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誰が為の力?  作者: 渋谷 啓介
14/30

14話

辺境の街ビンドラはその辺境に似つかわしくない大きな街だ。バルリング王国の最も西にあるその街はもともと前王ユリウス・バルリングが大陸西に広がる広大な荒地の開拓拠点として建てられたのが始まりだった。


強い魔物が多く住む辺境を開拓する為、兵士だけではなく魔物を狩る事を主な生業とする冒険者が多く集められ、それに伴い新たな市場を求めた商人達も多く行き交い時間を掛け街は発展していった。


前王から現王へ変わったのをきっかけに荒地の開拓は頓挫する事となるが今でも腕に自信のある冒険者達は辺境の魔物を狩るためにビンドラへ赴きその腕を存分に振るい魔物の素材などを輸出する事が街の産業となり今だに発展を続けていた。




荒野の森を抜けてから10日程掛けて俺はビンドラにたどり着く。街は魔物からの侵入を防ぐ為か高く厚い壁に囲まれ入り口は北側と南側の二つしかなく街の入り口には兵士が数名立ち検問を行なっているようで、街に入ろうとする商人などが列をつくり、俺もその列に並んだ。


馬は街が遠くにその姿を確認できる距離辺りで放しそこから歩いて街に近づいた。

馬は貴重で高価だ。

放牧して育てる場所は魔物の少ない土地に限定され、万が一馬を狙った魔物が現れても退治できるよう常に兵や冒険者を雇う為かなり費用がかかり、自然と馬自体も高価になっていく為、馬を持てるものは貴族などに限られているため、今の俺が馬に乗り街に近づけば色々と目立ってしまう。

愛着が湧きつつあったがビンドラに長居するつもりはない為、目立つ事は極力避けたかった。


列に近づくと、先に列に並んでいた人達が俺を見て驚いたり、怪しむ視線を向けた。

一瞬俺の正体を勘繰られたのかと思ったが、そうではない事に直ぐに気付き俺は苦笑した。


ここにたどり着くまでの道中に小さな池を見つけ水を飲もうとして水面に近づき、驚いた。水面に映った俺の顔に昔の面影は無く、ガリガリに痩せ細り骨と皮だけの不気味な作りになっていてまるで死人のようだった。砦にいた時は気付かなかった自分の変わりように呆然とし、改めて荒野での日々の過酷さを、そして俺にその苦しみを与えた男への憎しみを確認する事となった。


俺の正体がバレる事はないだろうが、この顔の所為で悪目立ちする事までは考えに至らなかったな。それにしても痩せ細ったこの身体でブラックドッグを剣の一振りで両断出来た胆力には驚かされる。レベルを上げる事はそれ程重要だと言う事がよく分かる。

しかし女勇者が説いたとされるレベルの数値というのは未だによく分からない。

レベルの数値を知る事が出来れば今後更に強くなる為に色々と便利なんだがな。


列は進み検問をしている兵士の前に立つと兵士も俺の姿を見て驚いた様だ。

身分証の提示を求められたが、俺は冒険者でこの街に仕事を求めやって来たが途中に魔物に襲われ驚いた俺は身分証の入った荷物を全て置きっ放しにして逃げ惑い道を外れてしまったため遭難し飲まず食わずで何日も彷徨い何とか今日たどり着いた。金は懐に入れていたから失わずにすんだと説明した。


身分証の無いものは通行料を払う事になっているので騎士から奪った金貨を一枚兵士に渡すと見下した様な顔で笑い「情けない奴だ。ここではお前の様な奴は生きていけない」と馬鹿にした様に言葉をかけられつつも門を通るよう促された。


お前に俺の苦しみが耐えられるか?


