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誰が為の力?  作者: 渋谷 啓介
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26話

仄暗い森の中に佇む石造りの建物を私は同僚の騎士達と共に囲み剣を抜き号令を待つ。森は生い茂り重なる木々が天を覆い隠し昼間だというのに光は僅かにしか届かない。


「突入!」


号令と共に同僚の一人が放つ魔法の火の玉が砦の扉を突き破り燃える。燃えた扉からは驚いた顔をした汚い身なりの盗賊達がわらわらと出てきた。私と他の騎士達は出来てきた盗賊達を倒していく。最後の一人を倒したのち次々に騎士達は生き残った盗賊を探す為砦の中に入っていき私もそれに続こうと入り口に差し掛かった時に声がかかる。


「ライラ・ガーベルト!お前は一人、砦の外で見張りに立て!」

「しかし隊長!私も---」


反論しようとしたが無視され隊長は砦に入り他の騎士達も私を残し5人全員が砦の中に入っていった。


...またか。


砦の外で一人となった私は砦内から響く争いの音を聞きながらため息をつく。確かに見張りは大事な役目だが今回だけではない。危険な場に立いる事を許されずいつも遠ざけさせられる。理由もわかっている。私が騎士団の中で唯一の女である事もそうだが何より私に公爵家の血が流れているからだろう。


いくら私が一兵卒としての扱いをお願いしても隊長や団長ですら私に一歩引いた態度をとる。騎士になる者に血筋は関係無いとされているが騎士の殆どが貴族出身者であり、爵位の位置付けが非常に重要視される貴族として育ったわけだから仕方ないかもしれないが私にはそれが我慢出来ない。だから私は騎士としての働きを任される事を目指し日々訓練を欠かさず、研鑽を積み騎士団の中でも随分と腕が立つようになったと自負している。しかしそれでも私は変わらず公爵家なのだった。


本来であれば私は婚約する話が進んでいた。我が国アズドーラとバルリング王国との友好関係を深めるためにバルリング王国の貴族との婚約だった。その貴族の名を聞いて非常に驚いた。


ルディ・リースロット。


彼とはバルリング王国の王立学校へ留学した際に見知った男だった。容姿端麗にして文武両道、王立学校設立以来の天才と呼ばれ全てを完璧にこなす男。しかし気さくな性格で自分の才に驕る事なく他の生徒と接するため人望も厚かった。


そして何より彼は私を公爵家の娘としてではなく一人のライラ・ガーベルトという人間として接してくれた唯一の男だった。私達は直ぐに打ち解け友人となった。正直ルディとの婚約話が進む事は満更ではなかった。むしろ私はルディに惹かれていたのだと思う。


しかし、婚約は上手くいかず特に父は元々公爵家である私と伯爵家であるリースロット家では釣り合いが取れないとして反対していたのだが先にアズドーラとバルリング王国の間で他家同士の婚約が決まり父の反対もありルディとの婚約話はなくなった。

そしてリースロット家の取り潰しという事件が起こった。その事が原因なのか、いやただ父が私を溺愛しているだけだと思うが、父は私の婚約相手探しに酷く慎重になり未だに私の婚約相手は決まらない。


でも私はそれで良かったのだと思う。元々私は騎士を目指していたし騎士になった今も素晴らしい騎士になるため日々努力している最中であり今は結婚など考えられない。それに...ルディ以外との結婚は考えたくない。だがもうルディと会うことは叶わないだろう。それを知らされた時私は涙を必死に堪えルディの無実が晴れる事を神に祈ったが祈りは届く事なく、犯罪奴隷に落とされてしまった。


私はルディが、ルディ・リースロットという男が無実だと今でも信じている。それに私はあの男を理解している。もし万が一ルディ・リースロットが謀反に加担していたとしても、あの男が簡単に捕まるような計画を立てる訳がない。私の知るルディ・リースロットはそれほど優秀過ぎたのだ。




盗賊の砦に突入した騎士達の争う音が止みしばらく経ったが騎士達が中々砦から出てこない事に不審に思い入り口から砦の中を身を乗り出して様子をうかがったが砦の中からは人の気配が全く感じられない。


何だ?何が起こっているのだ?


