6話 初エンカウント
森の中でも全速力で走っていたら道からそれたようで迷子になった。森が深くて戻ろうにも後ろがわからない。
ま、いっか いざとなれば飛んで道探せばいいし。
それにしてもなんか体がピリピリする。あの崩れた街にいた時よりもピリピリして、空気に触れているところがちょっと痛い。
うーん、呼吸が必要な種族じゃなくて助かった。肺が痛くなったら探検どころじゃないもんなー
…………時々呼吸必要ないのを忘れて、前世からのクセ?で息をしてしまって悶えたりもした。さすがに昨日突然「クレイ」の身体になってすぐ慣れるってのもありえないか。
ついでにこの時吐血?をしたけど出てきたのは灰色の液体だった。
さすが設定謎種族なだけある
てかこの空気毒なん?
「毒じゃなかったらなんなのさ」
そっかーこの身に影響はないのん?
「痛いだけ……それよりさ、もういい加減戻ろうよ」
「気づけば心を読まれていたことに今更驚いているワタクシ……念話?」
「そんなとこ。森の奥に行くほど危険らしいからそろそろ進むのをやめて欲しいんだけど……そもそもなんか目的があって来た訳でもないのに」
「いや目的ならある……というか今思いついた このピリピリをどうにかする」
「えぇぇ、なんで明らかにヤバいほうに突き進むのかな」
「だってこのまま森で暮らしてみたいもーん、やっぱ憧れるし
こんなピリピリしてちゃあやりづらいじゃない」
「はぁ、一応言っとくけど……警告はしたからね」
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ズズン……ズズン
「ググァァ……」
重く響く足音に怪物の鳴き声
(レイさんごめんなさい私がアホでした)
(言わんこっちゃない)
さらに森の奥へ進み、体がピリピリするのがさらに鬱陶しくなったころ明らかな『モンスター』に出くわした。
でかいニワトリを凶暴にしたような体に、ツノこそ生えていないけど厳つい竜のような蛇の尾 頭のとさかは王冠のように立派で美しさすらある。
トリ足蛇尾でわー似てるー じゃなくてコレってコカトリスでは?しかもヤバいやつ
そんでもってコカトリスは私を探して警戒中
時折蛇の口から紫の霧がでていて見るからに毒々しい
ついでにいえばその度にピリピリが酷くなるので元凶はコイツらしい
誰か助けてーヘルプミーヘルプー
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「キングコカトリス」
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君は呼んでないぞヘルプ機能
さぁてどうやって逃げようか
(いっそ食われちゃえば?馬鹿は死なないと治らないってよく言うし少しは賢くなれるんじゃない?)
(死んじゃうじゃん)
(死なないでしょ)
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設定⑤
個体でも気体でも液体でもある、つまり明確な実態はないので一応物理ダメージは効かない
ついで生きていないから死ぬということも無い
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(そうだったけど怖いもんは怖いし……そっと逃げる)
コカトリスが向こうをむいた隙に元来たところへ歩き出す
「ケエ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!!!」
3歩もいかないうちに見つかった。
なんでぇとチラと振り返るとあちらさんの尾の蛇と目が合った
なるほどピット器官というやつですねはい
ダチョウ足で全速力で駆けるも、コカトリスは木をなぎ倒しながら迫ってくる。こちらは木を避けながら走っているので少々不利。
距離がどんどん狭まっていく
「ヒィィイイィ だぶっ?!」
コカトリスに蹴り飛ばされゴロゴロと転がる
もちろんダメージは無い
しかしこの体になってまだ2日目、精神的ショックは大きい
「ぐっ、がっ やば…」
「何してんの!?早く起き上がって」
からだのうごかしかたがわからない
「もういいっ!」
レイが体を乗っ取って動いてくれたが間に合わない
コカトリスの大きな鉤爪で押さえつけられてしまった
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い食われるっ誰かっ
「落ち着けって! クソっ」
私がパニックを起こしているせいでレイを邪魔してしまい液状化して逃げることも出来ない
コカトリスが私をついばむ
ダメージはない
痛みもない
でも
コカトリスがくわえたソレをみて
心が 軋んだ 気がした
「クロウ……」
「わたしのうで」
そう呟いたのが誰だったのか私には分からなかった
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気がつくと私は倒れて動かないコカトリスの横に座り込んでいた
「ん?起きた?マスター……」
「…………」
コカトリスは口を異様に開けて死んでいた
必死に息をしようとしているかのように
私は……私は五体満足でここにいる
食われたはずの腕も何事もなかったかのようにちゃんとある………………?