苛つく気持ちを抑え愛想笑いを浮かべ嘲笑う兵士に一礼し街に入った。




門を抜けると目に飛び込んできたのは石作りの建物がかなりの距離まで立ち並ぶ光景と、街道に溢れかえる人々の活気あふれる情景だった。喧騒に満ち、華やかでもあった。そして街道の先、街の中央であろうその場所にも大きな壁があった。中央の壁の向こう側には領主の住む館や砦などがあるのだろう。


しかし今の俺には関係ない。

取り敢えず食糧と水の確保が優先だ。


近くを歩く人に道を尋ね、俺の顔を見て驚かれるも教えてくれた。行き交う人々はやはり冒険者の様な出で立ちの物が多いようだ。そして獣人の姿も見かける。人と見た目は殆ど一緒だが頭の上部に生える獣の耳と獣の尻尾を持ちそして何より人と比べると身体能力が高いのが特徴だ。


獣人という種の始まりは神々の好奇心による悪戯で生み出されたとされる。

数千年前に神々は自分の身体の一部を切り離し様々な動物達と同化させる事で獣人を作りその異形を見て楽しんだとされる。


天上へと神々が移り住み地上に姿を現さなくなった後、神の戯れで作られた玩具に過ぎないと人は獣人を蔑み、自分達は神の一部を身体に宿す神聖な種であると主張する獣人とで争いが起き永きに渡り争ったが1000年前に召喚された勇者によってその争いは治められそれ以降バルリング王国を始め殆どの国で人と獣人は共存するようになったそうだ。


獣人の多くはその身体能力を生かし冒険者として生きる者が多く冒険者が多く集うこの街において珍しい存在ではなかった。


市場についた俺は様々な食材を見て回ったがどの店も俺の知る相場よりも高いのは誤算だった。辺境の地のため輸送に費用が多くかかりその分、値が張るとのことだったが今年は特に食材が手に入りずらかった為らしい。

いくらか保存食を買うつもりだったが仕方なく塩のみを買う事にした。


狩をしながら旅をするしかないか。


次に大きめの背負い鞄を買い、それに詰めれるだけ水袋を買って市場を後にし道を尋ねながら冒険者ギルドへ向かった。


話には聞いていたが俺は冒険者ギルドに立ち入るのは初めてだった。

石造りの簡素な建物だったが他の建物よりはふた回り程大きく広い。中に入ると正面奥にカウンターがあり等間隔でギルドの職員らしき人達が座っており、左手には壁一面板張りとなっていて何か書かれた紙が無造作に貼られていた。右手はフロアの半分ほどを占める食堂のようで、沢山のイスやテーブルが置かれ疎らに人が座って食事をするもの、何人かで集まり真剣に話す者達など様々だった。


正面のカウンターに進み職員らしき女性の一人に話しかけ冒険者ギルドに加入したいとの旨を伝えた。


「それではお名前をお願いします」

「ルディ...いや、ディオスです」

「畏まりました」


名前を言い換えたが職員は特に気にする様子はなかった。偽名での登録が多いのだろう。


提示された手数料を払い説明を受ける。

要約すると受けたい内容の仕事が書かれた紙を掲示板から剥がしカウンターで受注する。ただし、受注する仕事は難易度によりランク分けされ制限されるという事だ。


ランクは難易度の高いものかA.B.C.D.E.F.Gという順で記号で分けられており、冒険者にも同じ様にランク付けがされ自分の付けられたランク以上の仕事は受けられない。


ランクは仕事の達成数で上げる事が出来るそうだがこのランクを表す記号も女勇者が定め広めた物らしい。節々に女勇者がこの国に与えた影響力を感じる。


「ですが、このランクの記号も今後変更されるかもしれません」

「それはどうしてですか?」

「王都で勇者様が召喚されたのはご存知ですよね?」


俺はぐっと拳を握りつつも話を聞く。


「勇者様はこの国の制度や仕組みに対して色々と助言されているそうです。貨幣についても分かりにくいのでyenという記号で統一するべきだとか。ランクも元々勇者様が定めた物ですので変更される可能性はあるかと。既に勇者様が治めるノワールゲイボルク領ではどちらも試験的に実行されているとか」

「ノワー.....領?」

「ええ、勇者様が新しく命名された旧リースロット領です」


怒りに震え、感情を吐き出しそうになったが必死に抑えた。話を終えたギルド職員は席を立ち後ろの扉の先へ姿を消し、暫くすると戻ってきて手の平ほどの銀色の薄い金属の板を差し出した。Gランクの冒険者証だ。その後もいくつか職員から説明があったが怒りを抑えるのに必死で殆ど説明が耳に入ってこなかった。








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