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第二話

初めての巡回から帰って次の日、朝食を食べに食道に着くと昨日一緒に巡回した従士のブレイブ君達が5〜6人で挨拶しに来た。

「「チーッス! エリンさん! オハヨウゴザイアス!!」」

両膝を軽く曲げて両手を膝の上に乗せた独特の格好(そうすると自然と頭が下がる、あの出迎えスタイルだ)で迎えてくれる。

彼らは朝からテンションが高い。


しかし昨日の朝までは僕の事を半ば無視してた人たちが昨日の一件でこうも変わるとは...

尤も殆どの人たちはまだ昨日の一件を知らないか、知っていても静観を決め込んでいるようで、集まってきたブレイブ君達以外はいつも通りである。

「あ、お早うみんな。 僕は皆と同世代なんだからそんなに畏まらなくても...」

「いやいや、エリンさんはオレ等ン上司っすから...」

確かに騎士と同格の僕は直属では無いとはいえ彼らの上司に当たるが、同じ年か少し上のブレイブ君達にやり難さを感じないでもない。

それとも慣れていくのだろうか。


一通り朝食を食べ終わってブレイブ君達と話していたら騎士のサリファス君に声を掛けられた。

「やあ!エリン君。 大活躍だったんだって?」

サリファス君は僕と同じ15歳の騎士で、新進気鋭の呼び声も高くブレイブ君達同年代の従士にとっては出世頭というよりは憧れのスター的な人物だ。

そそくさとサリファス君の為に席を空けるブレイブ君達の行動にそれが滲み出ている。

一応同年代で同格の騎士と魔術師ということでタメ口で話してくれって言われてるけど、彼こそ 紅蓮 の誇るエリート騎士の一人ってことになるだろう。


「サリファス君。 活躍と言っても僕は後ろで魔術を使っただけで、実際に戦ったのはアルバートさん達やここにいるブレイブ君達だよ」

ちょっと謙遜してみるけど、内心は鼻高々だったのだが。

「でもアルバートさんには困ったよねーっ。 喧嘩はナシって事のハズだったんだけど」

え? 勝ったからいいのでは? 等と思っていると。

「いや、ホラさー。 紅蓮(ウチ) からすると倍の人数に勝った訳だから問題ないんだけど。 幻影(ナマクラ) の奴等から見ると半分の人数に伸されちゃったって事じゃない。 治まンないよねー。 ヤッパ」

いや、サリファス君。

そんな語尾にハートマークが付きそうな感じで言わなくても...


でも良く考えたらそうなんだよね。

さすがに同じ御領主様の騎士団同士だから命までは取ってないけど、いや、だからこそ半分の人数にコテンパンにされたグリーズさん達が黙っているハズがない。

今頃は魔術治癒で大半の人達は復活してるだろうし、本人たちを除けても 幻影 の騎士団としての体面を考えると...

「来るだろうね... 幻影(ナマクラ) 共が」

ハイ、サリファス君がすごく嬉しそうな顔で保障してくれました。


そんな保障イラナイヨ。




保障が有ろうと無かろうと来るものは来る。


実際、それから一時間後には 幻影 の騎士、それも昨日揉めた若手達じゃなくて30代の一線級の騎士が二人やって来た。

もし来たのが若手の騎士や従士達なら、何十人で来ようと間違いなく 紅蓮 の従士や比較的若手の騎士達から嘲笑や恫喝の声が聞こえてきたハズだが、さすがに貫禄が違うという事だろうか、微妙な沈黙の中 幻影 の騎士たちは 紅蓮 の騎士団長室へ消えていった。


尤も僕はその頃ブレイブ君達と(うまや)の方に行っていて馬のお自慢大会などをしていたのだが。

「見てくださいヨ! エリンさん! 西方で流行りの貴品種馬にカーレル工房の鞍でバリッとキメて!」

「っに言ってんだヨ! 俺のジレールちゃんなんか(ハミ)も鞍もロアック工房の最高級品ヨォ!」

「馬具じゃねぇーんだよ! 俺のラッセルは東の汗血馬の流れをくむ...」

皆、自分たちの馬に拘りがあり、馬の話になると時を忘れて話始める。

ちなみにカーレル工房やロアック工房はこの国の有名な馬具工房である。

ただ、話がヒートアップしてくると偶に喧嘩まで発展することがあるのは勘弁してほしい。


皆のこめかみに血管が浮き始めて、そろそろ血を見ないと治まらないかと思い始めたころ、アルバートさんとサリファス君がやって来た。


「おぅ!お前ら、昨日の件で 幻影(ナマクラ) 共がゴネて来やがったぜ。」

アルバートさんの一言で話題は一瞬にお馬自慢から 幻影(ナマクラ) との喧嘩の話に変わった。

尤も話のテンションは上がるばっかりだが。

「明日の朝双方から代表者を出して一騎討ち(タイマン)だ!」

皆のボルテージが最高に上がっていく。(反対に僕のボルテージは消滅寸前だ。 何で皆こんなに喧嘩好きなんだろう)

「まかせて下さいヨぉ! 俺が 幻影(ナマクラ) の奴等なんかギッタギタに...」ブレイブ君が一騎討ち(タイマン)に立候補するもアルバートさんから待ったがかかった。

「オメーは当事者だからダメだヨ! それに今回は騎士同士の一騎討ち(タイマン)だ!」

「え? それじゃアルバートさんが出るスかぁ?」

「タコぉ! 俺も当事者だろうがぁ!」


ブレイブ君とアルバートさんの掛け合いにサリファス君が割って入った。

「もう俺が出る事に決まってるんだ」


ゴメンねぇ。 って感じでブレイブ君達に誤りながら言うけど、実際に 紅蓮 の若手騎士の中では(もちろん従士も含めて)最強と言われるサリファス君が代表として出るなら誰も文句は言わないだろう。


どの騎士団も仲が悪いとはいえ「若いモンが跳ね返ってるだけ」と言うスタンスを崩さないから、各騎士団間のゴタゴタは必要以上に大きくならないでいる。

そう言った意味でも今回僕が関わった、つまりペーペーの騎士や従士だけでなく(実態は兎も角)虎の子的な立場の魔術師が関わったという事で、かなりギリギリのヤバい処まで来ていたらしい。

負けた 幻影 の方が 紅蓮 の巡回コースに陣を張ってた(つまり喧嘩()るき満々で待ち伏せていた)ということもあって直接的なお咎めはナシだが、一騎討ち(タイマン)の回避は事実上不可能。

こう言った事情なので、中堅以上の騎士が代表に出ることはお互いにあり得ない。

若手最速コースで騎士になったサリファス君以上の代表はちょっと見つからないだろう。


当事者である僕には無責任ぽいけど、後はサリファス君を応援するしかない。

サリファス君がんばれ!


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