プリーストとしての人生
冒険者を夢みる銀髪の少女…
少女の名前はアンユ
アンユは回復魔法の勉強を毎日12時間以上していた。
この世界の回復魔法は、才能により得ることが多かった。属性は光である。
光を扱えない者は回復魔法を使えない。とされていた…
回復魔法を使えない闇の存在は、光を喰らうことで補っていた。
光はエネルギーを与える。闇はエネルギーを吸収する。
それらを魔法に変えることで、人類は、力と魔力を得ていった。
アンユには才能があった。光の魔法、特に回復魔法は村一番だと言われるほどのものだった。そんな才能あるアンユが勉強ばかりするのは、没頭していたからだ。回復魔法について調べたり特訓したりと魅了されていた。
それが彼女の生き甲斐である。
枯れた苗を元気にしたり、疲労した自分を回復してみたり、光を生み出して部屋を照らしたりと様々な使い方を見つけていく。見つけていくというのは、アンユこそ光の魔法を自在に操った最古の人間だからである。彼女に心の闇など一切、存在しないのだ。人は必ずと言っていいほど闇を隠し持っているがアンユのみ特別だと言える。その姿から村の人々は、彼女を女神と言っていたそうだ。もちろんアンユ自身は、家から出ることなど滅多になかった。1日のほとんどを勉強に使うため、両親が雇ったメイドが彼女の世話をしていた。家事をするのではなく、話し相手、コミュニケーション能力を身に付けておくために雇われたそうだ。外出する際は必ずメイドと同行していた。そうした生活を続けて成長したアンユだった。
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冒険者の集う国に成人したアンユは歩む。
夢だった冒険者になるために、冒険者の登録手続きが行われた。
回復魔法の才能から彼女の役職は、プリーストになった。この時代のプリーストは、不安定な者が多かったため頼りない役職でもあった。また宗教信者でもあるため決まり事に厳しい。無益な殺生はしないが有益であれば殺してもよいという神の慈悲と無慈悲の教えを守るからだ。だが、人間とは必ず闇を隠しもち自分の利益のために誤った教えをする者も中にはいたのだ。そんな中、アンユは特別であった。彼女が導く光の宗教が存在する。それはアース教だ。この世界の最高神の教えを元に光を操り全ての生命を歓喜の中の大歓喜へ導くものである。冒険者にはプレートが配られ冒険者のステータスを確認できる物だった。これにより王様はランクを一人ずつ付けていき緊急クエストを要請する。
「えぇっと…プリーストのアンユ様ですね、プレートがコチラになります。冒険者としての第一歩おめでとうございます!」
ランクは、ステータスに付いていきトータルランクを王様が最終的に定める。
E~Fランク:ルーキー
B~Dランク:中級
Aランク:上級
Sランク:英雄
このような最終的なランクと呼び名が変更される。ルーキーは基本才能が全くないものでない限りFランクにならない。Sランクの英雄になるには魔王討伐が必須となる。たとえ才能があっても最初はルーキーからのスタートになるためアンユもまたEランクのルーキーだった。
アンユは渡されたプレートを見て呟く。
「私のステータスってこうなっているのねぇ…比較対象がないからよくわからないかな~」
冒険者名:アンユ 役職:プリースト
体力:Fランク 魔力:Sランク
筋肉:Fランク 知識:Bランク
速度:Fランク 能力:Aランク
トータルランク:Eランク
「スキル」
薬草の知識Lv20 魔力強化Lv50
光魔法Lv72 聖なる加護Lv43
「他の冒険者を仲間にして回復サポートするくらいしか出来そうにないわね。仕方ないわ、だって回復魔法の勉強しかしてこなかったんだもん。」
と受付カウンター前で天井を見上げているアンユの前に一人の男が現れた。
「やあ!君が噂のプリーストだね?俺はアース=マテラだ。俺と仲間にならないか?ちょうど回復役職の人を探していたんだ!」
一人の男からのパーティーのお誘い、断る理由などなかった。回復しか出来ないのだから、戦闘は誰かに頼るしかない
「えぇ、喜んで!私も仲間を探していたの。私はアンユ よろしく」
これが勇者との出会いだった。彼が勇者であることを後から知った。そんなに驚くこともなかった。
アースとは、この国の通貨である。マテラは代々、勇者の家系であり英雄だった。
