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61話 ダンジョン都市到着! まずは家を探します。

「すみません、物件の紹介と馬の世話をしてくれる人材の紹介をお願いしたいのですが」

 無事、マルズへ到着した2人は宿を3泊だけ取り、まず向かったのは商業ギルド。夏季休暇に入ったらギルを連れて来るという約束もあるので、拠点となる家を確保しておきたかったのだ。ダンジョンに潜っている間のセキトバ達の世話は、

 とはいえ、家を買うのではなく3ヶ月ほど借りられるところを探すつもりである。

 商業ギルド保有の借家や、良心的な不動産屋を紹介してくれるので仲介料を支払ってでもギルドを通した方が安心である。

 用件を伝えると、すぐに担当者に取り次いでもらえた。

「お初にお目に掛かります。本日担当させていただきます、マルスラン・ヴェルレと申します。早速ですが、期間や予算、その他ご希望などはございますか?」

「期間は3ヶ月を予定しています。予算はひと月金貨15枚まで。希望は厩と、できれば庭もあると嬉しいです。あとは内装を弄っても大丈夫な所がいいです」

 上限とはいえ毎月金貨15枚を家賃として支払うという剛毅な申し出に、マルスランは表情を取り繕いつつ内心驚いていた。普通はそれだけあれば生活費込みでも5人家族が悠々と暮らせるというのに、と。

 姉弟は、都市部で庭付きだしそれくらいはするのではないだろうか、と思っての金額設定だった。冒険者の稼ぎは一般人よりも高めであることと、居候か良い宿にばかり泊まっていること、一度だけ借りた家が豪邸だったことで金銭感覚が狂っていた。

「厩と庭ですね。……あの、失礼ですが内装を弄るというのはどの程度でしょうか?」

「風呂場がなければ造りたいのと、調合などもするのでそれ用の設備とにおい対策。後は、防犯関係の設置式魔法陣の使用。庭に石釜も設置したいです。もちろん退去時には元に戻すつもりですが許可を戴きたく思います」

「そうですか……それならばあまり問題はないかと。随分大がかりな改装になりますが、伝手はおありですか? よろしければ職人の紹介なども行っておりますよ?」

「改装も含めて自分達でどうにかするので大丈夫です」

「それはそれは。お若いのに随分優秀な魔法士なのですね。失礼いたしました」

「(……)いえ。御配慮いただきありがとうございます」

 商機と見て提案しつつも、姉弟の情報を探るマルスラン。

 明言はしていないが、マルスランはほぼ魔法士だと確信していた。商業ギルドは人の出入りには気を配っている。受付で彼らがCランクのギルドカードを見せた時、受付担当は一瞬で彼らの若さ・身なり・立ち居振る舞い等々を見極め、マルスランにも引き継ぎの時の伝達事項として伝わっていた。その上でのことだが、彼らは初めて見る顔で、この街の職人に伝手があるとは考え難い。だとすれば、考えられる方法は少ない。

 ヒメカはマルスランが確信を得ているとみて即座に割り切っていた。名言を避けたのはいざというときの保険であり、魔法士であるという情報は遅かれ早かれ知られる情報なので痛くはない。しかし、その程度のことはマルスランも分かっていた。

(年の割に交渉慣れしてそうだな……これは少々気を引き締めていかないと)

(商人ってこれだから……)

(怖い)

 ははは、ふふふ、と、にこやかに牽制し合うのを見させられるユウトは、はなからヒメカに任せるつもりだったが絶対に口出ししないと心に決めた。



 話を戻すが、マルスランが魔法士の情報を仕入れようとするのは、魔法士と一言にいえどもその腕は千差万別で、10㎝の穴を掘れようが、城壁のような壁を一瞬で創造できようが、同じ魔法士と言えてしまうからである。もしも家の改装が出来るほどに優秀な魔法士ならば、のどから手が出るほどに欲しい人材である。特に商業ギルドは平民出身の魔法士をほぼ冒険者ギルドに奪われているので、優秀な魔法士の確保は肝要なのである。

 どうしてもという場合は冒険者ギルドに依頼を出すが、そういった依頼はなかなか引き受けてもらえない上に、いくらか冒険者ギルドに手数料を取られてしまうので、どこかを仲介するよりも商業ギルドから直接依頼をしたい。まあ、その交渉が面倒に思うから冒険者ギルドに登録する者が多いのだが。

(この機会にどうにかして繋ぎをつけておけないものか……)

