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窓際の天才軍師 ~左遷先で楽しようとしたら救国の英雄に祭り上げられました~  作者: 風来山
第三章「王都の決戦」

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75.反乱収束

 指導者のラスタンが死んだことにより、王都の反乱はようやく収束した。

 反乱軍を退けて事態を収拾したハルトたちの元に、老王ラウールが自身を守る側近たちを引き連れてやってくる。


「お父様!」

「ルクレティア、よくぞ助けに来てくれた。そして、軍師ハルトよ……」


 ラウール王がハルトたちにそう言いかけた時、そこに第二王子オズワールがやってきた。


「父上! この男は人質に取られている私に対して死んでもいいと言い放って、武器を向けたのですぞ! 即刻、不敬罪で捕らえてください!」


 そのあまりの言いように、ラウール王は怒りのあまりブルブルと杖を持つ手を震わせた。


「この馬鹿息子が!」

「ち、父上!?」


 怒られたオズワールは、なぜ自分が叱られたのかと事態が飲み込めずにビックリしている。

 ラウール王は、手を広げて叱咤する。


「オズワール! この王都の惨状を見よ。全てはお前が信じるべき忠臣を信じず、信ずるべきでない佞臣のみを重用した結果ではないか! 捕らえられるのはお前の方だ。ひったてい!」


 国王に付き従う兵士たちによって、オズワールはすぐに取り押さえられる。


「ち、父上、何をされるか。やめろ、私は王太子なのだぞ!」

「オズワール、お前はこの内乱の責により廃嫡はいちゃくとする。もはや王族ではないのだから、軍師ハルトの行為も不敬罪には当たらぬ」


「そんな、父上! お慈悲を!」

「最後の慈悲だ、命までは取らぬ。オズワールには、遠島を申し付ける。さっさと牢獄に連れて行け!」


 オズワールは引っ立てられていく。

 不出来故に廃嫡された王太子の運命は悲惨である。


 そのために用意された小さな島に送られて、死ぬまで幽閉されることとなる。

 それを、さみしげに見送るとラウール王は言った。


「ルクレティア、そして軍師ハルトよ。余は、わが子可愛さに目が曇っておった。余の不明により、多大な迷惑をかけてしまったことを謝らせてほしい」

「いや、ラウール陛下。謝らないでください」


 ハルトとしては、別に謝ってほしいわけではないのだ。

 王様に頭を下げられても一銭にもならないということもあるが、それよりさっさとラウール王の権威でもってこの場を収めて欲しい。


 ラウール王に続いて、王を守って戦っていた古株の軍人や廷臣たちが続々とやってくる。

 それら国王派を率いてるキース参謀本部総長も、ハルトに声を掛ける。


「軍師ハルト、よくぞ救援に来てくれた」

「キース参謀総長閣下。こちらこそ、よくラウール陛下を守ってくださいました」


「我々国王派は、なすべきことをなしたまでだ。私達は所詮、ラスタンやワルカスなどに保守派や老害などと揶揄された古い人間だ。陛下より重職を任せられながら、あれら賊徒の反乱を抑えきれなかったのだから、無能のそしりは免れまい」

「ですが、閣下たちがラウール陛下を守ってくだされなければ国が滅びていたでしょう」


 老いたために一線から退いていたとはいえ、こうなればラウール王を中心として国を建て直すしかない。


「それはその通りだろう。だから民のため、陛下のために、できることをしたいと思ってここに集まっている。ハルトよ、どうか我々を導いてはくれぬか」

「導くですか?」


 軍人としても貴族としても、位が遥かに上の人たちにそう言われてハルトは困惑する。

 キース参謀総長は苦笑しながら言う。


「石頭の我らでは効果的な方策が思いつかぬのだ。だが、権限だけは大きな物を持っているのが我々だから、貴公のいいように使えと言っているのだよ。若い貴公にこうして頭を下げて頼むのは忸怩じくじたる思いもあるが、陛下がそうされたのに我々がこだわっている場合でもないだろう」

「なるほど、お偉方も覚悟を決められたということですか……わかりました。国を挙げて協力していただけるなら、荒れた民心を慰撫して国を建て直す方策はあります」


「やはり妙案があったか。さすがは、希代の天才軍師と呼ばれる英雄だな」

「あと、ぽっと出の私が言ったことにしては角が立ちますので、国王派のお偉方による改革ということにしておいてください」


 ハルトが自分の名前は出さないと聞いて、「軍師ハルトは、なんたる忠臣か!」とラウール王が涙ながらに感激しているが、ハルトは悪目立ちしたくないだけなのだ。

 改革の旗振り役など、みんなに恨まれるから御免こうむる。


 ラスタンの起こした内乱によって火の手は王都にまで達したが、一ついいことも有った。

 改革に反対する邪魔な門閥貴族どもが、王宮から全員逃げ去っていたことだ。


 王都に残っている高官は、みんな国王と運命を共にしようと私心を捨て覚悟を決めた忠臣ばかりだったので、今のうちにできるだけのことをしてしまうことにした。

 まず今年の王領の租税は、王の慈悲により免除と決められた。


 どうせ今年は税金を取ろうとしても、田畑が荒れ果てていてろくに取れないのだから民心を慰撫する宣伝に使ったほうが良い。

 すでにハルトの意を受けたプレシー宰相がノルト大要塞に溜め込まれた食料を続々と運び出して、各地の農民に施しを与えて生活が立つようにしてやっている。


 そうしてプレシー宰相が王都に戻ると、宰相の指示と国王の裁可により、王宮の資産が根こそぎにされる勢いで王国南部や西部の豪商や大貴族に売り払われた。

 内乱で荒れているのは王都を中心とする王国北方地域だけだから、物資や食料はそちらで確保すればいいというわけだ。


 こうして国難を打開する改革は足早に実行された。

 平民から有能な人材登用を促進して、王国軍や官僚機構において門閥貴族との格差を是正する。


 そして民衆の選挙により各地域で護民官が選ばれることも決まり、国政に民の意見が反映される工夫もされることとなった。

 こうしてハルトたちの手によって行われた改革の中には、ラスタンらがやろうとしていたこともあったのが皮肉といえば皮肉であったかもしれない。

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