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橋の下の少女  作者: Mch.9
12/15

脱獄

 生垣たちが立ち去ってから半日と4時間ほど、私は脱走を決行することにした。

情報はほとんど手に入れることはできなかったがこのままここにいてはまずいことも重々理解してしまっている。

彼女は異常だ。

常人の感覚を全くと言っていいほど持ち合わせていない。

嫌われたくない?

嫌なことをしないでほしい?

なら嫌われるようなことをするなという話だ。

嫌われるようなことという段階はゆうに超えているが。


 この時間に脱走を決意したのは理由がある。

日常の通勤を含めた勤務時間を10時間、睡眠時間を7時間、勤務前の準備を2時間、勤務後のリラックス時間を3時間と仮定して彼女の行動を考えてみる。

彼女が私のところへ来たのはおそらく勤務後の3時間のうちだろう。

そこからの睡眠時間、準備時間に勤務時間2時間、おそらく移動完了までの時間を考えた16時間が最も安全な時間と考えたからだ。

仮に勤務前に来ていたのだとしても2時間と10時間と3時間との合計の15時間に寝静まってから1時間であろう16時間後は、他の時間帯よりはいくらか安全だろう。


 牢から抜け出そうと錠の前に近づく。

私の体には安全ピンが取り付けられている。

生垣の拷問によってつけられた名札付きの安全ピンだ。

簡素な作りの鍵穴を安全ピンで開ける動画を見たことがある。

それをまねて牢獄から抜け出そうと画策していたのだが。

これを使って鍵開けを試みる。

 

 体に取り付けられた安全ピンを引き抜く。

引き抜いた瞬間に痛みとともに血が滴る。

だが痛みにかまけている余裕はない。

血の着いた安全ピンに力を加えL字型に変形させる。

右手を鉄格子の外側に回し鍵穴にピンを差し込む。

そしてピンを壊さないようにゆっくり安全ピンを時計回りに回す。

鍵の開く金属音が聞こえる。

どうやら鍵明けは成功したらしい。

牢の扉を押し開いて外へ出る。

残るはこの建物から逃げ出すだけだ。

 

 巨大な充電器のような装置に繋げられたキメラたちを警戒しながら部屋の外への扉へ近づく。

もしこのキメラたちが動き出したら私はおそらくまた捕まってしまうだろう。

彼らが動き出した際の対策は全くなかった。

かと言って尻込みしていたらタイムリミットが来てしまいお終いである。

彼らが動かない幸運を祈って行動に移すのが最善だろう。

 

 幸か不幸か彼らに動き出す素振りは無かった。

彼らは動くこともできないような失敗作だったのだろうか。

なら彼らに繋がれた電極のような機械は何なのだろうか。

様相から見ると充電しているように思われる。

充電しているということは動かそうと思えば動かせるということだろうか。

大本の電気を抜いていたほうが後々役に立つのだろうか。

抜いた瞬間動き出したりしないのだろうか。

疑問ばかりが浮かんでくる。

 

 だが立ち止まって考え込む時間はない。

1分1秒でも遅れればそれだけ見つかるリスクが高まるのだから。

とりあえず機械のプラグを抜いておくことにした。

もし抜いて動き出すような機械的な行動ができるなら脱獄した私を捕らえることだってできたはずだから。


―――

 

 一通り作業を終えた私は外へ出る扉に手を掛ける。

もしこの扉を開けた先に生垣たちがいたら。

そんな疑惑に取り憑かれてしまったのかドアノブを持つ手が震える。

深呼吸をする。

脱出すると決意した覚悟を入れ直すために。

力強い右手でドアノブを握り直す。

そして重々しい現状を変えようとするがためにこの扉を開け放った。

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