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窓際の天才軍師 ~左遷先で楽しようとしたら救国の英雄に祭り上げられました~  作者: 風来山
第三章「王都の決戦」

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68.完全勝利

 ラファイエットたち改革派貴族の一団を十字砲火で一掃したハルト大隊二千人。

 戦の最後を見届けるため、丘から下りてきたハルトは冷徹に命じる。


「改革派貴族は、ここで根絶やしにします。一人も残さず撃ち倒してください」


 すでに騎士隊は全員が馬から撃ち落とされて倒れ伏しているが、ハルト大隊は最後の一人まで残さず虱潰しにして撃ち殺していく。


「やめろ! この卑怯者め!」


 折り重なって倒れる騎士たちの影から、金髪の髪の男がでてきた。

 ラファイエットの白いマントは、泥だらけになっている。


 ハルトの隣までやってきたクレイ准将が、「あれが、改革派貴族の首魁ラファイエットです」と教える。


「そうか、あれがですか。いかにもな男ですね」


 軍師ハルトを見つけて、ラファイエットは吠える。


「民衆の支持を得た我々こそが正義だ。それを、こんな卑劣な手で押し止めようなど女神ミリスが許すはずがない。軍師ハルト、貴様も騎士ならば尋常に一騎打ちしろ!」


 ハルトは深くため息をつく。

 そう言えば、名目上は自分も騎士爵を与えられていたなと思い出す。


「一騎打ちなど御免こうむります。それで満足なら、私のことは卑怯者とでも悪とでも、いくらでも罵りながらさっさと死んでください」


 そっけないハルトの言葉に、副官のエリーゼたちは頷くとライフル銃を掲げてラファイエットに向けて撃ちまくる。

 パラパラと乾いた銃声が響くが、それでもラファイエットは叫んだ。


「貴様のような卑怯者に、私は負けんぞ!」


 拾った盾を構えて、なおも旧式の手銃ハンドガンで撃ち返してくる。

 まだ死なないのかと、そのしぶとさにハルトは眉を顰める。


 いまだに自分を正義と信じるラファイエットの厚顔さに、苛立ちもあった。


「俺が卑怯者なら、お前たちは嘘つきの売国奴だラファイエット!」

「なんだと!」


「あらぬ話で農民を扇動して、内乱が起こって国力が低下すれば帝国の思う壺だ。お前の言う革命とやらが成功しても、この国は帝国に侵略されることがなんでわからないんだ」

「そんなわけがあるか、私達は民衆のために!」


「お前はそうかもしれないが、ラスタンが帝国と通じているのは確実だろう。あいつは、国を売り渡すぐらいのことは平気でやる男だ」

「そんな、私は……ぐっ」


 呆然となったラファイエットの胸を、エリーゼたちが放った銃弾が撃ち抜く。

 民衆のカリスマと呼ばれた男は、こうしてあっけなく死んだ。


 そのままハルト大隊は、じわりと包囲陣を狭めていき、改革派貴族は残らず撃ち殺される。


「ハルト様、改革派貴族の討伐完了しました」

「ご苦労様でした。これで、とりあえずこの戦は終わりでしょう」


 ハルトの策略どおりに農民反乱軍の扇動者たちを根こそぎ潰すことができた。

 まだこれから王都の救援が残っているが、これでステップを一つ前に進めることができる。


 倒れ伏した騎士たちをしばし眺めて、ハルトは顔を伏せる。

 長い戦闘だった、すでに日が暮れかかっている。


「ハルト様、少し冷えてきましたね」


 その背中に副官のエリーゼがそっと上着をかけた。

 ハルトも殺したくて殺しているわけではない。


 もしやろうと思えば、元の世界の英雄ハンニバルのように、遊軍となっている騎士隊二万を使って完全包囲で反乱軍を根こそぎ殲滅することもできた。

 しかし、そうして潰しあえばルティアーナ王国は兵力も国力も根こそぎ失うこととなり、帝国の侵略に為す術もなくなる。


 そのためにハルトが取ったのが、冬戦争でフィンランド軍が圧倒的なソ連軍を前にして使った、分断包囲戦術であった。

 火砲を持つ優位を使って、ハルトは敵の頭のみ引きつけて各個撃破することに成功したのだ。


「最小の犠牲で済ませられたとは思いたいですね……」

「ハルト様は最良の手を打たれたと思います」


 エリーゼは、ハルトの冷えた背中を温めるようにしばし抱きしめていた。

 ともかくこうして、プファルツも、ラファイエットも、反乱軍の指導層であった改革派貴族たちも全ていなくなった。


 あとに残された反乱軍は、ハルトの予想通り一瞬で戦意喪失した。


「ラファイエット様がやられちゃったぞ」

「ど、どうすんだ……」


 どうするもこうするもなかった。

 一人、また一人と、元農民の雑兵たちは手に持っていた手槍を捨てて逃げていく。


 もはや、革命の熱狂などどこへやら。

 敗北を悟った傭兵団の残党は、すでに後方へと走り去っている。


 残存兵力はまだ鎮圧軍よりも多数だったのだが、指揮者がいなくなった烏合の衆に数がいくらあっても意味がない。

 指導層である改革派貴族が全滅した段階で、反乱軍は終わってしまったのだ。

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