落胆
私は今生垣と会っていた。
一人暮らしをしている自分の部屋に呼び込んで、彼女の試したいことを見させてもらっているところだった。
彼女は私達が初めてであった時のキメラを持ち込んでいた。
持ち込んだ荷物やキメラを部屋の中央で広げ、プレゼントしたインターフェースを取り付けているところだった。
作業中、普段彼女とは会話をしない。
少なくともキメラをいじっている時には邪魔をしては悪いと話しかけるのを自重している。
できる限り邪魔をしないように気をつけながら、彼女の手際を見守っているのだ。
彼女は嬉しそうだった。
いつも見ていてそう思うのだが、キメラをいじっている時彼女は他のことが全く目に入らない。
出会ったときに声をかけるまで私に気づかなかったのもそのためだろう。
それぐらい彼女にとってはこの行為が楽しいものなのだろう、いつも誰かに見つからないか注意を払いながらやっていた私とは対象的に。
「やった!動いた!!」
そんなことを考えているうちにどうやら彼女は作業を終わらしていたらしい。
試したいこととやらを終わらせたらしいキメラはさほど何かが変わっているようには見えなかった。
しいて言うならプレゼントしたインターフェースが腕と羽に連結されているぐらいだろう。
見た目から何が今までのものと違うのか理解することはできなかったため彼女に問いかけることにした。
「何か進歩はありましたか?」
彼女は嬉しそうに答えてくる。
「翼がさ、前までは肩甲骨に骨を固定して連動させることで動いてたんだけどね、今度は鳥類みたいに腕を動かす信号を受け取って動かせるようになったんだよ。」
そう言って彼女はキメラの羽が動いているさまを私に見せてきた。
だが、それは私を落胆させた。
以前のものと大して変わっていなかったからだ。
そもそもこのキメラは翼を生やしているが翼を使うことはできなかった。
キメラのガタイに対して翼が小さすぎるとかそういう以前の問題だった。
翼を自由に動かすことすらできなかったのだ。
前足を前方でクロスさせたり大きく広げたりとそこまで大きな動作を起こして翼がほんの僅かな角度傾くというものだった。
これでは翼があっても意味がない。
翼とは飛んでこそ意味があるものだから。
そして今回のキメラだ。
彼女は、機構が変わって動かし方が変わったと歓喜をあげていたが、結局前足をバタつかせなければ羽を動かすことができないということは変わっていなかった。
キメラは四足動物のため前足を鳥類の翼ほどすばやく動かすこともできない。
鳥類がなぜ飛べるのかというと異常に発達した胸筋によって羽を素早く羽ばたかせることによって飛ぶことができるのだが、このキメラにはそれは難しいだろう。
それだけでなく、今にして思えばこのキメラはまともに歩くことすらできない。
出会ったときのキメラも今まで作ってきたキメラもそうであったが、かろうじて立ち上がるのがやっとで、そのほとんどは立ち上がるのも困難なものばかりであった、
その事実に気づかされた私は少女に対しての熱が引いていくのを感じた。
もう、彼女のために生活を切り詰めるなんてことはしなくなるだろう。
それを少女に気づかれたような気はしたが気のせいではなかったろう。