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18話 姉弟、王都を発ちます。

魔法に関していくつか修正を加えております。

『地点登録』→場所を登録するだけ。

『地点移動』→『地点登録』した場所へ転移する魔法。

『マッピング』→『地図化』に表記変更。

 王都を発つことを決めて一週間、2人は忙しい日々を送っていた。

 レオ(細工師兼付与術士)にアクセサリーの作成依頼をし、お世話になった人に挨拶回り、冒険者の先輩であるナタリー達に助言を貰って長旅に必要な道具類を買い足しに行ったり、途中、冒険者ギルドへ受け取りに行ったり、食料が手に入らないことも考えて数日に分けて大量購入したり、取り出してすぐに食べられるように料理をしたり。

 勿論、ワイバーンの巣で大量に手に入れた魔晶石(魔石の中でも美術的価値が高い物)でアクセサリーを作成して、ザライ、ナタリー、ギルとついでにゴーシュにも渡したし、ナタリーにはさらに思いつく料理のレシピをまとめた物を渡しておいた。

 ザライが「だから! ちょっとくらい躊躇しろ!」と説教したのは余談である。

「えーと、あと必要なものは……」

「悠、いざとなったら戻ればいいから。アクセサリーが出来たらまた来るし」

「そうだけど、『地点移動』の回数は減らした方がいいだろ。移動距離が延びれば使用魔力量も増えるんだろ?」

 『地点移動』は、約100㎞毎に消費量が10ずつ増えることが判明している。どんどん魔力総量が増えているヒメカにしてみれば微々たる差だが、大きな弊害となる可能性があるかもしれない。

 さらに最近では、『地図化(マッピング )』と『遠視』を組み合わせた『転移』(『地点登録』を必要としない転移魔法。MP消費大)を編み出したり、『地図化』と『鑑定』を組み合わせて精度を上げたり(MP消費が増える)と新しい魔法を生み出すのに余念がない。さらに、魔法攻撃を積極的に使ったり物理攻撃に魔法を付与させたりと、MPをよく消費するようになった。

「MP管理はちゃんとするし、『地図化』で正確な距離が分かるから大丈夫」

「姉さんの大丈夫は信用ならない」

 寝ればMP回復するし、な精神のヒメカ。ユウトが胡乱げな目を向けるのは、前述の精神でMPを消費しすぎて昏倒したことが数回あるからである。そんなヒメカを連れ帰ったのは、勿論ユウトしかいない。

「もうしないって。それに、いちいちステータスチェックしなくても、感覚的にMPが枯渇する前兆が分かるようになったし」

 反省する素振りもないとはこのことか。

「とにかく、最終チェックだけしたら早めに寝て明日出発ね。乗合馬車を使うから遅刻厳禁。といっても朝食は皆で食べるから心配していないけど」

「……はぁ。わかったよ」

 一抹の不安を残しながらも、ベッドに潜れば即座に眠った。



 翌朝は最後の朝食、ということでヒメカが全ての料理を作った。ナタリーもかなり異世界料理を覚えたが、やはりお国料理とかなり異なるため、味がやや落ちる。結局ヒメカの味は再現できなかったと残念そうにするナタリーだった。

「あー……もう出発の日かぁ。もっと色々教えて欲しかったのに……」

「ごめんねギル君。でも手紙を書くし、たまに遊びに来るから」

「王都に来た時はまたウチに泊まりな」

「はい。その時はお邪魔します」

「困ったことがあればいつでも相談にのるからな」

「お前ら魔法ですぐ戻って来れるし、何より強い。心配はしてねぇよ。頑張ってこい!」

「ありがとうございます。ザライさんとゴーシュさんもお元気で」

 馬車乗り場まで来てくれたギル、ナタリー、ザライ、ゴーシュの4人に見送られながら、乗合馬車に乗りこんだ。視線をずらせば、ちらほら同様の情景が見られた。

「仲が良いのね。ご親戚の方?」

 ゆっくりと走り出した馬車の中、同乗者の女性が声を掛けた。

「いえ。こっちでお世話になった方達なんです」

「あらそうなの? それは素敵な出会いをしたわね」

「私もそう思います。お姉さんはどうして王都に?」

「私は奉公に出ていたのだけど、郷に残した母が病気になってしまって。教会もない様な小さな村だし、家には小さい弟達しかいないから戻ることにしたの」

「そうだったんですか……出過ぎたことを聞いてしまいました。申し訳ありません」

「いいのよ。よくある話だし」

 2人で話していると、同じく同乗していた女性達が話に加わり、賑やかになっていった。

「若い女性が多いと華やかで旅が楽しくなりますねぇ」

「おい兄ちゃん。あの嬢ちゃんとどんな関係なんだ? ん?」

「ただの姉ですよ」

「だっはっは! 賭けは俺の勝ちだな!」

「くっそー! 俺の酒代が!」

 男は男で賑やかだが、何分この世界の男はガタイが良い人が多い。つまり男臭い。その中で清涼剤ともいえるのが、ユウトとほっそりした商人風な青年くらいだろうか。それでもいるだけマシだが。

 端の方で静かに過ごす予定だったユウトは早々に諦めた。

 しばらく走っていると、馬車が徐々にスピードを落とし、停止した。

「ん? どうしたんだ?」

 男の一人が御者に声を掛ける。

「すみません、どうも馬車が横転したみたいで。狭い道なもんで撤去するまで通り抜けられないんですよ」

「了解だ。俺も手伝ってくるわ」

「お願いします」

 どうもガタイの良い男は馬車の護衛だったらしい。外にも一人、馬に乗った冒険者がついていたが、中の2人は御者の交代役でもある。

 乗客たちは少しだけ不安そうに身を寄せ合う。こういう不測の事態の時は、盗賊の警戒をしなければならない。しかし、まったく無警戒の姉弟に一人が話しかける。

「2人は平気なのかい?」

「あ、私達は冒険者なので大丈夫です」

「冒険者!?」

「え、貴方達冒険者なの!?」

 あまりに驚かれるので理由を聞くと、冒険者は基本的に自分の足か、依頼人や自前で用意した馬や馬車で移動するのが基本なのだとか。乗合馬車を利用するのはもっぱら非戦闘員である一般人ばかりである。

「それなら片道だけでも護衛の依頼受ければいいんじゃね」

「実は一度も護衛依頼を受けたことがなくて……経験のある冒険者に組んでもらえばいいんですけど、正直、姉以外とはあまり組みたくなくて」

 ナルはフィールドワークの意味合いが強かったので除外である。

(姉さんは一緒じゃなかったし)

「あー……まあ、パーティも色々だしな。気の合う奴かどうかは組んでみねえとわかんねえし」

 どう理解したのか、慰められるユウト。痴情のもつれ系だと誤解されているとは分かったが、あえて否定しない姉弟だった。

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