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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
神之章
107/112

霧隠れの街

 邪神に出来損ないが食い付いてから一週間、栄養の供給が成されてる様は寄生虫のようだ。邪神の生き血を啜るだけの出来損ないに変化なんて起きない、それも反者アンチ反者アンチに反転されて反者アンチのまま叩かれないのに反者アンチを続ける救いようがない出来損ない。不必要の具現化、生きる意味も死ぬ意味も持たないが啜るだけ貪るだけ醜いだけ本能のみで構築されてしまった蛆虫だ。本能、つまり寝て喰って増えるだけ……


「アンユさんの身体にウジが湧いてる!」


衣類の内から無数に見える黒い蛆虫に気づいたシュアが慌てている。しかし邪神は、気にもしないで朝食のパンを食べていた。濃いソースとメンチカツがサンドされた油と塩分の多い朝食だ。袖の内からポロポロ落ちてくる蛆虫が異物混入のダストシュート。バンジージャンプの先は白い海、コンソメの効いた濃厚シチューと具沢山の熱々だ。うねうね見える黒い混入物達が邪神の持つスプーンに巻き込まれる。押し潰され、かき混ぜられ、その身は再び邪神の口内へ……


「おいおいおいおい」

「死んだわアイツ」


一緒に食事をしていた守護者の内、二名が邪神ダイエットに成功したようだ。食欲が失せてパンを掴んでいた手が止まる。邪神のかき混ぜるシチューの色が黒くなっているのが見える。きっと黒かった蛆虫の体液であろう、とっても真っ黒だ。きっと濃厚なウジの……


「【朝から何なのかしら、これが嫌々期? ドメスティックバイオレンスな育成も私嫌よ】」

「そうか、ただのバイオレンスなグロッキーだぞ」

「【はぁ……繁殖なんて勝手だけどさ、自殺願望を辞めてくれないかな? 英雄候補なのよ、紳士になるなら殺らないわ】」

「頭のおかしな狂信者になったんですね不知火君ったら~」


ゼノムは朝から異様な邪神と不知火……だった蛆虫野郎に釘付けとなる。勿論、ゼノムの食欲も底に墜落済みなので酷い有り様の邪神をネタにテンションを上げようとしている。

朝食を済ませた邪神は、何やら錬金術らしき魔法を使っていた。鳥の顔のような何処かで見たことのあるマスクだった。それを着用して更に光る手先に見えるのは、注射器だ。まるで路地裏に潜むヤブ医者、怪しいペストマスクと手袋に黒いコートとバッチリ不審者。そして邪神は街中に消えた。


 邪神が外出してから守護者からの報告。一定の区域が謎の霧に包まれ観測不可能になったらしい、守護者の力量と技術に抵抗があることから霧が普通じゃないことくらい察する。邪神がまた何か仕掛けたに違いない、というか身体中に湧いていた蛆虫にペストマスクと注射器のセットで邪神が何もしない方が変な話だ。



 現地に俺らは向かう、この世界を統べると同時に乱すのが俺だ。そこに謎の現象が発生したなら好奇心が勝るのが自然である。人間でなくなった今の俺に恐怖なんて無い、狂付きょうふならあるかもな……


「騎士にハマって早速これか~」

「何を笑っている。狂ったか? それとも」

「いや、何でもない行こうか」

「というか服どうした? ラフな普段着なのは知ってるが調査にそれは……」

「これが騎士道スタイルだろ」

「縛りプレイも大概にしろ」



 半裸の上半身に兜だけの防具に鍋の蓋と剣でゼノムは現地に来ていた。変態と分かりきっていたが流石にゼノムの意思表示が『遊び』なのだ皆、不安になる。同行する守護者はククラ、シュア、ルシュフェルの三人だ。と言うのも耐性とパーティーのバランスが一番整ってるという理由だけ、パーティー編成が初期とも言うべきか……異世界じゃゼノムの魂はククラに宿り三人編成、今じゃ元の肉体を埋葬から強引に戻し四人パーティーだ。彼の記した漆黒の魔法書の記載通りにシナリオが進んだだけだったりするのだが、記載してもいない思い描いてもいないイレギュラーなシナリオが霧の先に待ち受ける。