 ただし、この街の商業ギルドが冒険者ギルドより有利な点がある。それは、ダンジョンでは魔法士が不遇とされている、という点である。

 一般的には魔法士は優遇されているが、ことダンジョンにおいては向いていない。基本的に見通しの悪いダンジョンでは、他の冒険者を巻き込む可能性が高いので大きな魔法が使えない。小規模な魔法を連発するしかないのだが、魔物は無限に沸くのでただでさえ高価なポーションを持っていても肝心な時に使えない場合が多く、接近戦を不得意とする者が多いので足手纏いが増えるだけである。かといって貴重な魔法士を見捨てるのも憚られるので、最初から魔法士を加入させないパーティが多いのだ。

 ただ、マルスランはこの場で交渉するのは避けた。20年以上商人ギルドで働いてきた勘がそうした方が良いと告げていた。

(とりあえず物件を精査するのと同時並行で彼らの情報を集めてみよう)

 その後はいくらか条件を絞ってもらい、馬の世話をしてくれる人材についても話を詰めた。

 2人が帰った後、マルスランはその日の内に2人が商業ギルドに預けている共同名義の口座の貯金額を確かめ、支払い能力は十分であると確信するとともに眩暈がした。口座作成時の莫大な額に加え、額の大小はあるが、増え続ける貯金額。引き出されたのはアムニスでの1度のみで、貯金額に対して本当に微々たるものだった。

 冒険者は危険だが夢のある仕事。

 そうじゃない冒険者も多くいることを知っているが、そう思わずにはいられないマルスランだった。



 翌日、ユウト達は再び商業ギルドへ訪れていた。

 ダンジョン講習を受けるのは住居が決まってから、と事前打ち合わせしていたので、とにかく早く家探しを済ませたかった。マルスランにもその旨を伝えて、昨日のうちに約束を取り付けたので、ある程度の選定はしているはずである。

 今日はその中から実際に下見をして決定まで出来ればと考えていた。

「大変お待たせしました。何分条件を満たす物件が多かったもので」

 時間ギリギリに応接室に現れたマルスランの手には大量の紙束。その時点で、姉弟は自分達が出した賃料が相場からかけ離れていることに気付いた。

「お急ぎだということで勝手ながら候補を絞らせていただきました」

 そういいながら14軒の物件の資料を出すマルスラン。姉弟はそれでも多いと感じたが、予備として用意されているだろう紙束の分厚さに、大人しくそれに目を通すことにした。

 月々の賃料は金貨3枚~15枚。21枚が1軒あったが、広すぎて不便なのですぐに却下した。他の物件も広かったが、丁度良さそうなのは金貨5~8枚の7軒。これ以上は絞れそうになかったので結局7軒全部を見て回る事になった。

「結局半分にしか絞れなくて申し訳ありません……」

「いえいえ。どれも自信を持ってご紹介できる物件ですので。では早速近場から順にご紹介させていただきますね」

「はい。よろしくお願いします」

 下見は午前中で終わるわけもなく、昼食を挟んで夕方までかかった。移動中も、近隣の治安や店の有無や種類、その他、色んな情報を聞きながら見て回り、ちょっとした観光案内である。マルスランはなかなかに情報通で、守秘義務に引っかからない程度に詳しく話しながら案内して回った。

「ではこちらの物件で決定してもよろしいでしょうか?」

「はい」

 商業ギルドへ戻り、ヒメカとユウトで話し合った結果、商業ギルドと市場や店舗が立ち並ぶ区画からほど近い場所にある一軒家に決まった。冒険者ギルドや門の近くの物件もあったが、冒険者ギルドの近くは酒場も多く治安が心配。門の近くは、どのダンジョンに集中的に潜るのかは決めていないので街の中心部の方が無難、ということでそこにした。

 そこは商業ギルド所有の物件で、部屋は5部屋あり、2部屋は個人部屋、1部屋は調合部屋、1部屋はギルが泊まる時用に、もう1部屋は空き部屋にすることにした。キッチンは広く、オーブンもついている。裏庭は厩があってもなお広さがあり、一角を風呂場に改造してもいいが、出来れば完成した後、一度職員が確認したいとのことなので姉弟は了承した。その他、いくつか注意事項はあったものの、姉弟の希望通りの内容で契約することが出来た。

「明日は奴隷商をご紹介させていただきます。また同じ時間にこちらまでお越しください」

「わかりました。よろしくお願いします」

 支払いを済ませると家の鍵を渡される。しかし、家には家具すらないのでとりあえず今日は宿。明日も、奴隷商へ赴き、馬の世話をしてくれる奴隷を探さなければならないため、予定通り宿を利用することになるだろう。

 姉弟は宿へ戻り、今日マルスランに聞いた話を忘れないように書き留めたり、手配が必要な物を確認したり、趣味に時間を当てたりと自由に過ごして就寝した。



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