「グルルゥ?」
件のキメラの姿になっているらしい…………弱るとこの姿になるのも設定通りか……
ヒトガタに戻れない
「そりゃあんだけ暴走したら疲れもするよ」
「ルゥ?(暴走?)」
「そう、大暴れさ。覚えてない?……みたいだね」
「グゥ(どうして暴走なんか?)」
「ほら、あいつは………………クロウは昔色々あったから」
「(クロウ?)」
「クロウの人格はマスターメインで統合されたとはいえ、影響はあったみたいだね?」
「(ねぇ、レイ)」
「なにかな?」
「(この『クレイ』ってどのくらい細く再現されているの?)」
「再現……か…………コレはあんま言うつもりは無かったけど、ま、かまわないさ」
「(レイ?)」
「あぁ、僕達はね別に再現されてつくられたモノじゃない。
マスターと同じコピー、 ベースになった奴がいる」
「……」
「話は変わるけど、お話を創るって行為が何を指すか知ってる?
そのお話のセカイと繋がりを創り出すのと同義なのさ
少なくとも僕らのいたセカイではそう。」
「(それって私が作ったと思っていた話は全部元あったセカイをなぞっていただけのものなの?)」
「うーん、そこが複雑なトコなんだけど、そういう訳では無い……と思う
セカイは描き出されて初めて認識されるんだ。それまでに存在しなかったかどうかはわからない……というかその概念すらない?から
結局新しいセカイを創り出しているのと変わらないのかもしれない」
「悲しい話にしたら恨む?」
「話の続きをかく度に、内容を練る度に、そのセカイは豊かになっていくんだ。厚みが出るとも言うかな?マスターは僕らをお話の一歩外に書いていただろ?おかげでそれが解るんだ。
登場人物が恨むとすれば……そうだねお話が消えてしまうこと、セカイが止まってしまうこと。
話を作るのを完全にやめてしまうと流れがそこで止まるだろ?僕らみたいな設定の存在にはキツいんだよね。セカイが止まっているのが認識できてしまうから。皆、同じ日を繰り返しだす。昨日と同じ事をしているのに誰もそれに気付かない。気が狂ったりしたヤツも、全てを諦めて生きたヤツもいたなァ ハハッまあいいや
だからさ くれぐれも……くれぐれも話を途中でほったりしないでくれよ?創造主
ま、今の君に言っても仕方がない………………効果はあったみたいだけど」
「?」
「あぁ、コッチの話 少なくとも今の君を恨んじゃいないさ
さて、ちょっとは落ち着いた?」
「(うん…………ありがと)」
今ならヒトガタに戻れるかな
うぬぬ
……戻れたけど食われた右腕がモヤっぽくなってる。かろうじて形をとっている所もドロドロで地面に灰色がぽたぽた垂れている
「ど、どうしよう」
「あー、それかしばらくしたら治ると思うけど今は諦めな。食われたショックで正しい形を思い出せないんだろ。」
「そっか……」
片腕が無いと不便だしバランスもとれないのでヒトガタになるのはやめとこう。
辺りはコカトリスがのたうちまわりでもしたのか周囲の木はなくなりちょっとした広場になっている。それにしては倒れた木が見当たらないけど。
さて、今度こそ本当にどうしよう。
持ってたものはどっかいっちゃったしコカトリスは放ったらかしだし、
んーとりあえずランタン、ランタンがないと落ち着かない。
念じれば戻ってくるんだっけな、うー戻ってこーい戻ってこーい
ゴスッ
「キャウン?!(いったーい)」
なんで頭に降ってくんの?!こういうのって手元に現れたりするもんじゃないの……。
うぅ、おかえりランタン やっぱランタン抱えると落ち着く。
ナタやら本はいったいどこに消えたのやら
「あー……マスター…………コカトリスを解体したら出てくると思うよ……」
「(え゛)」
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設定⑥
ランタンの火は(クレイにとって)熱くない
普段はぬくいくらい
吸収したエネルギーによって変わるがクレイにとって心地いいものには変わりない
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調子良く小説書いてると時々キャラが勝手に動き出すことない?
…………怖かった