30話
「君達には兄弟にはアルムヘイム大陸に行ってもらう事になった」
ダートと一緒に拠点内の食堂で飯食ってたらリーダーが俺ら二人を呼んでるって声が掛かったのでリーダーの部屋がある最上階まで登った。
はぁ、しんど。
俺らの拠点はなんでも数千年前に作られた遺跡を勝手に使ってるみたいで国には見つかっていない遺跡らしい。馬鹿でかくて深い絶壁の峡谷を魔法でくり抜いて作られてて谷の底から地上までにかなりの高さがあり、俺らがいた最下層の食堂からリーダーの部屋がある階層まで20階層あって階段で登るのがめちゃくちゃしんどい。
そんなに人数いる訳じゃない組織なのに各自好き勝手に部屋を使うもんだから誰か探す時は凄く大変で俺らにリーダーの呼び出しを伝えた奴もあっちこっち拠点内を探し回したのかうんざりしたような顔してたけど気持ちは良く分かる。
てか、俺ならめんどくさいから見つからなかったら早めに諦めて間違いなくサボるね。
しんどい階段を登りきりリーダーの部屋に入ったら更に面倒な事をリーダーに言われた。
は?大陸を渡る?絶対嫌だ。
面倒くさいことこの上ないじゃねーか。
「何故、アルムヘイム大陸へ俺とルークが行かなあかんのですか?」
ダートが俺の代弁者となり目の前の神経質っぽい顔したエルフ野郎、もとい我らがリーダーのバルダーノに質問した。
「君達二人が先日潜入したヤダオ教会について他の者に調べさせたのだがヤダオ教は中々にキナ臭い事をしているようだ。出来ればヤダオ教自体さっさと潰したいのだが君らも知っての通りここモクダス国より北の山を越えた所にあるイスルイラ皇国がヤダオ教の総本山だ。イスルイラ皇国と事を構えるにはかなりの戦力が必要となるから敵対するのはまずい。しかし放っておくわけにはいかないから君達に任せると言うわけだ」
...いやいやいや、全然分からん。
重要な部分が抜け落ちすぎてて、全然説明になってないじゃん。神経質な顔してんのに大雑把すぎるんだよ、このおっさん。
「あのー、リーダー?全然話分かんないんだけど?」「ん?そうか。まぁ、詳細は後で他の者に説明させるよ。ダートはどうだ?」
「ええ、詳細は後で聞きます。それよりシトリア峡谷都市はどうするんです?アルムヘイム大陸行くんなら結構な日数俺ら離れなあかんと思うのですが」
「シトリア峡谷都市には君達程ではないけど腕の立つ者を配置して、君達が戻ってくるまで君達の代わりに監視をお願いするよ。それに、多分君達は僕に命令されなくても行くよ。この件にラグの心臓が関わっている可能性がある」
ダートの全身から殺気が物凄い勢いで漏れるのは当然だし、俺も当然それを聞いて気持ちを抑えられるわけがなく怒りとか安い言葉で表せない血が沸騰するような、湧き上がる感情が凝縮されて鋭く尖るような、それらを引っくるめて心に秘めつつも、そっから漏れた激情が顔一杯に歪んだ笑顔を作らせた。
きたぞきたぞきたぞきたぞ!漸く手掛かりが!
「...そういう訳だから、行ってくれるね?」
俺らは頷いた。
隣の大陸へ行くにはまず拠点から南に進みシトリア峡谷都市を超えて西に進むと海に面した街にでる。そこから船で海を渡りアルムヘイム大陸のアズドーラって小さな国に辿り着くらしいが大体30日程の道のりとなるらしい。
旅の支度は入念にする必要があるけどいつにも増してダートは無口になり黙々と準備をしてた。
まぁ、それは俺も同じなんだけどね。
準備に1日掛けて馬に跨り拠点を後にした。
エルフ野郎もといリーダーから中途半端な話を聞いた後、リーダーがヤダオ教について調させた男に詳しい話を聞いた。
どうやらヤダオ教は何やら怪しげな法を完成させるためにアルムヘイム大陸から人間を買っているらしい。その使い道はよく分かってないようだがまあ、教会の地下で見た光景を考えればおおよそ人間の血肉を必要としていると予想が出来る。
俺とダートはその売買される人間の販売経路とそれらに関わる貴族らを調べるのが今度のお仕事を与えられたが、正直そんな事はどうでもいい。
どうでもいいんだよ。
俺もダートもあの日、心を憎悪に焼かれた。
焼かれ爛れた心の熱傷が痛んで治らねぇんだよ。
痛ぇんだよ。
痛くて痛くて苦しくて、俺達にこんな仕打ちをした奴を許せる訳がないんだよ。
甚振って、嬲って、責苛めてやる。
その為の手掛かりの可能性がある事が俺らにとって全てなんだよ。




