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回復依存の邪神様   作者: 災難な鳶
邪之章
101/112

黒と白

闇に包まれた空から雷鳴が大地の生命に威嚇を続ける。荒れた天気を越えた荒れた世界、滅びながらも大地は一点の光を軸に戻りつつある。その光は白の邪神。剣を掲げて輝いていた。

だが崩壊する大地は止まることなく、次第に闇に覆われては消失している。焦る邪神の前に男が一人、朦朧としながら近づいてきていた。


「【記憶の片隅に残る男がいるじゃないか】」


もはや聖女であった頃の記憶など今の邪神に残っているのは僅かな思い出のみだった。完全に一つとなってしまった彼女の心は存在しない。

ゆっくりと男は邪神に近づいてくる。邪神と言っても白ではない…


「やっと…果たせる…」

「【その空っぽになった人形がどうしたの?】」


黒の邪神に向かっていたのだ。

彼の中で何かをやり遂げる。それが何なのか白の邪神は知らない。世界の修復に忙しく、それどころじゃなかった。白の邪神など彼は気にしていない、目先の目標を目的を復讐を最優先している。


男は再起不能となっている黒の邪神の頬を震える手で抑えて顔を近づける。そして唇が触れる。


キスであった。

直後、男の身体は倒れて動かなくなった。

白の邪神が持つ剣が引き剥がされるように動き黒の邪神に飛んでいく。


「よくぞ、やり遂げた…そのまま眠るがいい勇者よ」

「【おやおや】」


黒の邪神が剣を掴んだ。その刀身は黒に染まっていき周囲の闇を吸収し始めた。


「ずっと待ち焦がれたぞラマンよ、我が名はパズーラ。まあ覚えてるかどうか知らんがな」


黒の邪神から初代魔王の名が出される。空っぽとなった邪神の肉体は完全にパズーラのものとなっていた。剣に全ての闇が吸収されて世界の崩壊が完全に止まった。

しばらくして白の邪神はパズーラを思い出す。


「【魔王…】」

「覚えていたようだなラマン。同じ魔王であったもの同士、そして今は邪神同士だ。たとえ生まれ変わっているとしても私は…私達は復讐する。ラマン、お前にだ…」


再生する世界の中心で対の邪神が睨み合う。かつての因縁が再び戦いの幕を上げた。


「たかが聖女の光ごときに力を奪われ殺られたそうじゃないか…そんな聖女と今や心も身体も一つとは醜い、何故お前のような異界の闇が光に拘った?」

「【私の心も身体も存在しない】」

「禁欲の先で何かを得たか…安心しなさい、お前は自分が捨てた闇によって葬られるのだ。そして新たな闇にしてやろう…どうだ?理想を叶えてやる」

「【無い物ねだりなんて人間の遊び心よ】」

「無いのではない捨てたのだ!お前は!」

「【いいえ無かったのよ】」


パズーラの怒りは剣に共鳴してラマン・アンユに強烈な斬擊を繰り出す。全ての闇を込めた怒りのパワー、スピード、それは時間の概念すらねじ曲げて確実に命中する。剣の触れた箇所が黒く染まっていた。白く輝くラマン・アンユの光を喰い尽くす最悪の闇であった。蝕む闇に抵抗するべく回復を施す。


「【少し油断したけど効かないわ、だって無いんだもの】」

「植え付けてみせるさ…」


再度、時間の概念が歪む。更に空間の概念も歪みパズーラの一撃が離れているが必中する。

今度は黒に染まることなくラマン・アンユは余裕を見せつけていた。

激怒するパズーラの猛攻は続く。だが全て無意味に終わった。確実に命中させて効いているが回復に集中し続ける無防備なラマン・アンユを仕留めるまでに至らない。


「【諦めたら?私を殺したいかもしれない、闇に染め上げたいのかもしれない、でも私という存在がここにない】」

「いるであろう!ここに!」

「【何もできないでしょ?私もよ、だって無いんだもの】」

「取り戻せ、己を…自分らしさを…支配者として君臨するんだ!ゼノムを討て!」

「【無いんだって…そんな…】」

「私達が負った傷さえ無いと言うか!!」


パズーラの怒りが次第に嘆きに変わりつつあった。ラマン・アンユは全てを否定し続ける。

そこに意識を取り戻したサキアが割って入っていた。


「もう止めよう…手遅れだったんだ…」

「サキア!?」

「私達は私達のできることを続けよう。この世界に創造者が必要だ…」


パズーラの持つ剣を片手で掴み止め、攻撃を止めさせた。その手に闇が染まっていく…


「何のために…ここまで……ここまでやった!多くの犠牲の上で行う復讐が……こんな終わり方だと!?」

「ラマンへの復讐とゼノム討伐は諦めるんだ…」

「【ん?どうしてゼノムを知ってるの?】」


交渉最中に疑問に思ったことを直ぐに口に出していた。ゼノムの情報を彼らが知ってる理由について


「ラマン…そしてゼノム…この二つのカードが揃うのだけは避けたかったが私達の計画全てをここで中止する以上、もう過ぎたことだ」

「【そう…】」

「それに~不正ぱなかったから」

「【例えば?】」

「私達の世界にレギュレーション違反はダメなんだよ、だからさ」

「ゼノムの魂が憑依しちゃった悪影響が出てるぞサキアよ…」


サキアの喋り方というか言葉の表現がゼノムに毒されていた。サキアが何を伝えようとしたのかラマン・アンユは雰囲気で察したのか何も言わずに立ち去る。


進むのは異界の門であった。


「じゃーなラマン、二度と来るなよ」

「【そうね、気が向いたらお邪魔するわ】」


この世界の創造者はラマン・アンユの闇が重なり生み出された黒の邪神に託された。名はパズーラ。魔界を統べ魔物を繁殖させた元魔王に世界の創造など容易かった。スライムに成り果てた元最高神を見つけてからは…


そんな話なんてラマン・アンユには関係無くなったのだが…

異界の門の先は、あの故郷とも言える場所である。


「【おかしな友達みーつけた】」


そんなことを呟きながら邪神は歩いた。

後書き

邪之章終わりとします

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