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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
神之章
109/112

相対的想起

 漂う腐敗臭を次第に感じなくなる。慣れてきたのであろう。進んだ先に一本の大きな橋、橋の先は屋敷か何かだろうか……


「よお、今度は痺れるテイストだな……ここで現れるということは、つまり」

「【収集した瓶があるだろ? 改造してやりましょうかい旦那】」

「ほお……なるほどね」


ペストマスクと黒いコートを着た女性らしき神がそこにいる。先程の戦闘で謎の液体の入っていた瓶を渡せば強化、と言わずに改造と言っていた。


「一か八かのような強化システム、運命操作は有効か? あ、従来のスキル解放もお願いしたいがな……出ると思わないけど」

「【構わないさ、好きにするがいい……テラシーポ効果をご存知かね? こうやってヒルにね……ふふ、吸わせるんだよ。悪い血を】」

「あぁ、ペストマスクのヤブ医者やりたいってことか」

「【僕の悪い血……ふふふ、俺の邪悪な血……くっくっくっ…………我が血液を受け入れるかい? 選ばれし者よ】」

「ロールプレイングやんねぇの知ってるだろうが……」

「【偽りの真意、相対的想起、正当化の神よ……祝福あれ】」


ゼノムの所持していた瓶の全てが割れる。ペストマスクの女性の左手から黒い液体が何もない真下へと注がれていた。割れた瓶の中身と浸透しながらゼノムの足先に伸びてくるのが分かる。まるで触手が獲物を逃がさないように、誰かの願いのように、全ての呪いのようにゼノムに襲い掛かる。血管にエネルギーの源である糖が一瞬で全身を巡り思考を加速、もはや暴走。イメージの具現化、信じる力、魔法、魔術、異才、天才、天災、全ての【力】に【有】に……


「はっ……!?」

「【気分はどうだろうか……俺も結局、影絵の幻だが、いや私は……僕は】」

「少なくとも本体じゃないことくらい死神ちゃんとの接触で確信してるさ、それは真実へと導く信じる力、全てを狂わす【有】そのものだ」

「【外って広いのかい? 私は行けるのかな~】」

「そりゃ無理だ」


超越した高速の蹴りが空気を押し、圧力を加え、鋭い刃となり女の首を跳ねる。司令塔を失った肉体は体液を晒しながら、傍観者の見ている中で黒い絵具に染まる。ゼノムの脳が震える、溢れる快感、あるべき全て、その快感が強欲を悪化。いや、進化とした。


「ふぅ……量産ね、異界で見慣れたわ流石に」


進むべき座標とされる一本の橋、ここを進めと内部が叫ぶ、吠える、飢える。そこに求める癒しがあるとゼノムの全てが解を導き臨戦に備える。背から掲げる身長より大きな剣、そのまま黒色の溜まりに撃ち込む。

大剣も飢えているのが伝わる。血に飢えているが癒しを求める亡者の如く、貪るのだ。剣が女を貪るのだ。ゼノムの脳内イメージが完璧なものへと修復される。だが、それは異様だ。修復と呼んでいいものか……


「ククラの……いやルシュフェルも? これは……」


吹き出る【有】と貯蔵量がそれを逃がさんと制御している。限界を越えている。ゼノムは理解していた。【邪神】の特性が終わりのない呪いで偽りの感情を吹き出る状態にしてしまった。脳裏に揃うのは愛する者達、それが点と点で繋がる。


「おでましか……」


進路を阻む六翼の天使、そしてペストマスクが顔を覆う。誰なのか視覚じゃ不明、だがゼノムは直ぐに察する。


「すまない……私としたことが!」

「本体は……」


ゼノムに襲い掛かるルシュフェルがそこに立っていた。静かにルシュフェルの攻撃を平手打ちで消し去りながら、ゆっくりとゼノムは歩いていた。


「ククラなら……」

「辛うじて精神はリンクしたが……他がダメだ危ない!」

「オークゥなら……」


手に持つ剣が主人に被弾するであろう魔方陣を食い破る。


「ゼノム……なのか? どうなっている」

「でも、そんな嫁って……」

「言うな!!ゼノム!!」

「…………ッ!?」


上空からゼノムの右眼球をブチ抜いた龍が来ていたようだ。白く輝く半透明の龍の一撃をゼノムは防ぐことが出来なかった。


「いってぇな……だが目が覚めたぜ」

「我が名は悪龍アブソリュート。異界の者よ、立ち去れ……」

「嫁を洗脳されて立ち去るほど綺麗な心無くてな」

「この聖女は我が妃に迎える……消えろ」

「NTR? クソ野郎!!!ブッ殺す!!!」

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