一緒に転生!?
「起きろ… 起きろ…女」
声が聞こえる。心に直接…
「起きろ… 女!」
その声の主は怒っているようだ。
「起きろ!」
そうか、私は目を閉じているんだ。ゆっくり目を開く。
「誰…だ…誰もいないのに」
周囲を見渡しても、見えるのは、豊かな自然だけだった。
「我は、貴様の中にいる。もう一つの魂だ…」
「!?」
何を言っているんだ。私は確か魔王に殺られて…それで…
「貴様は転生したのだ。私も貴様と同じく転生することで、この世界に新な生命を…受肉を果たした。」
ふむふむ…何処かで聞いたことのある言葉だな…なんだっけ?思い出せ! いや…ここは聞いたほうが早いな。
「転生って何ですか?」
心の声が聞こえていたら口に出す必要もない。だが聞こえていなかったら、また怒られそうだ。心に直接罵声を浴びると普段以上に恐怖を感じる。うん…頼むから喋らないでほしいな。あ…聞こえてない?聞こえてないよね?
「聞こえているぞ…」
うぅううう…!うぅうううう…ファッ!?((((;゜Д゜)))
「あわわわわわわわ…すみませんでした!」
「先ほどの質問の答えなのだが…」
あ…質問の答え~あぁ…転生について質問したんだった。
「貴様が私をどう思うか勝手だ。貴様の声が聞こえるように私の声も貴様は聞こえるのだからな…」
なるほど…私は今、この声の主にドン引きされている。
「転生…この場合は、正確に言うと異世界転生になるな。別の世界に新な生物として生まれ変わるのだ。その多くは記憶を失うが…稀に記憶どころか力さえも引き継ぐ者までいる」
なるほど… で、私は何者なのか?魂が二つもあるなんて、普通に転生したわけじゃなさそうだけど。
「ちなみに我と貴様、そうだな…私達と言っておこう。私達は、神になっている。喜べ…」
神?神とは支配者だ。その支配が何かで、神の呼ばれかたが決まる。つまり私達?は、何か支配して異世界に生まれたのか…しかし何を支配したんだ?
「ほう…気になるか?ハッハッハッ!教えてやるよ!それは、邪悪な力… 私達は邪神に転生したのだ!災いの神である。これほど素晴らしいものは他にない!」
うわー、なんか嬉しそう…
今度はアンユがドン引きしていた。あぁ~あれだ。この声の主は、前世で悪いことしてたんだきっと。
「アナタの名前は何かしら?」
「我の名か?その前に貴様からだ」
名乗ってほしいなら、まず自分からというやつか…
「私はアンユです。プリーストをしていたわ。」
そう言うと、何だが笑い声が聞こえる…
「フフフ…すまんな、予想通りの役職だったから…」
予想通りか…なんかナメられてる感じがして嫌だな。
「これでも一流の冒険者だったけどね。」
よほど自信があるのだろう…コイツ、しかし身体の主導権は、私にある。
「では…我の前世を教えてやる!魔王だ!名をラマンと言う…」
「ふーん…」
それっぽい態度だし、邪神で喜ぶし、予想通りだった。
いや…待てよ?まさか…
「フフフ…気づいたか?」
その反応やっぱり…!
「あの時の魔王か…!?」
コイツ、私を殺した魔王か!?
屈辱だが主導権は私にあるのだ。落ち着け…
「アナタも転生したってことは、マテラ達は…」
勝ったのだ。それだけで満足だ。
「貴様の光により、かなりの弱体化を受けたからな」
しかし、まさかこんな形で転生するなんて…
「それも過去の話だ。貴様は大人しく身体の主導権を我に譲れ!邪神の力など、元プリーストの貴様には、使いこなせない。」
やはり、私の承諾が無ければ主導権の交代は不可能みたいだ。だが、魔王に身体を譲るような冒険者がいるだろうか?答えはNOだ。
「誰がアナタなんかに…!邪神になったから、今度こそ世界の支配をするつもりでしょう?プリーストだった私が許すとでも?」
そんなこと勢いで言ったが実際不安しかないのだ。それは魔王も同じだろう…異世界転生をしたのだから、何が起こるか判らない。まだ自分の力量も計れない。プレートを渡される前の冒険者と同じ気持ちだった。
素朴な疑問だった。何故、邪神に転生したと魔王は判ったのか?
「今がダメでも、貴様の心が弱くなれば主導権など奪える…我は、ただ待つだけだ。邪神になるとは、どういうことなのか!フフフッ…苦しむこととなるだろうなぁ?」
そうなるかもしれない…
だからと言って魔王の行動を黙って見るのは、プリーストには、凄く辛い…
そして、魔王の声は聞こえなくなった。邪神であること。異世界転生したこと。そして魔王だったことを教えてくれたが、たぶん他にも知っていることがあるはずだ。教えないということは、知らない恐怖を私に与えることで主導権を狙っているのだろう…負けるわけには、いかない!
たとえ邪神になっても、私が出来ることは、たった一つだ…
(回復するしかない)
アンユは歩く…この異世界でも目的は変わらない。ただ、苦しむ人を癒すだけだ。そう決意したアンユだった。
苦しむ人々の声が聞こえる…悲しみの声が聞こえる…
これも邪神のスキルだろうか。声のする方向へ…
「そういえば回復魔法って使えるのかな?」
気になっていた、魔王の言葉に…
転生する者には、能力も引き継ぐ者だっている。
邪神の力は、使いこなせないとも言った。
アンユは、手のひらを天に向けて光を呼び出す。
「なんだ…使えるじゃん。魔王の自信と転生を把握した理由が何となく判った。魂が同じ邪神の肉体に入っているけど、引き継ぐ能力は、それぞれ別に持つのかも…」
でも、逆に都合が良いとも言える。使える…回復魔法!
邪神の力を使いこなせないと言っていたが、先ほどの光を見た限り、プリーストの時より強力だった。つまり使えないのは、邪神の能力である。力そのものを私は、光に変換することが出来る!
アンユは、笑顔で走る。彼女にとっての回復することは、好きを超えて依存とも言えるほどだからだ。
ここに回復依存の邪神が降臨した。
名は邪神アンユ
邪神にして光を操ることが可能。
それと同時に降臨した邪神。
名を邪神ラマン
闇を操る力と邪神の力を自在に操る
らしい…
邪神アンユの回復冒険が始まった。




