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20話 ライバル登場? 若きCランク冒険者にからまれました。

 長い馬車の旅も終わり、第二の都市と呼ばれる大きな街に到着した。

 田舎へ帰ると言っていたお姉さんはさらに馬車を乗り換え、他の人達もそれぞれの方向へ歩いて行った。

「まずは冒険者ギルドだな」

「そうね」

 依頼書のチェックと今夜の宿探しである。冒険者は放浪する人も多いため、宿情報が豊富だったりする。

 街を眺めながら大通りを歩いて行くと見えてきたのが冒険者ギルド。隣接して商業ギルドがあったため、大きな建物が二つ並んでいて分かり易い。

 建物の中へ入ると、やはり人が多い。王都もそうだが、大きな都市には冒険者も集まる。さらに周辺にいくつも狩場があるため、依頼には困らない。

「私は宿の情報を聞いてくるから依頼書の方お願い」

「わかった」

 ユウトはヒメカの指示に従って依頼ボードへ向かう。

(やっぱり討伐か魔物素材の納品が多いな……)

 びっしりと依頼書が貼られたボード。依頼主の多くは商人のようだ。

「おい!」

(王都じゃギルドポイントの付く依頼はあまり受けなかったし、そろそろランク上げてもいいかもしれないな)

「おい! お前!」

(姉さんは何気にポイント稼いでてもうすぐCに上がりそうだし……)

「だー!! 無視すんな!!!!!」

「は?」

 うるさいなぁ、と思いながら振り返ると、そこにはユウトより少しだけ背の低い男が立っていた。何故か怒っているが。

(姉さんより少し上くらいか?)

「は? じゃねーよ!! この俺が何度も話し掛けてやってんのに無視しやがって!!」

「はぁ」

「ムキ―――!!」

 地団太を踏む男をめんどくさそうに眺めるユウト。こういう時こそヒメカがいて欲しいが、残念ながら距離がある上に人垣で死角になっているようだ。他の冒険者の中には気付いている者もいるが、目の前の男のようなのは割とどこにでもいるため、すぐに視線を外すか好奇の目を向けるのみである。

(これ、話聞かないと放してくれないやつだ……)

「で、俺に何か?」

「ふん。まあいい。お前新入りだろ? そこそこ腕が立ちそうだし俺のパーティに入れてやってもいいぞ!」

「(何故上から目線……?)いや、いい」

「はぁ!? お前俺が誰だか知らないのか!?」

「知らないけど」

 そういうと、仕方がないなぁとでもいうかのように溜息を吐きながら肩をすくめる。

「うわ、ガチの新人かよ……まあいいや。いいかよく聞け! 俺はナスト。わずか3年ですでにCランクにまで上り詰めた期待の新星、ナストだ! ゆくゆくはSランクになる男! 覚えとけよ!!」

 周囲は「ヒュー♪ いいぞぉナスト!」「相変わらず大口叩きやがって!」「調子のんなナストぉ」などと野太い声が上がっている。どうやら知名度はあるらしい。

(3年でCって凄いのか?)

 ギルドポイントの付かない治療院通いをしながら約2ケ月でCランク間近な身内がいるため、イマイチ凄さが分からない。ユウト自身も、調合の勉強をしていなければ、とうにCランクになっているだろう。

「ってことだ! ありがたく思えよな!」

「(この、断るわけないだろって感じ苦手だ……)いえ、結構です。すでにパーティ組んでるし」

 ついでに暑苦しいのも苦手なユウトである。

「はぁ!? お前、この俺様が直々に誘ってやってんだぞ!」

「頼んでない。……用は済んだだろ。俺はもう行くから」

 その場から抜け出そうとする。しかし、そう簡単に逃がしてくれる相手ではなかった。

「待てよ! お前、強がるのもいい加減にしておけよ。さっきから一人じゃん。パーティ組んでるなんてどうせウソなんだろ!」

「別行動中なだけ。今、受付の方にいる」

「だとしてもだ! 俺様の勧誘を断るなんて頭悪いんじゃね―の!? 上のランクから誘われたら素直に頷いとけよ!」

「一つしかランクは違わないし、必要ない。ていうか、あんた相当面倒臭い」

 外野は断られたナストを「男に振られてやんの」だの「だせーぞナスト!」だのと煽る。ナストもそれに反応するものだからどんどんヒートアップしていくのだった。ユウトはいい迷惑である。

(姉さん早く気付いてくれないかな……)

「てめぇ! こっちが下手にでてりゃ、調子に乗りやがって! もういい! こうなりゃ勝負だ!」

「「「「「ヒュー♪」」」」」

「いいぞぉ! ナストぉ!」

「色男のあんちゃん、ナストはあれでも腕は立つ。謝るなら今の内だぜー?」

 騒げれば何でもいいのか、若い冒険者の勝負に沸き立つ周囲。賭け事をする声まで聞こえてくる始末。

(面倒臭い……)

「謝るつもりもないし、勝負を受ける義理もない。どうしても仲間が欲しいなら他を当たれ」

 ぴしゃりと言い放つと、返答を待たずにヒメカの方へと足を向けた。せっかく盛り上がっていたのに水を差された冒険者達からの煽りと罵声が聞こえるが、ユウトは無反応を貫いた。

「メイ」

 あえて、いつもの呼び方ではなく、年の近い叔父が使っていたヒメカの愛称を使って声を掛けるユウト。

「(……ん?)何?」

「まだかかりそう?」

「ううん。大丈夫だけど」

「じゃあ宿が埋まる前に行こう」

「了解。すみません。これで失礼させていただきますね。色々と教えてくださってありがとうございました」

「いえ。また何かお困りの際はお立ち寄りください」

 にこやかに送り出してくれる受付嬢に一礼し、ユウトはヒメカの手を掴んで足早にギルドを出た。

 静かに苛立っていたユウトは、姉を巻き込むまいとした愛称呼び+行動が、さらにヘイトを集める結果となったことに気付くのは、宿で姉に指摘された後だった。

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