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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
神之章
106/112

失敗作

夜明け前、邪神がドス黒い我が子を吐いた。その黒いだけの塊が次第に人らしき形状に変わっている。人と呼べるのか判断に困るほど酷い姿のままであるが、辛うじて人っぽい何かだ。

赤子を抱える聖母のように邪神は微笑み撫でている。邪神の手先が光を帯び十字架のネックレスが現れる。御守りのように首と思われる箇所に着けていた。


「【よく耐えましたね、皆の子供にふさわしい強く気高くそして醜い……】」

「こんなところにいたのか、今から始める感じなのか? そのゲテモノと……」


他に誰もいない会場に来ていた。力を付けた不知火でもあった死霊とこれから殺し合いを始めそうな場所だ。ゼノムの予想通りなのか赤子を対峙するように置いていた。


「【存分に食べていいのよ? それとも食べられたいのかしら? お母さんは何時までも待つわよ】」

「あんな出来損ないに出来るのかよ……」


動くはずもない、生まれたばかりの赤子が求める愛など与えられることもなく、何もできない不知火もまた待ち続けるだけでしかなかった。


「【さあ、おいで……殻を破ったのだから】」

「現在進行形ねぇ」


ゼノムは死神ちゃんが言っていた不知火の育成が現在進行形であることに疑問を感じる。邪神ちゃんの正体も判らないまま、不知火の経由も全て把握していない。


そして不知火は動いた。ヌルヌルとメキメキと形を変えながら首が伸びてきた。


「【もう少しで届きますよ、頑張れ!】」


ゼノムは、じっと見ていた。これから何が始まるのか、残虐に食い殺されるのか、邪神の育成が既に普通じゃないことぐらい見てきた。

結果は、邪神の胸部に赤子が食らい付いた。母乳を求める姿とは言えない豪快な食いっぷり、血肉を貪る獣にしか見えなかった。そんな頭部を抱きしめる邪神、たとえ邪神の授乳がこんな形だったとしても見過ごせないゼノムは、いや駆けつけた守護者が許さなかった。


「やはり何を考えてるのか理解できない……やるぞ!」

「あれ? 皆、来ていたか」


先陣にルシュフェルとオークゥ、他の守護者もゼノムの背を押し中央に向かう。


「よせ!」

「ぐっ……!? 吸われている」

「死の力か……」


ゼノムが叫ぶ頃には二人に実体の無い頭蓋骨のような怨霊が飛び交う。弾くはずが張り付き精力を吸われていた。守護者がアレに敵うはずが無かった。ここに集まったメンバー全員の力を糧に生み出されたのだ。それぞれの弱点を突いてくる為、無力化が不可能に近い。


「【おはよう、皆の子供だよ……とても強い】」

「そりゃ俺のエネルギーがほぼだしな」

「では早速、最強お父さんに処理を」

「ククラ? 何処へ行く!そうか、大丈夫だと言うのか」


ククラが戻ると他の守護者もそれぞれ目を合わせながらゼノムに託して去っていく……


「で、始末を任されたが……お前は、どうする? そのまま喰われておくのかな、まあどうでもいいが」

「【名前を決めて無かったね、何が良いかな~】」


ゼノムの接近に反応してか先ほどと同じ怨霊が飛び出してきた。触れれば吸われるていたがゼノムの場合、どうやら違ったようだ。弾こうと触れると簡単に消え去ったのだ。ゼノムは何もしていなかったが怨霊が消えた。不思議に思いながらも次々に迫る怨霊を容易く消し去る。


「なんともない……」

「【今、授乳中だから私の影響かも】」

「それのどこが授乳なんだろうなぁ」

「【血液で生成される母乳と代わりないから同じよ】」

「まあ、お前が幾ら喰われようと心配してないがな……それより処理をどうするべきか」

「【まだ赤子なのに……】」

「それに邪神を討つような可能性も感じられない、いや無いのか? お前に食らい付いた時点で詰んでいる。成長しても同じだろうよ」

「【本当にどうしようもない子なの、私に食べられたい変態さんなのよ】」

「食べられてるのお前だろ」

「【愛なんて与えるつもり無いわ】」

「よく分からない母性だな全く……いや、お前らしいけど」


その後、赤子の形状は何本も腕や脚の生えた化け物と成り果て邪神に張り付きながら終わらない苦しみを受け続けた。早く早くと死を願うほど邪神は冷たい目で何もしなくなった。

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