私は少し迷ったがゆっくりと砦の中を進む。

進むに連れ盗賊らしき男達の血だらけの死体が狭い通路に横たわっており、死体に見慣れない私は緊張で喉を鳴らしつつも死体を跨ぎ砦の奥へ進む。奥へ行けば行くほど陽の光は届かないが代わりに灯具に置かれた蝋燭のか細い光が揺らめきながら辺りを照らしていた。奥には扉のついてない開口が見て取れその先が広くなっており部屋があるようでゆっくりと近づき部屋を覗くとそこには盗賊の死体と共に騎士達の横たわる姿があった。


「ひっ!」


私は短く悲鳴を上げ固まってしまったが腰が引けつつも恐る恐る騎士達の体に近づき生死を確認するが騎士5人は全て死体となっていた。


一体何が?


そこで隊長の姿がない事に気付きゆっくりと部屋を見渡すと姿がない代わりに床がめくり上がりその先の地下へ続く階段を見つけた。


どうするどうするどうする。


自分が動揺している事をはっきりと理解するがだからといって落ちつく事など出来ず不測の事態に緊張と恐ろしさで膝が小刻みに震える。


どうする?一旦街に戻り応援を呼ぶべきか?...いや、隊長の姿が確認出来ていない。もしかしたら隊長は敵に捕まり今、殺されようとしているかもしれない。騎士として行動しなければ。


剣を抜き構えながら震える体に力を込めて地下へと続く階段に足をかける。足音を立てないよう慎重に階段を降りて行くと行き着く先の左手に開口部があるのがわかりその先に人の気配と声が聞こえ、近づき気付かれないよう密かに顔だけを覗かせた。


そこは広めの部屋となっておりこちら側以外の壁三方には鉄格子がはめられた牢屋になっておりそこには何十人程かの影が見えた。そして部屋の中央には二人の姿があり、一人は男だろうかフードを深くかぶった者の姿が、もう一人は隊長が部屋の中央で向かい合い話をしていた。部屋の中を確認してすぐに覗かせた顔をゆっくりと引き、息を潜め高鳴る心臓の鼓動を聴きながら、様子を伺った。


「何てことをしてくれたんだよ隊長さん」

「仕方ないだろうが。そもそも上で死んでる馬鹿どもがここの近くで商隊襲って足がついたのが悪いのだろうが」

「そうだとしても皆殺しにしてどうするんだよ。今日にでも誘拐したこいつらを売るために海を渡らないと行けないのに。人手どうするんだよ?」

「人手はここに来る前に手配した。そいつらが到着し次第上の騎士達の死体を森に放り投げとけば大丈夫だ。俺はお前を見送った後、盗賊を討伐した後に魔物に襲われて俺だけ逃げのびたって報告する。まあ、高ランクの魔物が出たっていえば数日は稼げる。その間にお前の痕跡は消しておく」

「そうかよ。相変わらず頭の回るこって」

「ああ、それと、砦の入り口に騎士を一人見張りに立たせているのだが中々上玉の女だ。そいつも売るから金を弾めよ」

「はいはい、仰せのままに」


最近街や村などで行方不明者が出ていると聞いていたがまさか。しかもそれに隊長が関わっていた、のか?私は今聞いた話を理解したくなかった。

呆然とした後騎士の女を売るという言葉を思い出し焦って逃げようとしたが段差に躓きその弾みで大きな音を立ててしまった。


「誰だ!?」


どちらの男が言ったのかわからないぐらい混乱して焦り、とにかく逃げようと階段を駆け上がるが、上の部屋で死体に躓き転んでしまった。起き上がろうとしたが焦りもあり床に流れる血で足を滑らせ上手く立ち上がれず時間がかかり、立ち上がった時には目の前に隊長の姿があった。


「ライラ・ガーベルト。お前には見張りをしておくように命令した筈だが?」

「た、隊長!あなたは一体何をしているのですか!?」

「お前に伝える必要は無い...早かったな」


隊長は私から目線を外し私の後ろの方に声をかけた。


えっ?


急に後頭部に殴りつけられたような衝撃が走り、私の視界はゆっくりと暗くなっていった。





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