24話 湧き。
翌日、朝からプリンを食べることが出来たユウトは、はた目にはクール、内心ほくほくで冒険者ギルドへ来ていた。
「すみません、依頼の受理をお願いします」
「あ、ユウトさん。昨日は大変失礼しました!」
「?」
いきなり受付嬢に頭を下げられ困惑。
「昨日は片付けをさせてしまい……その……」
どうやら、あの場にいただけで連帯責任を取らされたことに対する謝罪だったようだ。
昨夜の姉への謝罪も、待たせてしまったことに対する謝罪ということで納得しているユウトは、すでに過去の事としている。
「ああ、大丈夫です。気にしてません(プリンは食べられたし)」
「そう言っていただけると……本当に申し訳ありませんでした。ええと、それで依頼の受理についてなのですが、予測より一日早まってしまいましたが、『湧き』に入りましたので必要ありません」
「そうなんですか?」
「はい。『湧き』の期間中は、ランク対象外の魔物であろうとも、討伐証明さえ持って来ていただければ相応の報酬とギルドポイントの付与を行います。あ、でも納品依頼は随時受理しております。ただ、期間中は魔物の分布が変動しますので、素材が手に入ってからの受理をお勧めします」
「なるほど。分かりました」
「ユウトさんは初めてのようなので忠告させていただきますが、『湧き』はその特性上、乱戦になることが多々あります。その混乱に乗じて、他者の討伐した成果を掠め取る者も現れることが予測されます」
予測、といっているが、毎回それで問題が起きているのだと受付嬢の表情が言っている。
「御忠告痛み入ります。いつも以上に周囲を警戒します」
討伐から回収までが早いユウトにはあまり関係ない話だが、マジックポーチの容量にも限界がある。最近ようやくMPが4桁になったユウトは、以前よりは随分余裕があるが、それでも姉の何分の一しかない。
(ブルーミスリルウルフ討伐と魔力枯渇数回で総量が一気に上がったらしいし)
この世界にレベルの概念はないが、それに似た効果は発覚していた。一度睡眠を取らなければ数値の変動はないが、10分でも15分でも仮眠を取ればいいことも分かっている。
数値の伸びは個人差があるようで、ユウトはHPや攻撃力、防御力が上がりやすく、ヒメカはMPと、ステータス詳細で確認できる魔法攻撃力と魔法防御力が上がりやすかった。俊敏性はどちらも上がりやすい。
(問題は、一人だと安全の確保が出来ないことだよな)
ヒメカは、午前中依頼をこなしたら午後は王都へ注文していたアクセサリーを取りに行くついでに、こちらにしかない食材等を持ってナタリーさんに会ってくるそうで、行動を共にすることは出来ない。一時的に別の人と組もうかと考えるが、ナストがうるさそうなのですぐに思考の外に追いやった。
(ギル元気かな……ナイフ、喜んでくれるといいけど)
筆不精なユウトはヒメカの手紙に一言二言書き加えさせて貰い、代わりにと、昨日ランスのお店で購入した解体ナイフを一緒に渡してもらうことにした。
「あ! おい! お前、また一人なのかよ!」
「…………」
ギルの天真爛漫な笑顔を思い出していた後のナストはキツイ。今日も今日とて絡んでくるユウトはじっとりとした目を向けた。
「うっ……! き、昨日は……その……」
その視線を昨日の件で怒っていると思ったのか、しどろもどろに謝ろうとしているが、そんなことお構いなしにユウトは門を目指す。
「悪かった!」
ナストがようやく謝罪の言葉を捻り出した時、ユウトはすでにそこにはいなかった。
外へ出たユウトがいつも狩場にしている平原に向かうと、そこには大量の魔物がひしめき、それを相手に冒険者達は戦闘をしていた。
(……これは酷い……)
冒険者のルール(他パーティの戦闘している魔物に手を出さない)など在ったものではない。人が多いせいで充分な距離が確保できていない。あちこちから怒号も聞こえてくる。
(これは仕方ないか)
ユウトは『転移』で上空へ飛び、ざっと下の様子を見て、魔物が多く、人が疎らなエリアへもう一度『転移』。2回の転移でMPを200も使ってしまったが、仕方ないと割り切った。
しばらく戦っていたユウトは、いくつか気付いたことがある。
受付嬢には魔物の分布が変わると聞いていたが、この辺りでは見たことがない魔物もいるが、湧きの前からいた魔物もいつもより強い。
そして、いつも以上に知能が低い。人と見れば即座に襲い掛かり、臆病とされている魔物でさえ、逃げることなく飛び掛かってくる。
それでも多少知恵の回る魔物は、冒険者を無視して、荷物持ちを狙ったり街を目指したりする。街は高い城壁で守られていて、唯一出入りできる門にはたくさんの兵が配備されている。
(これが『湧き』か……)
ヒメカに付き合ってもらわなかったことを後悔する。次から次に魔物が湧いてくるので回収する暇などほぼないのだ。
(仕方ない……明日は臨時パーティでも組むか……)
とにかく目の前の魔物を掃討することに決めたユウトは、とにかく魔物を屠り続け、敵襲が一時止んだ隙に回収できる限り回収して街へ戻った。




