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窓際の天才軍師 ~左遷先で楽しようとしたら救国の英雄に祭り上げられました~  作者: 風来山
第二部 第一章「亜人の解放者」

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52.エルフの森の戦い

 エルフの森の戦いは、遭遇戦から始まった。

 大隊が通れるようなエルフの村への大きな道は、一本しかない。


「死ねや!」


 森に潜んでいたダルトン代官軍の伏兵が、薮の中からハルトの乗った馬車めがけて、弓を射掛ける。

 だが、ハルトたちも伏兵を予想して予め警戒していた。


「大丈夫です!」


 シルフィーたちが絶対防壁魔法を張って馬車を守ってくれる。

 絶対防壁魔法なんて言いながら、あんまり絶対防壁ではなかったりするのだが、矢を弾く程度のことはできる。


「クソッ、引け!」


 奇襲はたかだか数十人程度。

 すぐに大隊が撃ち返して、敵を追い返した。


「ハルト様、やはり鉄杉の鎧は銃弾でも弾くみたいですね」


 ライフリングのないマスケット銃といっても、至近距離で撃てばかなりの威力があるはずなのだが、鉄杉の鎧を身につけていない敵しか討ち取れていない。


「予想よりも硬いみたいですね」


 やはり樹甲兵きこうへいに対して、銃は効きにくいと考えたほうがいいだろう。

 その後は奇襲もなく、すぐエルフの村まで到達した。


 樹甲兵きこうへい三千が、そこでハルトたちを待ち構えていた。

 どうやら、敵は数の多さを生かすために兵力を集中させているらしい。


 それはハルトにとっても好都合ではあるが、代官のダルトンはそれだけ警戒しているということでもある。


「のこのことやって来たな軍師ハルト! あの馬車を狙って弓を放てぇ!」


 開けた村に陣取っていた敵が、大きく囲んでハルトの馬車を狙って一斉に矢を放つ。

 あの前面で命じている、何層も鉄杉を重ねた重厚な鎧にビロードのマントをまとう、醜く太った巨漢がダルトンのようだ。


 慎重な用兵。そして、いざ戦闘になれば大胆にも行動する。

 見た目の醜悪さに似合わず手強い敵だ。


 雨のように殺到する矢を、シルフィーたちが防御魔法で弾いていく。


「やらせません!」


 敵は、ハルトの顔を知っているらしい。

 あえて前面にハルトが出たのは兵の犠牲を少なくするためなので、攻撃が集中するのは想定内だ。


「シルフィーさん、助かりますよ」


 あらかじめこうなるとわかっており、馬車の荷台に大量の藁を積んで矢を止める工夫をしているとはいえ、シルフィーたちの防御魔法がなければ肝を冷やしていたところだろう。

 しかし、こうも矢が集中すれば限界が近い。


 ハルト大隊の兵士たちはマスケット銃で応戦しているが、やはり矢玉が鉄杉の鎧に弾かれているようだ。


「そこ!」


 性能のいいライフル銃を構えたエリーゼが、先頭で指揮をとっているダルトンに向かって銃弾を撃ち放つ。

 しかし、その攻撃を鉄杉の篭手で弾いて、ダルトンはニヤッと笑ってみせた。


「ブハハハハ、救国の英雄などとは言っても、こんなものか!」


 互角の撃ち合いに、敵の士気は上がっている。


「砲兵を前に!」


 このまま白兵戦になれば、数で押し切られてしまうので、ハルトはこれみよがしに大砲を前に出してみせた。


「おっと、そうはさせないぞ。これを見ろ!」


 ダルトンも切り札を切ってきた。

 村で捕まえたエルフたちを、無理やり前に押し出してきた。


 鎖に繋いだエルフを、そのまま盾としたのだ。

 ダルトン自らも、華奢なエルフの首に繋がれた鎖を引っ張って自分の盾としていた。


「ぐっ!」


 巨漢のダルトンに引っ張り上げられるエルフは、首の鎖を手で掴んで苦しそうに呻く。

 ぐったりと憔悴しきったその顔は、白い肌が見えないほどに青黒く腫れ、殴り潰されていた。


 虐げられてきたエルフたちが、ダルトンたちにどれほどの暴行を受けてきたのかひと目でわかる。


「ほら、お優しい英雄様よ。自慢の火筒、撃てるものなら撃ってみろ! その時は、このゴミエルフどもも道連れだがな!」


 繋がれたエルフの鎖を引っ張り上げて、ダルトンたちは一斉に下卑た嘲笑をあげた。


「酷い……」


 エリーゼも、同じ女性として見ていられない。

 強い吐き気に、思わず口元を押さえたエリーゼは傍らのハルトの顔を見て絶句した。


 押し黙ったままのハルトは、静かに怒っていた。

 それは、睨むだけで相手を殺し尽くすような、冷たく凍てついた怒りだ。


 普段は優しいハルトが、ここまでの強い感情を見せるのをエリーゼは初めて見た。


「エリーゼ、退却の合図をしてください。作戦通りにいきます」

「は、はい!」


 ハルト大隊は、大砲まで打ち捨てて、そのまま一直線に後退していく。

 それを見て、ダルトンは喜悦の雄叫びを上げた。


「やはり撃てぬか! お前ら見ろよ、自慢の火筒まで置いていきやがったぞ! ここが勝機だ。一気に敵を殲滅しろ!」


 勝利を確信したダルトンは、全面攻撃を命じる。

 転がるように坂を撤退していくハルト大隊を追って、全軍で突撃していくのだった。

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