「バランスを整えたが無意味だったりするかもしれない、そういうことをするやつだ。油断するなよ」

「割りと真剣に言ってるけど説得力の欠片も無いの笑う」

「ジャージくらい着ようよゼル~」

「自宅待機でも良いか? オークゥと交代したい」

「おーっとダメだぜ、力と奪取の両立が代理できないぞ」

「なら全員で良くね? 挑戦者の処理とか後で良いだろ」

「その運営方針は崩したくないな、後ハードの売買とか製作とかをクレア一人じゃ可哀想だ」

「チョットナニイッテルノカワカラナイ」


ゼノム社長の意思は堅いようだ。きっと聖剣の方もさぞ硬いのだろう。四人は、霧に包まれた街の正門らしき道路を進んだ。周囲の住人の間では霧に触れた人々が行方不明になるという噂とマスコミ、液晶の看板に様々な考察が出ていた。共通することが行方不明というだけ、位置情報が狂い圏外となり機器は全て破損して消えるらしい……勿論、誰もそれを見たことがない。生配信で中継する者達が霧の調査に行くと、音声で確認された発言がそのような内容だった。静かに音声が薄れて全てが終わるようだ。ゼノム達の収集した事前の情報がそれくらい、後は自分で確かめるだけだ。なんせ犯人が邪神確定だからね!


「情報通り、持ってきた発信器が完全に逝ったな」

「おーい皆、何処に行った~」

「ウソ……何も聴こえないよ、何も察知できない」

「完全にはぐれたな、帰りたい」


進んだ四人は早速、あらゆる感性を遮断されて真っ直ぐ歩いていたはずなのに単独にされる。視界に映る霧のみが許された認識となった。歩を止める者、突き進む者、情報処理を続ける者、持ってきた飲料が微炭酸になっていて吠える者、それぞれの行動や心理など無意味なまま霧が晴れていく……


「うせやろ……飲めねぇよ、クソッ!振っても振っても炭酸抜けないやんけ!? どうなってやがる!魔法で……なん…だと…!? 使えない、魔法が使えない!」


周囲の状況確認、誰も居なくなり石造物ばかりが並ぶ知らない街に移動してしまっている窮地など眼中に無いゼノム。とにかく微炭酸が嫌らしい。半裸の上半身に兜だけの変態は、その場でボトルを振り続けていた。時間差で状況にビビったのが数十分も後なのがどれだけ炭酸嫌いかを伝えている。と言っても誰も居ないんだけどね!


「な、なんだ此処……クッ!まさか微炭酸にされるなんて!」


微炭酸の飲料は投げ捨てて薄暗い夜の街を探索することにしたのだった。霧に巻き込まれた人々だろうか? 無惨に刃物で殺されたであろう死体が散らばっていた。先に進んでいくと脂肪たっぷりな巨大な人型の豚が斧を振っているのが見えた。血飛沫と共に散る女性の首と司令塔を失い行動不能となった肉体が地面に落ちる。見た感じ野放しになった家畜であろう、その大きな身体と肉付きから察する食用の豚に違いない。この豚の主人は、きっと頭が良いのだろう。散歩でストレス解消、殺戮でストレス解消、そして美味しい肉を食べて脂肪たっぷりだ。首の無い女性の処理を見れば直ぐに理解できる。無益な殺生は好まないはずさ、全部美味しく頂いている。色んな意味で……


「あはは……これ初見殺しってやつだな、やっべぇマジだわ」

「ゴギュ……ゴギュ……ゴギュ……」


何故か思うように力を出せない、その理由をゼノムは勘だけで察する。何処かで手頃な狩り場を見つけるのが先であろうと結論付けて隠れながら他を当たる。


(皆、大丈夫だろうか? 従来の能力を完封されている状況、開拓するしかないのだけ分かるが)

「や、やめて……うわぁ!? あぁーっ!!」


背後に響く断末魔を無視していると助けを求める女がゼノムの腕を掴んでいた。女はパニックになっている、このまま叫ばれると豚にバレてしまう。たぶん斧で即死だろう……


「殺るしかないか……」

「ひゃっ!? ………………す……」


女の喉を剣で刺していた。死人に口無し、ただの人間など彼にとっては邪魔な存在、或いは材料であることが多い。女を黙らせてゼノムは先に進んだ。気づかれてしまったが女の死体を優先した豚がゼノムを追うことは無かった。豚の下半身に設置された首の無い死体が見えてゼノムはゾッとする。あれじゃ非常食みたいなものだ。きっと刺し殺した女の死体も同じ末路であろう……

無慈悲に定評のあるゼノムは殺戮に何とも思わない、周囲の死体もきっと豚の食料であろう。死体が見えなくなるまでゼノムは走り続けた。テリトリーと思われる区域を抜ける必要があるのだ。

後書き

ラマン:主人公が一番主人公してないって? でも物語の主人公はアンユです。異論は認める

ゼノム:異論は有るけど無いね

ククラ:お前がナンバーワンだ

ゼノム:コロンビア

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