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窓際の天才軍師 ~左遷先で楽しようとしたら救国の英雄に祭り上げられました~  作者: 風来山
第二章「反逆者たち」

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55/108

55.まさかの敵

 突然に、味方であるはずの王国南方軍が来襲し、レギオンの街が陥落したことを聞いて、ルクレティアは慌てふためく。


「たた、大変じゃない! あっ、えっ、なんでそんなことになったのよ!」

「王国北方軍に反逆の疑いありとの因縁をつけてきたようです」


 クレイ准将は、平然と受け答えする。


「無茶苦茶な理由じゃない。それに、なんでそんなに平然としてるのよ。ハルトも、なんで驚かないの! そうだ、クレイは留守を預かってたんでしょう。なんでこんなところにいるのよ、防衛戦はどうなってるの!」


 あたふたし始めているルクレティアが暴れ出さないうちに、エリーゼが素早く説明する。


「姫様、落ち着いてください。この動きは、ハルト様が予測されてました」

「え、そうなの!」


「そのために主力を領地に残したのですよ」


 こちらに引き連れてきたのは、ハルト大隊五百、王国北方軍も騎士隊三百だけだ。


「そうだったのね。なんで人数が少ないのかなって思ってたけど、さすがハルトだわ」


 ルクレティアはうんうんと頷いて、納得している。

 なんで自分だけ、作戦を聞かされてなかったのかには全く気がついてないのでハルトたちはホッとしている。


 クレイ准将が報告を続ける。


「レギオンの街から一旦引いたのも手はず通りです。住民の避難は、抜かり無く完了しております」

「クレイ准将、おつかれさまです」


 ただ、王太子となったオズワールの後ろ盾になっている王国南方軍が動いたというのはハルトの予想外だった。

 いかにルクレティア姫様に反逆の汚名を着せようが、仮にも直系の王族である。


 ルクレティアを殺せば、反逆罪に問われかねない。

 地方反乱という形にしたダルトン代官軍のように、次もはぐれ者を利用して攻撃してくると思っていたのだが、正式な王国軍が動いたとなると、その責任者は下手すると処刑されかねない。


 それを覚悟で動いたとなると、オズワールの陣営に自らの犠牲もかえりみないよほどの忠臣がいたのか、それとももう一つ可能性があるとすれば……。


「それと、攻めてきた王国南方軍の指揮官なのですが」

「それを聞きたかったところです」


 クレイ准将は、言いづらそうに言葉を濁す。


「ハルト殿も、騎士エリーゼも、よく知っている御仁です」

「え……」


 確かにハルトたちは以前、南方のカノンの街にいたが、軍にそんな知り合いはいない。


「そうですか、いかにハルト殿でもそこまでは予想されておりませんでしたか。今回の敵の指揮官は、ミンチ伯爵です」

「ええ!」


 ハルトもエリーゼも、思わず声をあげてしまう。

 ミンチ伯爵は、カノンの街の領主であり、ハルトとエリーゼの元上司である。


 帝国のグレアム将軍の罠にハマって全軍を壊滅させるという大失態を演じて、ハルトが軍師として活躍するキッカケになった。

 いわば全ての元凶でもある。


 無能のくせに派手な戦闘をやりたがる、ルクレティアとは違うタイプのバカの極みみたいな人だが、有力な南方貴族であり南方軍主力を動かせるだけの権力はある。

 しかも、ハルトの策略のおかげで、カノンの街での敗戦は民を救うためという理由付けをされていたので評判に傷はついていない。


 天与の才能(タレント)、『権謀術数の主』を持つ軍師ラスタンが、利用して使い潰すにはこれ以上の適役はいないだろう。


「そうきたか、なるほどと言うしかないですね」


 ハルトの言葉に、エリーゼも頷いている。

 この愚か極まりない動きは、他の誰がやったと聞いても納得行かないところだが、あのミンチ伯爵ならわかる。


 全く興味がなかったので、ハルトたちはミンチ伯爵の消息を調べてすらいなかったのだが、どうやらちゃっかりと南方軍に復帰してオズワールの麾下に居たということなのだろう。


「さすがに相手の指揮官が元上司では、ハルト殿もやりづらいですか」


 そこも考えての人選なのかなあと、ハルトも考え込んでしまう。

 さて、どうすべきか。


「ある意味、ミンチ伯爵は性格が把握できててやりやすいんですけどね。どうせバカみたいなことをラスタンに吹き込まれて利用されてるだけでしょうから、できれば殺さないようにして捕まえてあげたい」


 無能貴族の極みのような人なのだが、三か月ハルトがサボっていても何も言わなかった理想の上司ではあった。

 殺さずに捕らえてやるくらいの恩はあるだろう。


 どうせラスタンもミンチ伯爵が勝つとはこれっぽっちも思っておらず、こちらの戦力が削れればそれでいいくらいの気持ちで差し向けてきたに違いない。

 勝とうが負けようがミンチ伯爵は切り捨てられることが決定してるわけで、敵ながら哀れだ。


「それで、敵の動きはどうなってますか?」

「ハルト殿の予想通り、レギオンを占領したあと、街の施設を接収しようとしているところです」


 ミンチ伯爵がバカすぎて、ハルトは頭を抱える。


「ああまた相手の罠を疑わずに典型的な動きをしてる。敵ながら可哀想な人だな」


 その考えは、手に取るようにわかる。

 ノルト大要塞があるとはいえ、王国北方軍は一万程度。ハルト大隊も三千だ。


 自身の持つ三万という圧倒的な兵力を持って、レギオンの街を押さえてから、ノルト大要塞を攻略すれば勝てると思っているのだろう。


 そもそもが、レギオンはノルト大要塞を攻めるために造られた街なのだから、その考えで大筋間違ってはいないんだが。

 ただそれは、本当に街が接収できればの話なのだ。

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