何故、彼がルーキーの私なんかを仲間に入れたかと言うと回復役職の冒険者は珍しいんだとか。それもプリーストとなれば皆が何としてもパーティーに加えたい役職なんだと彼は言う。
だが本来のプリーストは、回復魔法が不安定なために頼りないのが常識だった。アンユの回復魔法の才能は冒険者になる前から噂になっていたらしい。
何としてもパーティーに加えたいというのは、アンユだけが対象である。
回復役職自体は、とても珍しいのは事実である。
しかし…その多くは光の扱いが不安定で貧弱である。
「だって君は噂じゃ屋敷から全然出ないで勉強していたらしいじゃん」
その通りだった。私は1日のほとんどが勉強だった。今思えば恥ずかしい…
「普通は回復魔法って少し覚えたら、後は冒険しながら磨くものだよ」
それを私は外にほとんど出ないで磨く日々だった。そう話していると白い鎧の男と黒いローブの女が、こちらに来ていた。
「紹介するよ、俺の仲間だ。一人ずつ自己紹介を頼むよ。」
そう言われると白い鎧の男から口を開いた。
「俺の名はマキア。ナイトをやっている、トータルランクはAだ。よろしく頼む!」
ナイトか、確か守りに特化した役職だったかなぁ~光の魔法以外に知識がないなぁ私って…
隣にいる黒いローブの女も自己紹介する。
「私は、ウィザードのルデンと言います。えっと…トータルランクはBです。」
ウィザード…攻撃魔法に特化した役職よね。このまま私も自己紹介するべきよね?
「冒険者になったばかりのアンユです。プリーストになりました。」
そう言うと二人は私のプレートを見つめて驚いていた。
「俺のと比べても回復役職は、やっぱ違うな…」
マキアは自分のプレートを見せてくる。
冒険者名:マキア 役職ナイト
体力:Sランク 魔力:Eランク
筋肉:Sランク 知識:Dランク
速度:Cランク 能力:Aランク
トータルランク:Aランク
「スキル」
騎士の剣術Lv27 鉄壁の守りLv65
聖なる加護Lv10
比較するとマキアは凄い防御力で味方を守るナイトだと判った。
「いいえ、私なんか色々なステータスがFですし…」
アンユは回復しか本当にできないステータスでしかないのだ。
「貴重な回復に特化しているんですから!自信を持ってください!」
ネガティブになっているとルデンからフォローされる。ルデンも自分のプレートを出した。
冒険者名:ルデン 役職ウィザード
体力:Cランク 魔力:Aランク
筋肉:Eランク 知識:Aランク
速度:Bランク 能力:Bランク
トータルランク:Bランク
「スキル」
闇魔法Lv10 飛行魔法Lv2
黒魔術の契約Lv40 血の代償Lv32
やはり回復しか知識のない私には二人のスキルがよくわからない。
「魔力Sランクのプリーストとか凄すぎますよ!」
鼻息を荒くしてルデンはプレートを見つめている。
そろそろ返してほしいな…
そうして私の冒険が…いえ…
私達の冒険が始まった。
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あれから数年が経ち、私達は魔王討伐に向かった。
魔王の名はラマン
闇の化身にして全てを喰らう絶対的な悪
「人間ごときが我に挑むのか…面白い!まずは忌まわしきプリーストから葬ってやる。」
そう言って魔王は、物凄いオーラを放ちアンユに飛び掛かる。
あまりの速さに誰もアンユをかばうことが出来なかった。
魔王の手がアンユの首を掴む…
「ぐっ…!」
ひ弱なアンユの肉体は、簡単に崩れてしまう。
溢れる闇がアンユを襲う…負けじとアンユは光をぶつける!
「アンユッ!」
皆が叫ぶ、しかしアンユにその言葉が届くことはなかった…
視界は真っ暗に…アンユの意識は遠くへ飛んでいく。
魔王は、そのままアンユを投げ捨てる。
「チックショーッ!」
マテラの一撃が魔王の腕を斬り、ルデンの魔法がその腕を焼き払う…
「よ…よくも!何だこのプリーストは!」
アンユは命懸けの抵抗で魔王を確実に弱らせていた。
ジラジラとアンユの光がラマンの周囲で闇を打ち消す
三人の怒りは頂点に達していた。激昂をこれでもかと三人は、ラマンにぶつける。弱体化したラマンを倒すのに時間は掛からなかった。
そして三人は、魔王を見事討伐した。
しかし、アンユが息をすることは無かった…
その時、世界が蠢く




